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失禁した母をかっこいいと思った話

わが家では母がデイサービスから帰ってきたら、必ず行う習慣が「見送り」です。

母は手足が不自由なので、デイのスタッフの方の介助を受けて車から降り、玄関まで歩行介助してもらいます。杖は使っていないので、スタッフの方と腕を組んで玄関まで来ます。

わたしが送迎車まで行って、母を玄関まで歩行介助するケースもありますが、どちらのケースもそのまま家の中に入ることはありません。

スタッフの方が車のドアを閉め、他の利用者さんを送り届けるために家から立ち去るまで、母は手を振ります。なので、わたしも一緒に手を振るようになりました。

なぜ母は見送りを始めたのか?

母がなぜ手を振って見送るのかは分からないのですが、ここまで送ってくださってありがとうという感謝の気持ちがあるのだと思います。

もうひとつは礼儀です。せっかく送ってもらったのに、さっさと自分たちだけ家の中に入るには失礼と思っているようです。

ある日のことです。いつものように母がデイサービスから帰ってきて、デイのスタッフの方に支えられて玄関まで来ました。「ありがとうございました」と挨拶し、送迎車に向かって手を振っって車が見えなくなったあと、急に玄関が水浸しになったのです。

母は夜間の失禁はよくあるのですが、玄関での失禁はこれが初めてでした。「あら~、やっちゃったね~」なんて思いながら玄関の掃除をすぐに始めたのですが、母は何事もなかったかのように部屋へ行って、着替えを始めました。

わたしは掃除をしながら、「うちの母、かっこいいかも」と不思議な感情が芽生えてきたのです。意味が分からないと思うので、わたしの頭の中を解説します。

おそらくデイの送迎中、車の中ですでに尿意を催していたのだと思います。しかし車内で漏らさないよう、ガマンしてなんとか家に到着しました。

普通ならそこで、トイレにすぐ駆け込むじゃないですか? なのに母はガマンを続けて、デイの方の見送りを優先して、笑顔で手を振って、ガマンにガマンを重ねた結果、ジャーってなったわけです。

わたしなら、トイレ>>>>見送りの優先順位になるわけですけど、母は見送り>>>>トイレだったから、玄関先で失禁してしまったのです。

何というか、礼儀を重んじる母の矜持を見た気がしたのです。トイレよりもちゃんと見送るのが礼儀。わたしの勝手な妄想かもしれませんが、じゃないとあんな玄関先でジャーとはならないと思うのです。

どんなに認知症が進行しても、人間の根っこの部分は変わらないんだなと改めて思った瞬間でした。玄関の床が石で掃除がしやすく、いつもより失禁処理に時間がかからず余裕があったからかもしれませんが、とにかく失禁しているのに「かっこいい」と思えた妙なお話でした。

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今日もしれっと、しれっと。


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東京と岩手の遠距離「在宅」介護を、10年以上続けられている理由のひとつが道具です。わたしが使ってきた道具を中心に、介護保険の杖や介護ベッドなど福祉用具も含め、介護者の皆さんがラクになる環境を実現するための本になっています。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

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工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。岩手にいる認知症&難病(CMT病)の母(79歳・要介護3)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて11年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。Voicyパーソナリティ『ちょっと気になる?介護のラジオ』。認知症ライフパートナー2級、認知症介助士。
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか