認知症でなければ考えない冷蔵庫を買い替えるときに気をつけた4つのポイント

冷蔵庫 取っ手

実家の冷蔵庫が、とうとう壊れました。

冷蔵庫は「National」製で、名前から分かるとおり古く、2003年製造のものです。容量は404リットルで、家族3人から4人で使うサイズです。

認知症になる前の母は料理上手で、冷蔵庫の中はいつも下ごしらえしたタッパーでいっぱいでした。しかし祖母が亡くなり、認知症が進行するにつれ、冷蔵庫はスカスカになっていきました。

電器店の店員曰く、冷蔵庫は冷凍庫が冷えなくなる故障が多く、次いで冷蔵がダメになるという話を聞きました。

うちの冷蔵庫の場合、冷蔵も冷凍も問題ありません。壊れたのは、冷凍庫の扉の取っ手の部分です。今までも何度か瞬間接着剤で直したのですが、騙し騙し使い続けた結果、全破損。 冷蔵庫の平均寿命は12年程度で、うちの冷蔵庫は17年なのでよく頑張ったなと。

さらに使い続けることも考えましたが、買い替えの1番の理由は母がアイスを食べられなかったからです。冷凍庫を開けられない=大好きなアイスが食べられないということになります。

妹が冷凍庫の扉の取っ手に工夫をして、母が開けられるようにしました。その写真がこちら。

取っ手ではなくサイドをひかないと開かない冷凍庫

細工をしたあと、わたしは冷凍庫のアイスの在庫を何日かチェックしたのですが、全く減る様子がありません。認知症の母は、工夫しても冷凍庫が開けられないのです。

このままアイスが食べられないと、さすがにかわいそうということで、まずは妹と相談。次に母と相談したところ、買ってもいいということだったので、電器屋で冷蔵庫を買いに行きました。

冷蔵庫選びは、最新機種とか、節電とかそういう要素ではない、認知症ならではの4つのポイントを意識しました。

ポイント1:メーカーは前と同じ

ブログでも本でもいつも書いていることですが、認知症の人は新しいことがなかなか覚えられないので、家電の買い替えは注意が必要です。すでに「national」製は売っていないので、「Panasonic」製にしました。

メーカーが同じなので、冷蔵庫、冷凍庫、野菜室ともに、作りは一緒で、母も一瞬新しくなったことを忘れるほどでした。

ポイント2:冷蔵室、野菜室、冷凍室の順番

次に冷蔵室、野菜室、冷凍室の順番を守る必要があります。

この順番が変わると、母は何回も何百回も開ける場所を間違え続ける可能性があります。アイスを食べようと冷凍室を開けるつもりが、野菜室を開けることになります。

ガスレンジを交換した際も、着火ボタンの位置が変わり、焼きもしない魚焼きグリルを1年近く点火し続けました。

ポイント3:76歳の母1人暮らしである

冷蔵庫を使うのは母1人で、わたしが居るときは2人です。404リットルも要りません。

1人用の小さな冷蔵庫も考えましたが、高さはある程度キープしたほうが、母も冷蔵庫のモノを取りやすいので、高さが10㎝低いものを選びました。 335リットルで容量は2割減ですが、節電にもなります。

ポイント4:取っ手問題

上記3つのポイントを抑えると、モデルは2つまで絞られました。ところが大きな問題が!

最近の冷蔵庫はシンプルにできていて、取っ手がついてないモデルがほとんどなのです。絞られた2つのモデルも当然、取っ手がついていません。前の冷蔵庫は、取っ手つきでした。

取っ手がなければ、母は冷蔵庫を開けられないのでは?

遠距離介護なので、冷蔵庫が開けられないと、食事ができなくなります。結局、取っ手なしモデルを購入し、冷蔵庫を開けられなかったら、取っ手をつけよう!と決めました。

母が冷蔵庫を使う様子を、2日観察し続けました。あっさり開けられる日もあれば、とんちんかんなところをつかんで開かないと騒ぐ日もありましたが、開けられないことはないのでこのままで行くことにしました。

ちなみに母が冷蔵庫を開けられなかった場合に購入しようと思っていたのが、こちらの吸盤式取っ手1380円です。

ネットを探すと、後付けで冷蔵庫に取っ手を付ける方がいるんですよね。インテリアとして付ける方が多かったのですが、中には高齢の方で握力が低下し、冷蔵庫が開けられないために、取っ手を付ける方もいました。

わが家のように、認知症が理由で取っ手を付けた方はいなかったのですが、高齢者のサポートで取っ手という視点は、目からウロコでした。

皆さんも家電を買い替えるときは、認知症の家族が戸惑うシーンを想像しながら購入してみてください。下の左が前の冷蔵庫(取っ手あり)、右が新しい冷蔵庫(取っ手なし)です。

よく見ると違いますが、母は新しくなったことに気づかないくらいです。室内の照明も明るくなって、母は食材が取りやすくなりました!

(左)前の冷蔵庫(右)新しい冷蔵庫

今日もしれっと、しれっと。


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【わたしの書いた最新刊】
東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて13年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか