認知症の人がホールスタッフ「注文をまちがえる料理店」に行ってきました!

注文をまちがえる料理店

9月16日(土)から9月18日(月)の3連休限定で、東京・六本木で行われた「注文をまちがえる料理店」に行ってきました!イベントの模様を写真を使って、ご紹介いたします。なお、写真に関してはスタッフの方に許可を頂き、アップしております。

注文をまちがえる料理店とは?

名前のとおり、注文を間違えてしまう料理店です。なぜかというと、ホールスタッフが認知症の方だからです。プレオープンイベントが2017年6月に開催され話題となったのですが、今回は800万円の資金をクラウドファンディングで募ったところ、493人から1,291万円が集まりました。

注文をまちがえる料理店


Ready forのクラウドファンディング成立の画面キャプチャ

わたしが支援したのは、1万円。「確実に」入店できる1人枠というのが30人分しかなく、クラウドファンディングが発表された日には完売しました。それ以外の方は「抽選」で当たれば参加できたり、オリジナルグッズも購入しての参加だったようです。

「注文をまちがえる料理店」イベント当日の様子

台風18号が鹿児島に上陸した悪天候の日でした。

本来ならカフェ・RANDYさんの丸い看板が設置されているのですが、これを変えてしまうほどの力の入れよう。内装もこのイベントのために、一部塗り替えたところもあるのだとか。

ご夫婦らしき1組と佐賀県からこの日のために上京した方、そしてわたしの4名テーブルでした。

でテーブルにつくと、メニューが。間違えてくれるかな~

写真では分かりづらいかもしれませんが、ハンバーガーはイベント会場を提供してくださったカフェ・ランディさんのプロデュース。汁なし担々麺は一風堂さん、オムライスはグリル満点星さんでした。セットドリンクもサントリーさんが提供してくださって、どの会社もCSRをしっかり意識されてます。

料理はプロが作るので、味は間違いありません。ここがわが家と違うところでして、認知症の母が作る料理は常に不安定なので、注文どころか味も大きく間違います。ドキドキの度合いが、このイベントの倍はあります。

4人分のオーダーを取ったのですが、わたしたちお客さん側のサポートもあって「注文を”まちがえない”料理店」となりました。しかし、ハプニングはこのあといろいろと起こります。

最初はサラダが運ばれてきたのですが、これがただのサラダではありませんでした。

認知症のホールスタッフ(Yさん)による、どでかいペッパーミルのサービスがつきます。Yさんが目が悪いということで、コショウが出ているかどうかは全く分かりません。お客さん側が「いいですよ~」というまで、ミルを回してくださいます。Yさんが笑顔で楽しそうにお仕事されている姿が印象的で、本当にかわいくてかっこよかったです!

Yさんの髪型が超かわいいのと、この笑顔がたまりません。こんな感じでおぼんに料理を乗せて運んでくださいました。

わたしが選んだのは「ふわとろ」オムライスです。Yさんが両手で赤ちゃんのお尻をなでるようなしぐさで、「ふわっふわっですよ~」って。わたしも一緒に「ふわっふわっ」とジェスチャーすると、お隣のテーブルにも「ふわっふわっふわっですよ~」って。1回多くサービスしてました、ちょっとうらやましい。

オムライスとバーガーは特に問題なかったのですが、汁なし担々麺はジャスミンライスがついていました。担々麺を食べたあとに、そのライスを投入するシステムだったのですが、認知症のスタッフの方には難しかったようで・・・サポートスタッフの方が後ろからサポートしてくださって、説明をされてました。

もうひとつ食事を「おぼんごと」提供してしまうという、プチハプニングも2回ほどありました。「あ、おぼんはいらないですよ」みたいな。あと料理のチケット(テーブル番号とメニューが書いてある)を、回収するのかどうするかが分からなかったみたいです。

こういう事態を想定して、皆さん参加されているので、なんとか一緒に頑張ろうという空気がすごかったです。さらに、間違いなんて誰も気にしてないし、むしろwelcomeみたいな。これが毎日だとまた違った気持ちになってしまうのは、介護者の皆さんならわかると思うのですが、イベントなのでそれはそれは優しい気持ちで見守りました。

途中、認知症の男性ホールスタッフの方からお声かけ頂くのですが、これも面白い!

ホールスタッフ
またご贔屓に!

「また」の意味とか深く考えないでください、いいお言葉頂きました。「以前は接客業をされていた人なのだろう」と、同じテーブルの人と推測しました。「お味はどうでしたか」ともお声かけ頂き、はっきりいってプロでした。次はデザートです。

「てへぺろ焼」はとらやさんプロデュースです、もちろんおいしいです。このイベントのロゴは舌を出してますが、「テヘっと笑って、ペロッと舌を出す」認知症の人の失敗にも寛容になるというコンセプトです。

デザートにもコーヒーや紅茶がつくのですが、さっきのドリンクとメニューが若干変わっていて、オーダーをとる作業も認知症のホールスタッフの方との共同作業でした。

くどひろ
ホットコーヒーが3なので、ここに3と書いてください。そうです、ここです。でルイボスティーのところに、1と書いてください。そうです。でテーブルは6番なので、ここに○をしてください。完璧です!

イベントの最後は、若年性認知症の音楽家の奥さまのピアノと、それを介護している旦那さんのチェロで「アヴェマリア」の演奏でした。奥さまは楽譜が読めなくなる、鍵盤もすべて同じに見えてしまう状態から、シールを貼って一生懸命練習されたそうです。元々はホールスタッフとして仕事するつもりが、ピアノがある会場だったので急きょ演奏することになったのだとか。

途中、何度か忘れて、演奏が止まってしまうこともありました。それでも旦那さんが奥さまになんとか合わせてチェロを弾く姿、お互いに向ける優しい目線、演奏を終えた奥さまは涙を流されました。演奏を終えてホッとしたうれし涙だったのか、悔し涙だったのかはわかりません。それにつられて、参加されている方も泣いていました。

イベント最後の締めの言葉「寛容さから自然さへ」というのが、本当にそうだと思いました。これは認知症介護を5年しているわたしでも、まだ到達していない領域です。認知症の人への寛容さは持ち合わせていますが、なかなかそれを自然(わたしが言うところのしれっと感)にできるまでは、いけていません。

おそらく認知症の方と接したことのない人は、このイベントを通じてものすごく認知症へのハードルが下がったのではないかと思います。言い方はよくありませんが、もっと認知症の人が「おかしい」と思いこんで参加された方も多かったんじゃないかと。

認知症の方の働くお話については、わたしの2作目の本「医者は知らない!認知症介護で倒れないための55の心得」でも取り扱っているので、合わせて読んでみてください。

イベントよかったなぁ・・・ほっこりしました。

「注文をまちがえる料理店」が本になりました!

注文をまちがえる料理店が、2冊まとめて本になりました。あさ出版、方丈社から出版されていますので、よかったら本も合わせてチェックしてみてください!

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東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

4件のコメント

くどひろさん、こんばんは
素敵なイベントで良かったですね。

私は飲食のサービス業他、接客が長かったのですが、実際のところ飲食業の接客は
健康な方でも初めての方にはかなりハードルが高い作業です。
注文を取る以外にも全てにおいて、かなり難しい作業をこなさなければならず
接客を受ける側にいるのと、接客をする側にいるのとでは、雲泥の差があります。

皆さん生き生きとされて本当に良かったですね。

自分もてんてこ舞いさま

そうですね、皆さんイキイキされてました。うちの母も以前イベント的に働いてもらったときは、ありえないパワーを発揮して驚きました。

自然に優しくなれるって素敵だなぁと思いました。
Facebookでもシェアさせて頂きました。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて12年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか