27年別居していた夫婦のお墓と仏壇の相続問題をスッキリ解決した話

死後離婚 お墓 仏壇

死んでまで、夫(妻)と同じ墓に入りたくないという「死後離婚」が話題です。配偶者が亡くなったあとで離婚はできませんが、「姻族関係終了届」を役所に提出すれば、民法上の親族ではなくなります。

母は今のところこの届を提出する予定はありませんが、「死後離婚」状態ではあります。今日はうちのケースについて、ご紹介します。

わが家の複雑なお墓相続問題

1週間前に父が亡くなりましたが、親子ゲンカの絶えなかった原因のひとつが、このお墓・仏壇問題でした。なぜもめていたかというと、

  1. 父は別居して27年、母とは実質離婚状態(でも戸籍上は夫婦のまま)
  2. 今あるお墓には母の母(わたしの祖母)とわたしの兄が入っている
  3. そのお墓の出資者は、祖母と父
  4. 認知症の母は、父とは一緒に墓に入りたくないと言っている

父は、自分がお墓のお金を一部出しているのだから、お墓に入る権利があるとわたしに言いました。しかし、勝手に出て行った父ですから、あらゆる財産は放棄したものとわたしも残された家族も考えていました。

また父は、生後1か月ちょっとで亡くなってしまったわたしの兄と、一緒の墓に入りたいということも言っていました。確かに息子を失った悲しみは大きかったと思うので、その点は理解できます。父の親の墓に入ればいいのでは?と提案したのですが、父は「婿として、俺は家を出ているからそれは無理だ」と言っていました。

こんなこじれた状態をどうしようかと考え、わたしはいろんなお墓のカタチを模索していたのでした。

お墓を拝むわたしの気持ち

わたしは父が勝手に家を出て、マンションや車を買って自由に暮らしていたこと、認知症の妻のことを気にも留めなかったことに対して、複雑な思いです。また、認知症の母にお墓について試しに聞いたとき、「父と一緒の墓に入りたくない」と怒っていたのは、本心だと思います。それで、生前の父には正論をぶつけました。

くどひろ
祖母とあれだけ仲が悪かったのに、なんで同じお墓に入りたいと思うの?実質離婚状態の妻も、いずれその墓に入るんだよ?

これを言うと、父も黙ってしまいました。父自身の中で、大きな矛盾を抱えていたのです。父はこうも言いました。

お前に任せるけども・・・

父とはこの件で4年前にも大ゲンカしまして、それが原因でその後4年間も口を聞きませんでした。それくらい根の深い問題だったのです。4年前は散骨でもいいみたいなことを言っていましたが、やっぱりそれもイヤだったのでしょう。いろいろあったのですが、「お前に任せる」という言葉をもらったので、こうすることにしました。

樹木葬を提案したが

わたしは生前の父に「樹木葬」を提案していて、それで決着する予定でした。しかし葬儀屋とお墓の話をしていたら、盛岡の樹木葬の場合、父が眠るプレート(下写真はイメージ)まで近づけないということが分かりました。距離のあるところで拝んで、遠くのあの辺りに確かプレートがある・・そんな拝み方になるとのことで、ちょっとそれもイヤだなと。

樹木葬
東京ビックサイトで展示されていた樹木葬プレート

葬儀の打ち合わせもあったので、まずはわたしの複雑な思いを、和尚さんにストレートにぶつけることにしました。妹はお墓を一緒にすることにこだわりがなかったのですが、わたしはどうしても祖母と兄、父が同じお墓にいることが心情的に許せませんでした。すると、お世話になっているお寺にも「永代供養墓」があることが分かりました。

「家族の思いを優先すべき」とのお言葉を和尚さんより頂き、このような折衷案で決着しました。

  1. 祖母と兄が居る今のお寺に、父もお願いする
  2. お寺にあるお位牌は「祖母&兄」、「父(新規で購入)」で分ける
  3. お墓はお寺の中にある永大供養墓に入ってもらい、別にある祖母と兄の居るお墓には入らない
  4. 母の家の仏壇には入らず、わたしが東京で仏壇を持つ(他に引き取り手がいない)

物理的に分ける意味があるかといえば、魂というレベルではあまり意味のないことかもしれません。しかし、わたしが今後お墓や手を合わせるたびに、毎回複雑な思いを抱えるのは嫌だったので、こうなりました。

仏壇の相続はこうした

次は自宅用のお位牌を置く、仏壇問題が浮上します。母の家の仏壇には入らない、妹は嫁いでいて仏壇を持てない、消去法でわたしが仏壇を構える必要がありました。しかし、東京にドカンと父の仏壇を置きたくありません。お金もかかりますし、奥さんも住んでます。そこに大きな仏壇・・・わたしの中ではない選択です。困っていたところに、解決してくれる仏壇がありました。

「携帯仏壇」といって、手帳のような折り畳みで持ち運べるタイプです。戒名を掘ってもらって、遺影も入れられます。拝もうと思ったときだけ、この携帯仏壇を開いて拝みます。そのまま飾る方もいらっしゃいます。ペット用の仏壇として使っている方もいるようで、これは葬儀屋からのいい提案でした。

父が亡くなってすぐ、この話し合いをお寺で行いました。喪主の仕事はいろいろありますが、メンタル的にはこのお墓問題を決着することが一番大変だったかもしれません。うちみたいなケース、今後増える一方だと思います。


今日もしれっと、しれっと。


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東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

10件のコメント

くどひろさん お父様お亡くなりになられたとのこと突然のことで驚きました。心よりお悔やみ申し上げます。
お二人での焼肉の日の様子、小説か映画のようでとても引き込まれて読んでいました。お父様、人生の最期に頼れる息子がいてくれて嬉しかったことでしょう。と、親目線で思いました。ご冥福をお祈りします。

お墓のこと お父様のご自宅のこと 私もリアルタイムの悩みなのでとても参考になります。ブログと本の第3弾楽しみにしてます。
お忙しい日々、ご自愛下さいね。

てんさま

小説か映画のようって、うれしいです。ありがとうございます!

意外とマンション売却ネタが興味を持たれている方がちらほらいて、驚きます。どんな話も全国の誰かには役に立ちますからね~

お父様のご冥福をお祈りいたします。

さて、お墓問題は既にあちこちで噴出してきてますね。
我が家はかなり前に父が片付けてくれました。
ちょっと離れた田舎に代々のお墓があったのですが、
父は、跡取りである弟(父の嫌いな新興宗教A)には頼みたくない、
妹は嫁いでいるので無理、
私には、
「どうせお前は、墓参りとかには来んオンナや。期待せん」と。
はぁ、よくお分かりで(笑)。
それにもし仮に私が継いだとしても、子どもは娘のみ。
さらにその次の代、次の代は・・?ということで、
少子化にむけて、子孫に負担を掛けられないと判断し、
自身が完全にボケる前にと、田舎から全て引上げて墓じまいをしてくれました。
一心寺とという所で合同埋葬の形に。
父いわく、
「若い頃は要らんと思ってたけど、結局葬式も墓も残された、生きてるもんのためや。
だからもしもやな、拝みたくなった時のために、一応拝める場所は置いとく。」
自分で認知症を疑いだした時にすぐこれを決めた父に、
その時はあまりピンと来てなかったけれど、
今思うと、なかなか先見の明があったな、
何かやっぱりこういうのは男親だなぁ、と思います。
ちなみに、仲が悪いわけではないのですが、
母は別の新興宗教Bに入っており、
死後はそこでの合同埋葬を望んでいます。
結局、バラバラやん(笑)!

くどひろさんこんばんは。

都市部はお墓を買いたくても今後は買えないと言われてますよね。
実家も、嫁ぎ先も、義父も実父も長男家の長男だったため
どちらに転がっても私はお墓があります。
ただ問題は、誰が墓守りするかと言う点です。
実家の兄は先代からの墓守は今後はしないと言いますし(自分はどうするのか知りませんが)
嫁ぎ先の墓は、亡くなった義父が、義父の弟一家のお骨を入れるようにと
妙な遺言を残してます。
祭祀って案外費用も掛かるので、今後が悩ましいです。

自分もてんてこ舞いさま

冠婚葬祭は年々お金をかけない方向で進んでいますので、墓守りしないという人は増えそうですね。永大供養を選んだのもその費用の節約という部分もあります。

携帯仏壇参考になりました 。私の母は 生前から大阪の一心寺と言う骨仏 の寺に埋葬して欲しい。父とは別の寺にすると遺言を残して亡くなりました 。しかし父は 母の骨の分骨を希望。母の骨の一部は今は父の墓のところに一緒に埋葬しています。夫婦のあり方が最後墓に出るのだなと思いました。

はじめまして。私も都心部から盛岡へ遠距離介護が始まりつつあるので(母の)、親近感を持って読んでいます。
お墓問題は現代ならではの悩みですよね。数年前に父が亡くなった時、母と兄弟と話し合いました。
結局、新たにお墓を建てても母と独身の兄弟しか利用しないのが分かっているため、散骨を選びました。
特に信仰している宗教もないので仏壇購入は迷いましたが、母が拝みやすいという理由でミニ仏壇を選びました。今は携帯仏壇というのもあるのですね。参考になりました。
葬儀やお墓等は残された人のためにあると思うので、亡くなった方の希望を叶えたい人はそうすればよいし、生きている側の負担になるようなら(しかも子孫まで)面倒にならないようにすればよいと思っています。

みーしえるさま

コメントありがとうございます。

仙台盛岡の介護されている方にはよく会うのですが、都心部と盛岡を往復している人には会ったことがありません。携帯仏壇はわたしもびっくりしたので、思わず紹介したらかなり反響がありました。選択肢が広がっていいですよね。

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工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(80歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて12年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか