「初期認知症の人の半分はポジティブ」という研究結果を読んで

認知症 ポジティブ

認知症と診断されると、ショックを受けてマイナス効果を与えるとばかり思っていたので、ポジティブに受け止める人が半分もいることは意外な結果でした。ポジティブになれる人とネガティブになる人とどこが違うのか、それが分かれば認知症の治療に大いに役立つと思います
引用元:http://www.j-cast.com/healthcare/2016/08/03273813.html?p=all

J-CASTヘルスケアさんの「認知症になっても半分はポジティブ 意外に明るく受け止める秘密は?」という記事の結論を引用しましたが、どんな条件でこの結果になったのかをご紹介していきます。

 認知症専門誌「Alzheimer’s Association International Conference」(電子版)の2016年7月25日号に発表された米ケンタッキー大学の研究によると、初期の認知症の人の半数はポジティブ(明るく前向きな気持ち)だという。
引用元:http://www.j-cast.com/healthcare/2016/08/03273813.html?p=all

まず、この結論はアメリカの研究結果だということです。そして、調査したのは48人で、軽度認知障害(MCI)と初期の認知症の人、両方に質問したそうです。その結果、MCIの方よりも、初期の認知症の方のほうがポジティブという結果が出ました、ビックリですね。

どうポジティブだったかというと、次の項目で特にポジティブという結果でした。

(1)自分の人生の価値を理解し、人生を受容する。
(2)失敗を以前より恐れない。
(3)以前より、物事を深く考えるようになり、他人に寛容になる。
(4)人生の諸問題から逃げずに、向き合えるようになる。
(5)人間関係が広がり、新しい出会いが増える。
引用元:http://www.j-cast.com/healthcare/2016/08/03273813.html?p=all

この結果を見て、日本では考えられなかったので、少しだけアメリカの認知症事情について調べてみました。

アメリカと日本の「認知症映画」の違い

京都外語大の藤倉なおこさんが書いた論文「アメリカ認知症映画に関する一考察」に、このようなことが書いてありました。

高齢者の認知症患者とその家族の真実と苦悩を描き出す映画はアメリカではほとんどない。映画では家族が介護に疲れ果てるまもなく高齢者たちは亡くなり,のこされたものはあらたな力をさずかって生きていく。認知症の高齢者はまわりの家族の生き方を問う一つのきっかけとして登 場するだけである。夫婦のロマンチックなラブ・ストーリー,コメディー,おとぎばなしとして描くのも確かに認知症のポジティブなとらえ方かもしれない。
引用元:https://kufs.repo.nii.ac.jp/index.php?action=pages_view_main&active_action=repository_action_common_download&item_id=141&item_no=1&attribute_id=22&file_no=1&page_id=13&block_id=21

藤倉さん曰く、アメリカよりも日本のほうが認知症映画の歴史があり、より現実的な描写が日本映画には多いそうです。アメリカの認知症映画では、介護の現実が見えないところも、逆に問題というご指摘でした。

この2つの論文や結果を読んで、わたしはこう思う

もし、日本で同じ調査を行ったら、半分はポジティブという結果になるのか?ということです。たぶん、認知症を告知された人は、ほとんどネガティブに反応すると思われます。

そして、日本のメディアや映画が、アメリカ映画のような認知症の描き方をしたら、認知症を告知してもネガティブにならないのかも?とも考えられます。認知症介護する人も、もっとハッピーな意識を持つかもしれません。

この調査結果から、認知症ご本人も介護する人も、ふだんから認知症の情報にどう接しているか、それによって大きく認知症に対する意識が変わるということが分かります。

今後日本が、アメリカ映画のような認知症の扱いをするか・・・たぶんならないでしょう。であれば、介護者は情報を取捨選択しながら、ご自身で「ネガティブ過ぎない」状態を作ることで、アメリカ化が可能になるかもしれません。

認知症になっても、人生を受容し、人脈を広げ、失敗を恐れないと考えるポジティブ派が、少数でも世界にはいるんですね。周りの環境が、認知症に大きく影響していることが分かった調査結果でした。アメリカ映画でなく、一般社会では認知症をどう考えているんだろう・・・

今日もしれっと、しれっと。


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東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

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工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(80歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて12年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか