認知症に関するこのコトバたち、差別?差別じゃない?

痴呆 差別用語

介護仲間ななさんのブログの中で、認知症を「痴呆」と言った30代男性の話が出てきました。

わたしのブログへgoogleやYahoo!経由でいらっしゃる方で、「痴呆」「痴呆症」と入力される方はかなり多いです。認知症のことをあまり知らないシニア世代の方で、まだ使っている方もいらっしゃいます。

「痴呆」は侮辱的な表現だということで、2004年厚労省が「認知症」というコトバに変更したわけですが、その当時の国民の意見を厚労省のホームページより引用します。

意見募集(有効回答数6,333件)の結果は、まず、「痴呆」という用語に不快感や侮蔑感を感じるかどうかについては、(1)一般的な用語や行政用語として用いられる場合に、不快感や軽蔑した感じを「感じる」56.2%、「感じない」36.8%、(2) 病院等で診断名や疾病名として使用される場合に、不快感や軽蔑した感じを「感じる」48.9%、「感じない」43.5%であった。
引用元:http://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/12/s1224-17.html

2004年当時から不快に感じた人はやはり多かったようですが、実は不快に感じてない人も結構いたんですね・・意外でした。

この「痴呆」のように、認知症に関する医療・介護・家族の中で「これは差別用語だ!」と言われているものがいくつかあり、それらを一覧にしてみました。わたし自身はそのコトバにどう対応しているかについても、合わせて書きました。

差別的と思われる名称正しいとされる?名称説明私の対応
痴呆・痴呆症認知症2004年厚労省が差別的ニュアンスがあるとして、公募で変更使わない
ボケ・ボケる認知症中には差別用語という人もたまに使う
ニンチ認知症認知という言葉には、別の意味がある。使わない
徘徊ひとり歩き・お散歩目的があるのに、あてもなく歩くという表現が偏見につながる使う
認知症患者認知症の方
認知症とともに生きる人
スコットランドの認知症ワーキンググループ、ジェームス・マキロップさんが「認知症患者」ではなく、「認知症とともに生きる人」と呼ぶようキャンペーン中極力使わない

まず痴呆症は、一切使ってません。

「ボケる」に関しては差別用語という意見もあるようですが、わたしはそこまで差別用語とは思ってません。でも、認知症の母には言いませんし(自分ではたまにボケちゃった?とかいう)、積極的に使うことはないです。

「ニンチ」と略されたときは、民生委員にカチンときました。その時、差別かどうかということは知らなかったのですが、なぜか違和感がありました。母をバカにされたと、そのとき感じてしまったからです。その後調べてみると、そう思う人が結構多いことを知りました。

ひそひそ

徘徊に関しては、和歌山のデイサービスが撲滅キャンペーンをしていたり、名古屋でも同じような動きがあります。わたしはあくまで感覚的にしか判断していないのですが、「徘徊」は本でもブログでも使ってます。

認知症患者に関しては、医者は使うと思います。わたしは家族なのであまり使う機会がなく、認知症当事者であるマキロップさんの運動をテレビで見て賛同したので、「認知症患者」という表現は極力避けるようにしています。

大切なのは、そのコトバをどういう思いで発しているのか?

これら認知症に関するコトバについて、まず認知症を深く知っている人、知らない人の間で大きな差が出ます。そして、家族以上に介護職の方々は、このあたりに敏感なように思います。

こういった動きに対して「使ってはいけないコトバが多くなると、生きづらい世の中になってしまうよな・・・」という気持ちは正直あります。

「ニンチ」と言った民生委員の前後の文脈、コトバの抑揚など、全体のニュアンスでバカにしているとわたしは感じてしまったのですが、結局はコトバ単体よりもそのコトバをどういう思いで発しているかに尽きるのだと思います。

アルツハイマー型認知症の方を、「アルツ」「アルツの人」というとわたしはイヤな感じがするのですが、母のピック病を「ピック」と言うことがあるし(本人に向かっては言わない)、レビー小体型認知症の人も「レビー」と言うこともあるので、もはや何が正解なのか分からないです。

ななさんの会社の男性が言う「痴呆」は、悪気がないと理解できたから許せるし(ブログ読んでみてください)、民生委員の場合は、認知症のことを詳しいとわたしが勝手に思い、頼りになると期待していたのに、頼りにならないというガッカリ感もあって「カチン」ときたのかもしれません。

あとは痴呆が認知症に変わったように、社会全体が決めるということもあります。だから、徘徊がひとり歩きに変わる可能性だって、いつかあるかもしれません。

テレビを見ていると、アナウンサーが「先ほどは不適切な表現があり、大変失礼いたしました」ということありますよね?「え、なにが失礼?」と思って調べると、差別用語だったというやつです。視聴者の中には、ひっかかる人もいるんですよね。

わたしは「認知症ご本人、認知症の方」のような使い方が多いのですが、逆に気をつかいすぎるのもおかしな気もします。風邪の人にそこまで気遣いしないはずなので、それこそ「しれっと」すればいいのにと自分では思ってますが、気遣いするほうが主流だから、合わせているのかもな・・・

思いを大切にしながら時代の流れに合わせていこうという、ゆるい結論にしておきます。

今日もしれっと、しれっと。


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東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

4件のコメント

「思いを大切にしながら時代の流れに合わせていく」いつもこうあるべき!と決めつけないくどひろさんのゆるさに、答えは1つではないとほっとします。
最近キレる高齢者が増えていることについては、どう思われますか?

おかきさま

ありがとうございます!

キレる高齢者については、54の心得に書いてある頑固の話のところを読んでみてください。そこに答えが書いてあります!

仰有るとおりです。ようは言葉狩りの一種と同じですね。私は今でも痴ほう症って言いますよ!現に私の父親も痴ほう症で大変です。

結局、認知とか丁寧な言葉を使っても心の中ではボケじじい、くたばれと思っていたら何にもならないと思います。本当に言葉にうるさくて生きにくい世の中になってしまいました。悲しいです。昭和の時代が良かった。

言葉がり、左巻き大嫌いさま

コメントありがとうございます。

わたしは痴ほう症はさすがに言わないのですが、心の中ではひどいこと言ってしまうことはたまにあります。おっしゃるとおり、何にもならない・・・徘徊や妄想なんかはやっぱり使いますね。キャンペーンとかやっている方々もいるので、言葉を扱う立場としては難しい時代です。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて13年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか