認知症の母が 「離婚」 を決意した!

認知症の母の口癖(妄想)

お父さん(夫)が電話してきて、「この馬鹿者!」 といって、電話を切った
この前、無言電話があった。無言電話をかけてくるのは、お父さんしかいない!
お父さんが帰ってくるって言ってたのを、ついこの前わたしが断った

この口ぐせは妄想なので、こんな事実はどこにもありません。23年も前に出て行った父に対して、母がまだ想いが 「潜在的に」 残っているということです。玄関先にスリッパを用意したり、誰も吸わないタバコの灰皿がセットしてあったり、帰ってくるからお寿司をとらないと と言って、親戚の家に電話したり・・・

これを何度も聞かされるわたしは、「未だに、家に帰ってきて欲しいんだなぁ~」そう考えていました。同時に、「認知症って、切ないなぁ~」 そうも考えました。そんな母が先日、初めてこんな事を言いました。

母さんも亡くなったし、わたしもふっきれた。子供たちにも迷惑かけられないし

思わず二度見してしまいました、こんな発言今までありませんでしたから。やっぱり、自分の母を亡くしたショックなのかな・・・最初はそう考えました。でも、冷静に考えると、亡くなった日時も、最後一緒に過ごした時間も、お通夜に誰が出席したかもすべて忘れているので、それは違うなと。

これだけ忘れている中で、「正確に」 覚えていることが2つだけあります。

「父に10年ぶりに話しかけたところ、思いっきり無視されたこと」 
「父の姉に葬儀への参加のお礼をしたら、ものすごい冷たい態度をとられた」

自分の母が亡くなったことの方が衝撃なのに、こっちの方が記憶に残るところが母らしいです。どちらも言葉を相手は発していないものの、その冷たい態度を感じて記憶に留める。他の事はすべて忘れているのにです。

杉山先生が本で言っている「認知症」の 「感情残像の法則」 って、まさにこのことです。言ったり、聞いたりした事は忘れても、感情だけは残像のように残る。10年ぶりに勇気を振り絞って父に声をかけたのに・・・その時のショックを受けた感情が残っているんです。

さて、離婚すべきかどうか?

23年も別居中なので、実質離婚状態です。離婚届にサインしちゃえばいい・・・わたしもそう思ってますし、家で反対する人はいません。問題は、離婚をすることで母の認知症の症状が悪化しないかということです。妄想の中では、家に帰ってきてほしいような事を未だにいいます。(切ないです・・・)

別居中で葬儀のやり方だけは口を出し、葬儀不参加の父からは、葬儀が終わった次の日、わたし宛に、

父: 「おまえが、離婚届をもってこい!」

という電話が、酔っぱらってありました。また、亡くなった祖母への怒りを、わたしにぶつけるという・・・仏様をなんだと思っているんでしょう、この人は。不思議なもので、天国の祖母がまるで、

天国の祖母: 「2人は離婚したほうがいい」

とアドバイスしてくれているかのようです。この不愉快な電話と、母が言い出した離婚の話が葬儀終わった後2人同時だったんです。これって何かあるって、考えちゃいますよね~ もうひとつ思ったことがあります。

天国の祖母: 「2人の離婚の手続きは、あんたがやりなさい!」

え~、もう勘弁してよー 介護だけでもいろいろあるのに、離婚もやるんかい!自分次第で離婚が決まるので、どうしようかな~

今日もしれっと、しれっと。


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東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて13年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか