佐藤雅彦さん「認知症になった私が伝えたいこと」で認知症の「感覚」が手に取るように分かった

認知症になった私が伝えたいこと

このブログでたびたびご紹介しております、認知症ワーキンググループ(認知症当事者のみなさんの集まり)の共同代表である佐藤雅彦さんの本を読みました。

やはり認知症ご本人が書く言葉には何とも言えない重みがあり、わたしたち介護者へのインパクトはとても大きいものがあります。そんな佐藤さんご自身が感じる、認知症の「感覚」を表現した一部をご紹介します。

認知症になる前にくらべると、時間が経つのがすごく早く感じます。なぜかはわからないのですが、あっという間に時間が経ってしまうのです。

いつもその瞬間だけを生きていることになるから、早く感じるんでしょうか?

身のまわりの音や、人の話し声が非常にうるさく感じられ、そのせいで疲れやすくなっています。

”並行して何かをするのが苦手になる” とあるので、こういう状況も大変なんだろうな・・・

「物盗られ妄想」がよく言われますが、あれは、「ここに置いたのは間違いない」と思ってしまうからなんですね。自分が別のところに置いたという意識がないのです。

確かに、うちの母も自信を持って間違います。でもって、誰かのせいにして取り繕います。

認知症の人の施設などでは、よく食堂でテレビがついていたりしますが、ごはんを残す人が多いのは、このためではないでしょうか。きっと、食べることに集中できないのです。

これも並行して何かをするのが苦手という話なんですが、食事にこのような影響があるとは・・・

机にメモが5~6枚貼ってあったとします。真ん中の一枚には注意を向けられるのですが、まわりの4~5枚は認識しにくい。視野が狭くなるというのとはちょっと違って、4枚~5枚のメモは、絵画の風景のように、背景に溶けこんでしまう感じです。

母のアナログカレンダーの見方に疑問を持っていたのですが、これを読んで納得しました。当日は分かっても、前日と翌日は風景のように見えているんだな・・・

人のお世話になる一方は、とてもつらいものです。人間が生きていくうえでのよろこびのひとつは、人のために何かをすることだと思います。

認知症ケアのドッグセラピーの話を前に書きましたが、それと同じで少しでも誰かの役に立ちたいとか使命感は、認知症にとっても大切なんですね。

認知症の感覚というのは、うまく説明できませんが、たとえて言えば、本棚が崩れたような感じなのです。棚に入っていた本は、たしかにそこにある。でもバラバラで、雑然として、整理がつかない。

なるほど・・・本はあるって事は、断片的に記憶はあっても繋がりがないってことですね。何かのきっかけで急に話を思い出すのは、そういう事なんですね。

第3章途中からガツンってやられますよ、編集なしの佐藤さんの原文に。佐藤さんって、糖尿病でおひとりで暮らしてらっしゃるんです。

インスリンを食事前に必ず打つ、認知症の薬を朝、夜飲む、そして独居・・・これを続けているってすごいです!母がもし糖尿病を患ってたらインスリン打ち忘れて、たぶん死んでいる・・・

わたしも先日、認知症の電子書籍を書きましたが、一番苦労したのは100ページ前にどんな事を書いていたかを思い出す事です、かぶってはいけないので。編集者の手を借りながら佐藤さんは出版されていますが、それでも認知症の方が本を出版されるって、それはそれは想像できないくらい大変な事だと思います!

佐藤雅彦さん関連情報

「つたえる」 「つくる」 「つながる」 頭文字である ”つ” が3つで、3つの会という命名をされたそうです。認知症の当事者同士の情報交換がされています。

認知症ワーキンググループの最新の活動状況が分かるFacebookページです。

そして今回ご紹介した本がこちらです↓

認知症になった私が伝えたいこと

認知症になった私が伝えたいこと

佐藤 雅彦
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東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて12年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか