認知症であることを本人に伝えるかどうか?

認知症であることを、本人に伝えるかどうか?

認知症と診断されて介護が始まった直後や介護が始まって数年経ったあとで、こうした悩みを抱える介護者はいます。わたしは認知症介護歴10年目でだいぶ時間が経っていますが、今の考えを改めて書いてみたいと思います。

ムリに伝える必要はない

わたしの答えは、認知症であることをムリに伝える必要はないでした。

それこそ認知症に対して、かなりのネガティブイメージを持っているとしたら、認知症と言われるだけで相当ショックでしょうし、将来の自分に対しての不安も大きくなります。あまりの不安の大きさから、外出を控える人もいるでしょう。

あるいは軽度の認知症であれば、家族や医師から認知症と言われたとしても、自分は何も問題なく生活できているのに何を言っているの?、そんなの受け入れられないって思う人もいます。

わが家でも、母には「認知症」と伝えずに「年相応のもの忘れ」と伝えたまま、10年が経とうとしていて、認知症も軽度から重度まで進行しました。余談ですが、最初の認知症の診断の際、医師から「あなたは認知症です」としっかり告知されてます。

これだけの時間が経って、母は自分の認知症を認めているかというと、完全に他人事です。最近も新聞の記事を見て、「認知症の人、大変そうね」と言ってたくらいです。

さっき食べたもの、さっき行ってきた場所を思い出せない自分を理解していますが、なぜそうなるのかまで分かってなくて、何だかサッパリわかんないとよく言います。

介護者の思い

介護者の中には、「認知症と分かってもらいたい、分からせたい」と考えている人が一定数います。分かってもらうことで、例えば車の運転を止めてもらおう、同じものを何個も買うのを防ごう、病院に行ってもらおうなど、介護を改善したい思いがあるのかもしれません。

わたしは、認知症と伝えずにウソをつき続けているので、ウソから解放されたら少しはラクになるかなと思ったことはあります。いろいろとウソをつくのがつらいと悩む介護者もいますよね。

いずれのケースも、本人に認知症と伝えた先に何があるのかっていう話かなと思ってます。伝えたあとの反応は、本当に人それぞれなので答えのない話ですが、怒る人、親子ゲンカに発展する人、落ち込む人、何もない人、いろいろです。

ちなみに現在の母なら、伝えてもすぐに忘れます。そんな大切なことまで忘れるレベルだったら、今さら伝える意味はありません。だから、このまま最期までしれっといくつもりです。

ちなみに最初に医師から認知症と伝えられたとき、わたしはドキッとしたのですが、自分の難病の話と勘違いしてました。

ただ伝えてない葛藤もあって、もうちょっと認知症と自覚してくれていたら、物事に対して慎重に注意深く行動してくれるかもと思ったこともあります。でも自覚したとしても、注意深くどころか、注意力散漫に確実になっているので、やっぱり意味ないかもって思ってます。

認知症と伝えることで、本人にも介護者にもメリットがあるのなら、わたしも伝えていたと思います。でもメリットがよく分からかったし、デメリットだけはハッキリ分かっていたので、それならばムリに伝える必要はないと思って、ここまでやってきました。

皆さんなら、どう考えますか?

音声配信voicyの最新回は、離れた場所で介護している人をどうサポートするかのお話です↓

今日もしれっと、しれっと。


にほんブログ村 介護ブログへ


【わたしの書いた最新刊】
東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(80歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて12年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか