「ここはどこ?」認知症の見当識障害を疑似体験する方法

見当識障害

うちの母は、ミヤネ屋を見ながら寝てしまいます。しばらくすると、

寝てないよ!

昔、ファブリーズのCMで松岡修造が寝ていたのに「寝てないよ」というシーンがあったのですが、まさにあの状態。そのあと決まって、

あら、あんたいつ来たの?
いま、何時?

こう言います。あまり寝過ぎると昼夜逆転を起こすので、「わざと」席を立ったり、物音を少し立てて自然と起こします。寝て起きるたびに

  • 今、何時?
  • ここはどこ?
  • 昼?それとも夜?

これを繰り返します。

寝る直前まで一緒に話をしていたのに、寝てしまうとその記憶が飛んでしまい、わたしが東京からワープして飛んできたかのような感覚になっています。これがいわゆる認知症の「見当識障害」ですが、わたしも同じような感覚になります。

寝すぎたら、軽い見当識障害になりませんか?

アホみたいに眠ってしまって、時計が3時を示していた場合、

「ん?3時って、夜中、昼??」

なんて経験、誰でもありますよね?(歳をとると減りますが・・・)また記憶にはっきり残るような夢を見たあとで、目が覚めると現実を認識するまで少し時間がかかりますよね?

認知症でない人は、そこから時計を見たり、太陽の光を見て自分の居る時間や場所を正確に把握できるのですが、認知症の人は、把握までに時間がかかったり、最後まで分からなかったりするわけです。

健康な方でも昼寝をして目覚めたときなど、今が昼か夜か、また、どこで寝ていたのかとっさに判断がつかなかったことがあると思います。アルツハイマー型認知症の方は記憶が障害されていますから、混乱や不安はいっそう大きなものになります。
引用元:http://sodan.e-65.net/kaigo/guide/kentousiki.html

霧の向こう側で待つ息子

目覚めるたびに混乱する母を見ながら、自分が「寝過ぎて混乱している感覚」を思い出すようにしています。

「なるほど、あの感覚の中に母はいるんだ」

と。わたしは一瞬混乱したあとで、現実を知ることができます。しかし母の場合は、その混乱の時間が長いんですよね。あの感覚の中で生きているのかと思うと、そりゃ不安にもなるし混乱もするよなって理解できます。

ちなみに母は起きると、アナログカレンダーを見る習慣がついています。デイサービスに週2回通っているので、それが程よい緊張感になっています。

明日、デイサービスかと思った~

わたしが居ることを確認したあとは、アナログカレンダーを見る → 今日が何日か分からないから、デジタル電波時計で日付を確認する → もう一度アナログカレンダーで予定を見る → アナログの壁時計で時間を見る

こんなルーティーンを、母は行っています。混乱中は特に何もせず、現実に戻るまで待ちます。

霧の中にいた母が、霧を手で払いながらこっちに向かってくる。霧の向こう側にわたしは立っていて、こちらに辿りつけるかどうかをじっと見守っている・・・ただ寝て起きるだけのことなんですけど、寝すぎたあの感覚と同じと分かってから、少し違って見えるようになりました。

たまに息子でなく、宮根さんが立ってたりもしますけど。「一旦、CMです」って、何回もCM行きますよね・・・なんでだろ?

今日もしれっと、しれっと。


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東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて13年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか