認知症で独居の母が「規則正しく目薬を打てるか問題」をこう解決した

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8回目のケアプランの見直しのきっかけは、母の緑内障が確定したことから始まります。

緑内障は日本人の失明原因1位で、その症状に気づかない人が多いです。物を両目で見ているから、片目の視界が狭くなっていることに気づかず、ある日突然目の前が真っ暗に・・・実際に失明した人2人に、話を聞いたらこんな感じでした。

日本で詳しい調査をした結果、40歳以上の人では約20人に1人(5%)が緑内障で、その内8割以上の人は自覚症状がなく未治療です。さらに、70歳代では約10人に1人、80歳以上では約7~8人に1人が緑内障であることが分かりました。緑内障は、「早期発見」が大切です。40歳を超えたら年に1回、眼科健診を受けるようにしましょう。
引用元:https://eonet.jp/health/doctor/column19_1.html

母の緑内障が見つかったことは本当にラッキーで、最初の病院の眼科医が不思議な人でなかったら、こうはならなかったと思います。白内障の疑いがあり、妹が母を病院に連れて行ったのですが、そのたびに「なんかあの医者、なんか不思議だ・・・」と。

認知症同様、高齢者の眼科通いも長期化することは間違いないので、3回くらい受診してセカンドオピニオン。それが、今通っている眼科でした。

白内障はやはり白内障だったのですが、緑内障の検査も受けることになったのが、今年の7月。母に視野検査を受けてもらうと、どうやら左目の上の視野が欠けている模様。

しかし視野検査は、認知症の人にはかなり難しい・・・視点を1点に合わせたまま、周りがどこまで見えるかのテストなのですが、(わたしも試しに受けてみた)ボタンを押す意味を10分近く理解し続けることは、今の母には厳しいです。視野検査は誰でも難しいから、3か月以内にもう1回受けましょう、テストに慣れると結果も違うからということで、受けたのが先日でした。

眼科医に認知症だと伝えてなかったので、伝えようと思っていたのですが、視野検査以外にOCT検査という視神経を見る検査も実施してくれました。(この検査のほうが、認知症の人にはいいと思います)結局、どちらの検査から見ても緑内障が確定しました。

認知症で独居の母が目薬をどう打つか問題

緑内障の目薬は

  1. 1日1回、1滴ずつ(左目が緑内障ですが、両目打つことに)
  2. 眼から目薬がこぼれると、眼の周りが黒くなる
  3. この目薬は、まつ毛が伸びる

という、女性にはうれしいけど、やっかいなもの。

なので、母を仰向けに寝かせ、ティッシュで目薬がこぼれないように抑えながら、1滴だけ打つというマニュアルをわたしが作成し、デイサービス、ヘルパーさん、理学療法士さん、訪問看護師さんに配布しました。ひとりひとり口頭で伝えるより、この方が効率がいいし、何度でも確認できます。

母は元々ドライアイだと言って、1日に何度も目薬を差す習慣がありました。白内障の目薬はそれでも良かったのですが、緑内障の目薬はそうはいきません。

訪問看護師さん、薬剤師さん、ヘルパーさん、かかりつけ医に「独居で認知症で、緑内障の人いませんか?」と聞いたところ、施設で目薬を管理することはあっても、在宅で独居で認知症の人の例はないとのこと。

かかりつけ医、ケアマネ、デイ所長とそれぞれ話し合った結果、「みんなで」目薬を打つことになりました。今まで家に来なかった曜日(土日月)も、ヘルパーさんが家に来るようになりました。デイサービスで目薬、ヘルパーさんが買い物に来てくれたついでに目薬、訪問リハビリの前に目薬、みんなで目薬を打ちます。

わたしの家の冷蔵庫に目薬を置いておき、家に来た人はそこから目薬を出すという体制を整えました。冷蔵庫で目薬を冷やした理由は、訪問薬剤師さんの一言でした。

訪問薬剤師
認知症の人は常温で目薬を打つと、打ったことを忘れる人もいますよ。冷やしておくと、冷感が残るので目薬を打ったと分かりやすいです

母は自分で打たないから大丈夫なのですが、このノウハウは目からウロコでした。訪問経験のある薬剤師さんは、やっぱ違います。

目薬を普通に保管すると、母が目薬を見つけて何滴も差し、まつ毛が伸び、目の周りが真っ黒になって、盛岡にパンダが1頭増えることになります。しまいには笹を食い出す可能性もあるので、目薬は母が気づかない冷蔵庫の最上段で保管することにしました。

ヘルパーさんの来る時間がせっかく増えたので

目薬を差すだけだと、ヘルパーさんが来てもすぐ終わってしまいます。そこで、わたしが帰省していた時にやっていたことを、ヘルパーさんにお願いすることにしようと思ってます。まだきちんと伝えてなかった・・・。

  1. 入れ歯の掃除
  2. 母の髪の毛を洗う
  3. 冷蔵庫の賞味期限切れのものを廃棄する
  4. 冷蔵庫がカラになっていたら、補充してもらう
  5. 加湿器の水の補充

この体制になって、わたしの安心感は3割増になりました。今までは、家に誰もこない日がヘタすると3日はあったのですが、これからは毎日誰かが来てくれます。カメラでもチェックはしていますが、人間の目はより安心です。

緑内障は認知症同様、治らないので、目薬は一生続きます。それでも目薬を打っておけば、失明することはないですし、なにより認知症の進行ともリンクしています。視野が狭くなると、活動量が減り、認知症が進行してしまいます。

直近の講演会では必ず、この話をしています。皆さんのご家族も80代を超えていれば、おそらく白内障の目薬を打っているかと思います。そのついでにぜひ、緑内障の検査もしてみてください!シャンシャンのニュースを見たら、緑内障の検査を思い出しましょう!

今日もしれっと、しれっと。


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【わたしの書いた最新刊】
東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

2件のコメント

先日、神奈川区での講演を拝聴したみどまるです。
お母様の目薬、その後どうなったかな~~と思ってました。さすがの解決法ですね。
盛岡パンダ見てみたかったですけど
たくさんの助けを出していい、と少し心が軽くなります。
寒くなってきました。お母様共々ご自愛下さい。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(80歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて12年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか