認知症の母は何歳まで歩けるのか?

母は10代の頃に、シャルコー・マリー・トゥース病という難病を発症しました。手足の筋肉が萎縮していて、ものすごくゆっくりなペースで今も進行しています。

先日、わたしの足で5分ほどの距離にある歯医者へ母を連れて行きました。真夏で熱中症の危険がある日や、真冬は雪道で危ないので、どんなに近くてもタクシーを使います。

それ以外の時期はどうしていたかというと、母のリハビリのいい機会と考えて、母に歩いてもらっていました。

外を歩くリハビリテーション

母は家の中は壁伝いで歩けます。しかし壁のない外は、誰かが歩行介助しないと歩けません。なので、デイサービスに行く際は必ず、誰かが歩行介助します。

本当は認知症になる前から杖の練習をしておけば良かったのですが、周りに足の不自由な姿を見られたくない気持ちが強かったのでしょう。杖の代わりに自転車を引いていれば、いかにも普通に見えるのでその方法で何十年もやってきたのです。

その習慣が認知症が進行しても残っているので、母はサドルに手をついてハンドルを持ってフラフラと歩きます。意外と道が平坦でなくボコボコなので、まっすぐ進めません。

転倒が最も怖いので、わたしは母のすぐそばにいて、少しでも躓いたらすぐに自転車を抑えられるような位置で寄り添います。だいたい15分くらいはかかるので、母にとってはかなりの運動になりますし、リハビリにもなります。

歩けなくなってきた母

コロナ禍で外食にもいかなくなったし、そもそもわたしの帰省頻度が激減しています。デイサービス以外で、外に出る機会がほとんどなくなってしまった母。その影響もあってか、自転車を押して歩けなくなっていました。

いつもどおり自転車を用意したのですが、1歩踏み出したところで母がギブアップ。ムリはさせられないので、わたしの腕をつかんでもらって、歩行介助すること20分。なんとか歯医者にたどりつきました。

わたしも母も疲れましたが、リハビリを怠るとすぐに車椅子がやってくるギリギリの状態が続いています。そういうこともあってデイサービスの回数を増やして、少しでも歩く機会を作っています。

手足が不自由でなかった祖母は、88歳でも元気に歩いていました。しかし子宮頸がんで入院し、病院のベッドから転落して大腿骨骨折をしたあとは、二度と歩くことはありませんでした。

認知症でリハビリの意味が理解できなくなると、祖母のようにあきらめざるを得ない状況になりかねません。とにかく歩ける限り、自分の足で歩いて欲しいです。

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今日もしれっと、しれっと。


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東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

2件のコメント

ある日、突然、親の介護が終わりました。
父は、3月に88歳になったばかりでした。
一人暮らしで、ほぼ毎日デイサービス利用していましたが、その日は、何処か行きたいところや、やりたいことが、あったのだと思います。
歩行は介助なしに出来ていて、それまでは、ちゃんと家に帰ってこれたのですけど。

最期まで、施設と信頼関係が出来てなかったこと、行方不明になったときの連絡等、きちんと連携できてなかったことは、後悔というより、不信な気持ちで、まだ心が癒やされていません。

今まで、くどひろさんから介護について、本当にたくさんのことを教えていただいて、色んなことを学ぶことができて、とても助けられてきました。
ありがとうございました。

ひまわりさま

施設との信頼関係で救われた人もいれば、癒されない人もいる。
ひまわりさんの言うとおり、日頃の連携は本当に大切だと思います。人間同士のことなので、いろいろ難しい面もありますよね。

お役に立ててよかったです。心が癒されるまで時間が必要かと思いますが、落ち着いたらまたブログに遊びにいらしてください。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(80歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて12年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか