コロナ終息後に訪れる介護の8つの未来

紙飛行機

新型コロナウイルスが終息したあと、社会や生活様式が大きく変化すると予想する専門家が多くいます。わたしも介護の未来がどう変化するか、ポジティブな面、ネガティブな面から予測してみました。

介護離職者が減る

新型コロナウイルスのおかげで、在宅勤務やテレワークがグッと身近になりました。zoomやskypeを使うことに、会社の上司や同僚も抵抗がなくなったはずです。

介護でどうしても会社に行けなくなったとしても、これらオンラインツールを使って仕事ができると今なら考えられますし、職場も受け入れやすい土壌ができました。在宅勤務でなんとかなるということは、介護と両立できると考える人が増えるはずです。

介護が理由で出社できず、結果として介護離職していた人も「オンラインで仕事ができるから、介護と仕事の両立ができる」と考え、大企業を中心に介護離職者が減るかもしれません。

見守りカメラで親を見守る人が増える

新型コロナウイルスの影響で、GWにオンライン帰省した方も多いと思います。テレビ電話の便利さやありがたさが、改めて分かったはずです。映像で親の姿が確認できると、不安は大きく解消されます。

見守りカメラは、親を監視しているようで嫌だと言っていた人も、オンライン帰省を機に、介護や見守りにも応用してみようと考える人が増えるかもしれません。

要介護者が増え、要介護度も上がる

外出自粛の影響で、要介護認定調査の件数が減っているというニュースがありました。

サービスを受けるために必要な「要介護認定」の申請数が各地で減っていることがわかり、自治体では「感染予防のため申請を控えている人が多いと考えられるが、暫定的にサービスを利用できる制度もあるので、必要な人は申請してほしい」と呼びかけています。

引用元:https://www.nhk.or.jp/politics/articles/lastweek/34699.html

外出機会が減り、運動不足によって、高齢者の筋力の低下は避けられません。足腰が弱り、ゴロゴロする時間が増え、今まで出来ていた生活習慣ができなくなっている高齢者は、実際に増えているようです。要介護認定を受ける必要のない予備軍止まりだった人も、コロナをきっかけに要介護者(要支援者)になるかもしれません。

自主的にデイサービスなどの介護保険サービスの利用を控えているご家族は、サービスを利用している時と同じレベルの生活を維持できていない可能性があります。結果として、要介護度が上がる人が増える気がします。

認知症の人が増える

家にジッとしていたことで、運動量が減り、社会交流の機会まで減ってしまい、MCI(軽度認知障害)の状態で維持できていた方も、認知症へコンバートしてしまうかもしれません。

介護施設よりも在宅介護を選ぶ人が増える

親を介護施設へ預けている方は、今なお集団感染に不安を感じているかもしれません。

新型コロナが終息したとしても、新たな感染症が流行する可能性はあります。また毎年やってくるインフルエンザに対しても、これまで以上に敏感になるはずです。

より集団感染リスクの少ない在宅介護のほうが安全と考え、介護施設よりも在宅介護を利用する人が増えるかもしれません。

介護職員が減る

経営者は、介護職の方をコロナからどれだけ守ってくれたのでしょうか?

新型コロナウイルスの対策を、事業所が経営者がどれだけやってくれたかを介護職員は見ていると思います。なかには、経営者の姿勢に疑問を持った方も多いことでしょう。

そもそも収入が多くなく、人手不足の中で介護職の皆さんへの負担は相当なものなので、コロナをきっかけに介護の世界から離れてしまうかもしれません。そうあって欲しくはないのですが、介護者家族としてはそういう覚悟が必要なときなのかもしれません。

ケアプランの見直しを迫られる

今までお世話になっていたデイサービス、デイケア、ショートステイなどが倒産してしまったり、介護職の退職等によって、新型コロナ前の介護保険サービスを継続できなかったりしている方もいます。

サービス別に「経営への影響」を見てみると、「影響を受けている」と回答した事業所が、特別養護老人ホーム 23%、有料老人ホーム 29%、訪問介護 31%、グループホーム6 %と続く中、通所介護では82%に上った。

引用元:https://www.koureisha-jutaku.com/newspaper/synthesis/2020050613_02_1/

特に多くの人が利用している、デイサービスの影響が大きいようです。そのことによって、新たな事業者探しが必要になりますし、家族の症状の悪化によって介護保険サービスの見直しが必要になる可能性があります。

さっきとは逆で、在宅では介護が厳しくなり、施設を利用するきっかけになるかもしれません。

わが家もそうであったように、急に使えていた介護保険サービスが停止になったり、倒産になったりすることはどの家でも起こり得ることに、改めて気づかされるきっかけになると思います。

オンライン診療の利用が増える

院内感染を恐れて、通院を止めた高齢者が増えています。持病が悪化し、要介護度がこれから上がる方も多いことでしょう。通院を控えた結果、全国の病院の8割が経営悪化したというニュースもあります。

新型コロナウイルスの感染拡大が病院経営を圧迫する副作用を生んでいる。病院団体が18日公表した集計によると、4月時点で8割の病院で経営が悪化した。院内感染を恐れて通院を控える患者が相次いだのに加え、病院側も感染を防ぐため入院を減らさざるを得ないという。

引用元:日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59245740Y0A510C2EE8000/

オンライン診療はこれまでもありましたが、なかなか広がりを見せませんでした。しかし今回の件をきっかけに、オンライン診療を使う病院が増えたり、外来だけではなく訪問診療にも力を入れる病院も増えるかもしれません。

3つはポジティブな未来ですが、5つはあまり想像したくない未来です。1日も早く、コロナが終息して欲しいと願うばかりです。

今日もしれっと、しれっと。


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【わたしの書いた最新刊】
東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

2件のコメント

はじめまして。今朝の中国新聞くらし欄で「認知症介護、試練の時」という記事からこのブログを拝見しました。 実は私のパートナーは3年前にくも膜下出血で倒れ、心身に重い後遺症がありいまだ入院しております。脳の障害が重いのですが、毎日顔を見せるとかろうじて私をわかってくれていました。が、このコロナ禍で面会禁止。 電話ができる方はするのでしょうが、動くことも意思表示することもできない彼とはつながる手段がありません。 書いた手紙を受付で渡して読んでもらうようお願いしていますが、すでに私のことも認識できないようです。 それでも、万が一病気をうつしてはいけない、、という一心で面会制限がとける日をじっと待っています。 「忘れられるこわさ」という共通点を感じてコメントさせていただきました。「脳の後遺症が日に日に進んで戻らなくなるこわさ」を耐える試練の時だと感じています。

lovemonkeyさま

新聞読んで頂き、ありがとうございます!

このブログは親の認知症介護をしている方が多くいらっしゃるのですが、パートナーのくも膜下出血の面倒を見ているlovemonkeyさまのような方からのコメントは初めてかもしれません。(高次脳機能障害を持つ親御さんを介護している方はいます)病気も立場も違いますが、本当に共通していて、目からウロコでした。忘れられる怖さに対しての覚悟は前からありますが、まさかコロナがこんなところにも影響するとは思っていませんでした。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて13年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか