帰京する日の朝、時間がないのに母の便失禁3連続で絶句した話

遠距離介護が終わって帰京する日の朝はいつも、母と笑顔でお別れしようと意識している。

起きてきた母に台所で手を洗うよう促しつつ、わたしは母のお尻をポンポンと触った。毎朝、ズボンが濡れているかどうかチェックしていて、濡れていると布団やシーツもアウトになる。でもこの日はセーフ。

朝食を先に食べ終えたわたしは、母の着替えを用意したり、布団を整えたりと家じゅうを駆け回った。母に薬を飲ませ、歯を磨こうとしたところで、急にトイレに行きたいと言い出した。

1回目の便失禁

実は前日朝に便失禁が2回あったので、ちょっと身構えた。3日ほど便が出ておらず、2日前に坐薬を投入した効果の便失禁だったが、まさか今日も?

ちょっとー、ちょっとー

トイレの中から、母の叫び声。ノックして扉を開けると、リハパンを膝までおろした状態で便座に座っていて、リハパンに軟便がベットリ。急いで替えのリハパン、ズボン、おしりふき、ビニール手袋を用意し、マスクでニオイを防御してから便失禁処理を開始した。

まずはウォシュレットで、ある程度までお尻を洗う。その後母にトイレの手すりにつかまって立ってもらいながら、お尻を自分のほうに向けてもらうと割れ目にも便がベットリ。おしりふきを10枚使ってキレイにし、ズボンも靴下も汚れていなかったが念のため交換。

ひと通り着替えが終わったあと、台所で念入りに手を洗ってもらって、デイの送迎車が来る時間まで居間でテレビを見てもらった。

2回目の便失禁

母がテレビを見ている間に、わたしは汚れたリハパンの廃棄とトイレ掃除をした。

リハパンの便は可能な限りトイレに流すのだが、全部は取れないのでニオイのしないゴミ袋BOSに入れた。このゴミを残したまま帰京したくなかったので、他の燃えるゴミと一緒に歩いて5分ほどのところにある、ゴミ捨て場まで行って捨てた。

ゴミ捨て場から戻って居間をのぞいたら、母がいない!寝室にもトイレにもいないし、家のすぐ外も探したがいない。まさかと思ってお風呂場をのぞいたら、トイレと間違えた母が用を足していた。

くどひろ

ちょっとー、ここトイレじゃないでしょ!

お風呂の椅子に雑巾を敷いて座っていて、雑巾に便がベットリつき、浴室の床にも落ちていた。遠距離介護最終日は笑顔で終えるはずだったが、ここで終了。

極寒の冬に母が浴室とトイレを間違えたことがあって、それ以降浴室には鍵を掛けている。でもこの日は帰京する日だったので、最後に浴室を掃除をして換気のために開けておいたところに母がトイレと間違えて入ってしまい、2回目の便失禁をした。

しょうがないので近くにあったシャワーで母の下半身を洗い、再びダッシュでリハパン、替えのズボン、おしりふき、ビニール手袋を用意。母の着替えが終わったところで、また浴室の掃除。

排水口をキレイにするジェルを使って掃除したのだが、こちらもやり直しに。ひととおり浴室をキレイにしたところで、とんでもない状態の雑巾を外の水洗い場で洗ったあと、消臭ストロングでもみ洗いをして、元通りになった。なぜ雑巾を椅子の上に置く必要があったのか?

この洗濯物を残して帰京すると、ヘルパーさんが大変になるので急いで洗濯機と乾燥機を回す。朝から3回も洗濯機を回していて、寒い朝だというのに、便失禁処理に追われたわたしは半そで、汗だく。自分のTシャツも、ついでに洗濯機に放り込んだ。

今後は自分が離れるときは必ず、浴室の鍵はかけると誓った。

3回目の便失禁

デイサービスが迎えに来る10分前。

2回の便失禁処理から解放されて、一息つこうとしたところで、母がトイレに行きたいと言い出した。今度は浴室ではなくトイレに行ってくれたのだが、また母の叫び声が。

ちょっとー、ちょっとー

ノックしてトイレの扉を開けると、1回目の便失禁と同じ状況になっていた。すでに2回便失禁していたので量は少なかったが、リハパンは交換しないといけないし、デイまで時間がない。

手すりにつかまってもらって母を立たせ、三たび母のお尻を拭いた。半分くらい残っていたおしりふきは、朝の2時間半でなくなってしまった。

便失禁と格闘している最中に、デイの送迎車が到着。寒い朝なのに半袖だったわたしは明らかに変だったので、デイのスタッフさんに朝の3回の便失禁について説明。

母を何とかデイに送り出したあと、またまたトイレ掃除をする。母はもういないので、4回目の便失禁に追われることはない。わたしも東北新幹線に乗らないといけないので、急いで自分の荷物の準備をした。

3回の便失禁の原因

たまっていた便が坐薬効果で一気に出たこと、加えて軟便だったので、母はトイレでうまく処理できなかったようだ。軟便にならないよう薬を飲んでいるのだが、完璧に便の硬さをコントロールできるわけではないから難しい。

またお尻の穴をギュッと締める力がかなり弱く、肛門で便を我慢する力がないので、リハパンが汚れるのは仕方ない。頭では分かっているのだけど、連続でやられるとさすがに声を荒げてしまう。特に浴室の便まみれの雑巾を見たときはもうダメで、なんで余計な仕事を増やすんだとしか思えなかった。

わたしがいるときでよかったのと便が出ないほうがまずいので、大変だったが今は納得している。とはいえ2時間半で3回、しかも便のほうの処理だったのでさすがにぐったりしてしまった。遠距離介護の最終日くらい、母に優しく優しくって思っていたけど無理だった。

今日もしれっと、しれっと。


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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて12年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか