年末年始の帰省は交通費が高く、人も多いのでわたしは避けるようにしている。
妹が大晦日に実家に泊まるし、元旦もデイサービスはやっている。
なので、わたしは12月24日くらいまでしか、盛岡にいないことが多い。
帰京する前日の夜に、だいたい母子でクリスマスを毎年やっている。
クリスマスの飾付けはせず、クリスマスケーキ(ショートケーキ)とお寿司(記事タイトル下の写真)を食べるだけだ。
母が「認知症でよかったな」と思う瞬間のひとつが、このクリスマス。
もし認知症でなかったら、
なんて言うはず。
わたしが小学生の頃は、オーブンレンジでチキンを焼いたり、ケーキを母が買ってきていた。
「その当時の母は、今はもうここにはいない」という、認知症介護の決まり文句も書けるのだけど、介護者としてそのステップはもう超越しちゃってるから、その当時の母を思い出して感傷的になることは、今はほとんどない。
母は認知症なので、毎年こういう反応になる。
トナカイの着ぐるみを着たり、サンタの白ひげで仮装する気合いもないので、必ずお寿司とケーキという、やっつけクリスマス。
ビアードパパのシュークリームを買い、あのパパをサンタだと言い張って、母にシュークリームを食わせてもいいかな・・なんて悪魔の囁きが聞こえたことは、ここだけの秘密にしておいてほしい。
それでも母は喜んでくれるので、わたしは毎年大助かりなのだ。
ケーキを食べ終わった瞬間から、母のクリスマスの記憶は消えてしまうのだけど、その瞬間を楽しめればそれでいい。
クリスマスプレゼントをあげたら、少しは母の記憶に残るのかもしれないが、どうもそういうのは照れくさい。
母娘の関係のほうが、こういう時プレゼントを渡しやすいのでは?息子では、やっぱ厳しい。
今年は11月に、レバ刺し並みに生々しいクリスマスプレゼントを母にあげた。
これにかなうクリスマスプレゼントは、わたしの中で見当たらない。
でも、寿司を買いにいったら、こんなものを見つけた。
1個756円もする、愛媛県周桑地区の福嘉来(ふくがき)という柿。
糖度が高く、果汁たっぷり。最初はサクサクで、緻密で滑らか。四方に溝があるのが特徴。
母は柿が死ぬほど好きで、この秋もほとんど箱買い。
ヘルパーさんも分かってるから、必ず箱で買ってくる。
どれくらい母が、柿が好きかを解説する。
まず朝食中に、柿を食べる。
朝食後に、また柿を向いて食べる。
昼食中に柿を食べる。
食後に、ニコニコしながら柿をまたむく。
夕食の時に柿を食べた10分後に、
と、しれっと言ってくる。
1日6個も柿を食う母に、もう笑うしかない。
食ったことを忘れるのも、いいのかもしれないとすら思える。
「柿、柿」と言う母をみて、さるかに合戦のさるか!とツッコミを入れたくなることもある。
おいしい熟した柿を食うだけ食って、そのうち青い柿をわたしに向かって投げてくるかもしれない。
そしたら、爆報!THEフライデーの介護問題で、取り上げてもらえそうだ。
この前亡くなった父が救急病棟で氷しか食べられない姿を見ているので、何でも食べられるってありがたいと今は強く思う。
だから母には、健康なうちに好きなものを好きなだけ食ってもらおうと思ってる。
1個756円の柿も最強だけど、史上最強のクリスマスプレゼントは遺族年金。
その生々しさからレバー臭がしたかもしれないけど、現金に勝るものなし!
今日もしれっと、しれっと。