認知症の母がもらったカタログギフトに思いっきり苦戦させられた話

わたしの妹の長男(甥)が今年高校に入学したので、わたしと母でお祝いを渡しました。そしたら妹が気をつかわなくていいのに、お返しでカタログギフトをくれました。

妹からもらったカタログギフト

カタログギフトは、わたしと母にそれぞれ1冊ずつ。わたしは食べ物がいいと思い、母と一緒に食べられる北海道のいくら、アイスクリームのセットを早々に選んで、すぐ注文を出しました。

母は、カタログギフトの仕組みがよく分かりません。認知症になる前は理解していましたが、母にカタログを渡してもそれはただのカタログでしかありません。

それでもたくさんの商品の中から選ぶ行為は自分でやって欲しいので、カタログギフトの説明から始めてみたのですが……。

カタログギフトの説明

くどひろ
これね、孫の高校入学のお祝いのお返しね。このカタログの中から好きなもの1つ選んでいいよ
どこの高校さ、入ったの?
くどひろ
●●高校。そのお祝いのお返しね。この中から好きなもの1つ選んでいいよ
このカタログはなんなの?
くどひろ
孫が高校入学したから、そのお祝いのお返しね。この中から好きなもの1つ選んでいいよ
1つ選べばいいのね。お金はどうするの?
くどひろ
▲が払っているから、うちらはもらうだけなの。
あらそうなの。で、どこの高校入ったの?
くどひろ
だから、●●高校。(これは前に進まないと判断)この紙に全部書いておくから、これね。これ。
あらー、●●高校さ入ったの。何あげるかな
くどひろ
孫にプレゼントするんじゃなくて、うちらがもらうの。この紙見て、これこれ。
もらっていいの?じゃあ、どれがいいかね

カタログギフトの中から1つ選んで注文したいのに、全く前に進みません。

それどころか途中から、もらう側でなくて孫にプレゼントする側に変化してしまいました。カタログを見始めたのはいいのですが、5分経たないうちにカタログの目的を忘れてしまいます。

この会話のループを延々と続けながら、カタログをめくり続けること1時間。母がこう言いました。

なんだか分からないから、今日はやめとく
ウソでしょ?

と正直思いましたが、232ページもあるし、認知症で短期記憶の保持もできないしで、確かに大変なのは分かります。でも母に選んで欲しい。しかし明日また、カタログギフトの説明から始めないといけない。母に説明した紙を取っておいて、翌日再利用することにしました。

2日目のカタログギフト攻防戦

とにかく、わたしの遠距離介護中にカタログギフトは決着させなくてはいけません。コロナ禍で簡単に帰省できないのです。

2日目も1日目と同じ会話のループが始まったところで、昨日書いたカタログギフトの目的の紙を母に見せます。紙のおかげで孫が高校に合格して、自分がお返しをもらうことは理解でき、2日目は1日目と違う流れになりました。

これにしようかしら。
母が選んだのは、カタログギフトの部屋のイメージ写真に写っていたソファーでした。
くどひろ
いや、それはもらえないやつだから。別なやつ選んで。
じゃあ、これはどう?
くどひろ
いや、そのソファーはもらえないやつだから。別なやつ選んで。

2日目はもらえないソファーを何度も選ぶループに入り、カタログギフトの目的の確認、孫の高校入学と、1日目よりも複雑なループになりました。

10分が経過し、30分経っても全く決まる気配はありません。50分が経過し、明日もカタログギフトの説明したくないなと思っていたら母が、わたしが選んだものを聞いてきて、北海道のいくらとアイスと説明したら、急に食べ物スイッチが入り、最終的に選んだのがこちらでした。

母が選んだカタログギフトの桃

変な置き物ばかり見ていたので、それはいらないよと思っていたら、最後の最後でまさかの桃を指名しました。本当にこれでいいか、最後に何度も確認しての桃。後日妹が実家に来たので、お返しはいらない、カタログギフトはNGと言っておきました。

何度も誘導しようか、そしたらあっという間に決まるのにという悪魔のささやきと、選ぶ楽しみを奪っちゃダメという天使が戦い、最終的には天使に軍配が上がったのです。

認知症介護中にカタログギフトをもらったら、結構苦労するんですね。桃は7月にくるのですが、わたしはその時盛岡におりません。選んでもらったのはいいけど、どうやって食べてもらおうか?

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今日もしれっと、しれっと。


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東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

2件のコメント

はじめまして。
匿名希望です。
母は要介護1で独り暮らしです。
本日、息切れしながら母から電話がありました。
宅配の食材が大量に届いた、少しは冷蔵庫に収納したが、、、、、、、との内容、、、、、。
生協の宅配がカタログから選び注文用紙にマークする、システムを、母は、ずっと以前から利用しています。たまに、体調が良くないと、宅配注文を休みにしており、再開した時に、、、一度に大量に注文してしまう、、等が繰り返しおきています。
少しだけ複雑な品もあり、、翌週届く品もあれば、翌々週に届く品も、掲載されているため、しっかりと、在庫確認しても、二連続で注文してしまったり、、は、時々は、ありがちでした。
が、最近は、確認が面倒なのか?忘れてしまうのか?分量の計算を間違えるのか?とても1週間では食べきれない品数を注文してしまったり、注文を調整して休み過ぎてしまい生野菜果物が不足してしまったり、、、翌週には届くシステムなのに、、ビタミンも飛んでいそうな期間の経った野菜果物を食べている時があります。
スーパーマーケットには、独りでは、ふらついたり、持てなかったり、体力低下などで、買い物にいけません。ヘルパーさんに買い物もお願いしていた時期もありましたが、お弁当は、毎回では飽きる、自分で調理をしたい、など希望しており、頭の体操を兼ねて、宅配は続けています。
が、コロナ禍で、私も頻繁には帰省が出来ず、、、食材整理やら日用品のストック買い物等々、
出来ないまま、、、ケアマネは、とにかくスローで、プラン実行までに1年、半年以上かかっています。
介護保険内の計算が優先なのか?料金、人手不足を理由に、手配に何か月もまたされます。
ケアマネジャーを変えたくても、コロナ禍では、引継ぎ受け入れ先もエリア内では、、無理の状態が続いています。しかななく、、現状のまま、ケアマネに相談しながら、、遠距離見守り介護しています。
ケアマネは、食べる事は第一ですから、と、言いながらも、傷んだ食材、解凍されてしまった食品の再冷凍を相談しても、ヘルパーさんに確認をお願いしても、、きちんとやっていただけていないのではないか?と、思える出来事が多すぎる今日この頃です。かかりつけ医からは、毎回、たんぱく質不足、水分補給!をコメントされています。
なにか?食事に関して、良いアドバイスはございますか?

mmさま

コメントありがとうございます。
わが家と環境が似ていると思いました(遠距離介護、買い物にひとりで行けない、調理は続けたい、食材が腐る、全く同じです)

1.生協さんに相談してみる(例えば宅配の代理注文ができるかなど、今の状況を説明してアドバイスをもらう)
→ 生協さんの依頼で何度か認知症の講演をしましたが、認知症への理解もあると思うので解決の糸口が見つかるかも?
2.わが家ではヘルパーさんに弁当ではなく食材を購入してきてもらってますし、腐った食材を見つけたら廃棄もお願いしています。買い物の目安として冷蔵庫の横に固定の買い物リストを作って、貼ってます。
3.ケアマネさんは変えたほうがいいかもしれません。ケアマネの事業所に言いづらいときはお母さまの家の担当地域の地域包括支援センターか、市の介護保険課に相談可能ですよ。うちは6年お世話になったケアマネを変えました。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて13年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか