母の認知症は重度まで進行したが介護レベルは重度に対応できていない話

認知症介護を何年も続けていると些細なこと、どうでもいいことに対しても腹が立ちます。

それは第三者から見ると、「そんなことでイチイチ目くじらを立ててたら、認知症の人がかわいそう」とか「もっと優しくすればいいんじゃない」と言いたくなるレベルのものです。

介護する側も分かっているし、何とかしたいとは思ってます。だけど些細なこと、どうでもいいことを10回、100回、1000回、1年、5年、10年と何度も何度も何度も経験すると、自分ではコントロールできなくなり、簡単に怒りのスイッチが入ってしまうようになります。

何年も前から繰り返されるわが家の些細なこと

わたしの最近のプリプリも文字にするとしょうもない、どうでもいいことで怒っているとすぐに分かります。ここに書くこと自体恥ずかしいレベルで、自分でもアホだなと思います。

そのしょうもないこととは、新聞に入っている折り込みチラシです。

わが家では母が新聞の内容を理解できているかどうか不明ですが、毎朝ポストに行って新聞を取る能力と新聞を読むか眺めるかする能力がかろうじて残っているので、止めずに取り続けています。

認知症になってから母は、折り込みチラシを細かくちぎってゴミ箱に入れるようになってしまいました。(記事タイトル下の写真)わたしも最初は気にも留めてなかったのですが、だんだん燃えるゴミが増えて面倒なのと、リサイクルに回せないので指摘するようになりました。

数年前まではまだ、古紙のリサイクルの意味を理解してくれましたが、今は残念ながら何を言ってもダメです。ゴミ箱にちぎったチラシがこんもり入っていて、それが何年にもわたって続いています。

1回や10回くらいならどうってことないのですが、これが何年にもわたって繰り返されると、ゴミ箱を見ただけで「また始まった!」とすぐに怒りのスイッチが入る自分がいます。

いいの!こうやって捨てたほうがいいでしょ。

くどひろ

これ見て!これが盛岡のゴミの捨て方ね。チラシは古紙でまとめて捨てるって書いているでしょ、リサイクルってあるでしょ!

誰だか分からないけど、こうやって捨てたほうがいいって言われたの!

ゴミの捨て方を伝えたとて、リサイクルについて語ったとて伝わらないことぐらい分かっていますが、100回言ったら1回くらい伝わるかもしれない淡い期待が完全に捨てきれていないのだと思います。期待はだいぶなくなりつつあるものの、どこかにまだ残っているのですよね。

根本から解決するしかない

文字にすると冷静になれるので、結局何をしたかというとわたしがチラシを抜くことにしました。そうすればイライラせずに済みます。またひとりの時はチラシを好きなだけちぎっていいので、わたしが帰省しているときだけの方法です。

やはり重度の認知症なので、すべての話を言ったそばから忘れてしまいます。母はネガティブ系ではなく、自信満々系です。わたしは掃除をきちんとやっている、料理も洗濯も全部自分がやっている、内容はすべて間違っていますが言い切ります。

重度の認知症への対応に、まだ慣れてないところがあるのだろうなと自己分析しています。手足が不自由な母なのでパッと見でも大変だろうなと思いながらも、さすがに10年見ていると慣れてしまって苦労を感じ取れなくなってます。

あとは認知症への許容量(コップの深さ)が底のほうで汚れが蓄積していて、どんどん浅くなり、同じ話の繰り返しに対してもすぐにイラっとしてしまいます。軽度、中等度の頃はなんとか対応していましたが、重度まで来るとこれまでの蓄積に加えて、同じ話の回数が何倍、何十倍にもなるので更なる人間修行が必要になりそうです。

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今日もしれっと、しれっと。


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東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

10件のコメント

おはようございます。
認知症の症状が進むと対応にとても困ることがありますね。

ある日、実家でペットボトルを潰して捨てたら認知症の父にめちゃくちゃ怒られました…

私の場合、実家に滞在する時間が少ないので、それ以来、父がやっている通りに処理するようになりました。ゴミに関しては認知症になる前からきっちりしていた父だったので、ヘルパーさんのご協力もあり、これで何とかなっています。

新聞屋さんで、チラシを入れないでとお願いしてみるのも良いかも知れません。

あみちゃんさま

確かにいいですね! 量がさらに増えたら、その手を使いますね。
わたしが東京で新聞を取ってないので、たまに帰ってきて岩手のチラシも新聞も見たいっていうわがままがあります。なので自分の部屋に逃がしてます。

 うちの母は診断8年目で身体は元気な方ですが、認知機能は8年なりの低下を見せています。毎日大声で新聞を読み上げ続けます。(意味はほとんど分かっていないと思われる)
 居間を兼ねた台所の食卓に新聞や本を広げて陣取り、終日ここで過ごす私にとって騒音になっていてイライラが募ります。
 母の喉を鍛えるトレーニングだよと、思うことにして我慢しますが、耳栓することもあります。
 くどひろさんのお母様も、指先を使って手先の器用さと脳トレをしているのだと、思ってあげて下さい~実際脳の大部分が手指に繋がる領域らしいし

お松さま

耳栓をする話、相手に何かをしてもらうのではなく自分のほうが常に環境を変えざるを得ない状況、うちも同じです。
手が不自由なので、リハビリと思える日もありますがそう思えない日もあってこんな記事になりました。

皆さん苦労している…
些細な事が繰り返されてイライラ…
最近、自分は声掛けが出来なくなった。
元々、指摘ばかりしているから…
何か話せば喧嘩してばかりだから…

食事の準備などが義務感のように思えて、
思いやる気持ちが少なくなっているのでは無いか…
諦めたのかも知れない…

aoiさま

怒ってイライラの先にある諦めの境地が見えると、少しラクになれるかもです。
と杉山孝博先生がおっしゃってました。このブログで4つのステップを検索してみてください。

うちの認知症の父も、いろんなゴミをハサミで細かくしてから、捨ててました。チラシも。なんでと聞いたら、やっぱり誰かがゴミを圧縮して出せると言っていたそうです。それで、細かくしていました。ま、いっかーと思いましたが、この作業が始まると目つきが異様な感じになりまして、切り刻みたくなるような物は、あらかじめ、見なくていいように、こちらが捨ててました。で、ゴミ出し時に、ゴミ袋を見つけると、もっと圧縮できたのにと怒っていました。在宅は、限界でグループホームです。

くーちゃんさま

わたしも最近はチラシを先に片づけるようにしています。エコではないし、ゴミも増えるからです。
とはいえ遠距離介護なので、わたしが居るときだけの話で、ひとりの時は自由にやってます。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(80歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて12年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか