太田差惠子さんの最新刊「親の介護で自滅しない選択」の感想・書評

親の介護で自滅しない選択

遠距離介護の第一人者と言えば、NPO法人パオッコ理事長の太田差惠子さんですが、日本経済新聞出版社より最新刊が出たので読んでみました。

太田さんの定番とは少し違うかも?

太田さんの書かれる本は、介護に困ったときに辞典のようにして使えるものが多いです。ただ、この本に関しては少し視点が違っています。例えば「介護で仕事を休む場合、職場に理由を伝える?」というケースを、2つの見方で紹介しています。

自滅する人 → 「別の理由」と偽って休む
自分の人生を大事にできる人 → 親の状況を話して休む
引用元:親の介護で自滅しない選択(日本経済新聞出版社)

割と偽る人多いです。わたしも1回目の介護離職のときは、完全に偽りました。どんな制度があったとしても、結局は会社や職場の風土に依存します。

このような実用的な情報が62個あって、見開き2ページで分かりやすく解説されています。「介護ってこう!」とガチガチの頭で考えている人には、そういう考えもあるのか!ってなると思います。

わたしが知らなかったものとして、災害時等要援護者名簿の登録があるとのこと。災害が起きたとき、うちの母は間違いなくひとりで移動することができません。そういう人は役所に申告することで避難時にサポートを受けられるとのことです。で登録しようと調べたら、だいぶ前に民生委員さんが来て登録したっぽい・・・

この本の新しいチャレンジ

著者の太田さんに伺ったところ、この本は若い層にも読んで欲しい本とのこと。具体的には、これから介護が始まるであろうアラフォー世代の介護予備軍も意識して書かれた本だそうです。このブログのタイトル「40歳からの遠距離介護」ともマッチしているのですが、ブログは予備軍にあまり読まれてないかもしれません。

介護の初動というのは、知識が全くないし、地域包括支援センターやケアマネの言いなりになることが多いです。その方たちが本当に頼りになればいいのですが、「思い込み」による誘導が行われることもあります。そんなとき、この本を介護初心者が読むと「ん、待てよ?」「そういう手があったか!」と選択肢が増えると思います。

あまり介護の本に書いてないような問いもいくつかあります、例えばこんな感じです。

  • 幼少期虐待されたトラウマ親が頼ってきたら?
  • 施設入居後に退去となる場合があることを想定しているか?
  • 真逆の価値観であっても、親の話にひたすら耳を傾ける?

たぶん、こういう視点で書かれている介護本は少ないです。介護=犠牲と考えるのではなく、自分の人生を大事にしたいと考えている人が読むべき本だと思います。

しかし、次々と新刊を上梓(=出版)できる太田さんはすごいです。わたしも今やっている連載が終わったら、オファーがなくともとりあえず何かを書き始めてみようかと思っています。

「本をいつか出してみたいなぁ」と思っている方、まず書いてみることをオススメします。わたしもそうでしたが、とりあえずよく分からなくとも書いてみると、道が開けることがあります。

親の介護で自滅しない選択

親の介護で自滅しない選択

太田 差惠子
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今日もしれっと、しれっと。


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【わたしの書いた最新刊】
東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて13年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか