遠距離介護はラク?介護とは言わない?わたしからの5つの反論

在宅介護 遠距離介護

西ちゃんさんのブログ「断捨離で最高の終活」に、わたしの本の書評が載っていました。「認知症介護をするようになったら読みたい4つの本」に入れて頂き、大変ありがたいです!その書評の出だしに、このようなことが書いてありました。

「介護をする人」は、「遠距離介護をしている人」と「すぐそこに(近距離っていうか至近距離?)で介護しなければいけない家族がいる人」に分けられます。毎日介護に追われていると気持ちが荒むせいか?(遠くに住んでいるなら介護も楽なんじゃないか)とうがった見方をしておりました。でも本を読みながら・・はっとしました。なぜなら私にも遠距離介護の経験があったからです。
引用元:http://note24book.com/ninchisho/kudohiro/

遠距離介護は在宅介護よりラクだと思っている方は、結構いるかも!と、正直思いました。遠距離介護歴5年目になるわたし自身も、在宅介護のほうが大変だろうと思ってます。ただ、遠距離介護ならではの「特別な5つの思い」というのがあって、今日はこちらをご紹介したいと思います。

離れた瞬間から襲ってくる心配・不安

在宅介護していると、少しでも家から離れたい、自分ひとりの時間が欲しいという気持ちになるかと思います。しかし、ひとり暮らしの認知症の母を岩手に置いて東京へ帰るときの気持ちは、それはもう切ないです。

東京での生活はコーヒーで、自分の心の中にある母への心配・不安は粉砂糖のようなもの。

岩手の家を出た瞬間からコーヒーに粉砂糖を入れて、スプーンでクルクルと回して溶かし始めます。東北新幹線が東京に近づくにつれ、粉砂糖はほとんど溶けてしまいます。しかし、どうしても溶けきれない粒があって、必ずカップの底に残ります。

東京に戻ってからも、スプーンでかき回すと粉砂糖はカップの底から上がってくる・・・常に心配・不安は心のどこかしらにあります。それとうまく折り合いをつけてるだけです。

くどひろ
ひとり残して大丈夫かな、ちゃんとご飯食べてるかな、デイに行ってるかな、転んで骨とか折ってないかな、お薬は飲めてるかな

完全に忘れられる瞬間もありますが、やはりどこかで気にしている・・・そうやって4年以上やってきたわけです。

近くに居れば、すぐ様子を確認できます。しかし、離れていてはそれもできません。スマカメという監視カメラで様子を見ることで、安心します。先日、ネットの調子が悪くて2週間ほど見ることができなかったときは、地獄でした。いかにスマカメに助けられているか、痛感したのでした。

恐怖の電話

わたしはフリーランスなので、母からの電話にいつでも対応ができます。でも会社員時代は、いつ電話が鳴るかとビクビクしていました。会議中にブルブル鳴って、着信履歴が10件以上ということもありました。「なにごと!」とまず思いますし、電話が鳴るとドキッとしていた時期もありました。

どんなに離れていても、電話ではつながっている・・・いいことではあるけど、どこか気が休まらないのも事実です。夜中に電話してくるご家庭もあるかと思います。会社員生活だったら困るであろう時間帯には、平気でかけてきます。

できるだけその場ですぐ対応しないと、不安なのか何度も電話してきます。近くに居れば、すぐ対応してあげられるのにと何度も思いました。

日常では感じない、体の大きさの変化

年老いた親をたまに会うと、あり得ないくらい小さくなった感じがしたということありませんか?毎日顔を合わせていればそんな感覚にはならないのですが、久しぶりにあったりすると、イメージより身長が10cmくらい縮んでたりして。老いを異様に感じるのは、離れてしまうからだと思います。

わたしは、かなり高頻度で帰省しているし、1週間は一緒に居るのでそこまでの変化は感じません。しかし、施設に預けていたり、あまり帰省できない人は、久々に会う姿に強烈な老いを感じているはずです。

あぁ・・・交通費がまたかかる

今は計画的に帰省できているのでいいのですが、会社員時代は急な帰省も多かったです。その都度、片道1.4万円・・・在宅だったら、こんな出費はかからないのになんて思ったこともあります。わたしも成年後見人で裁判所に通ったり、祖母が骨折したときなどは、月10万円かかりました。一緒に住めば、この交通費いらないなと思ったこともあります。

いずれやってくるであろう在宅介護への覚悟

わたしはできる限り遠距離介護を続けたいと思っているのですが、いつかは在宅介護になる可能性が高いです。明日かもしれない、1年後、いや10年後、全く予測がつきません。おそらく遠距離介護をしている人の頭の中には、絶えずこの思いがあるのではないかと思います。

比較する意味がない!

在宅介護と遠距離介護を比較することは、ブログネタとしては面白いと思ったので記事にしましたが、それ自体はあまり意味がないことだと思ってます。

人の介護のいいところはマネしたいと思いますが、環境をうらやんでも自分の介護は何にも変わりませんしね。経済状況、家庭環境、症状の重さ、バラバラです。与えられた環境の中で、ベストを尽くすしかないです。

ちなみにコーヒーはブラック派。たまにドトールのハニーカフェオレMサイズを飲みます。砂糖入れる習慣はほぼゼロでした・・・

こちらが元記事です、認知症介護オススメの4冊の本のうち3つは同じでした。まだ紹介してない1冊は、次回ブログに書きます。

今日もしれっと、しれっと。


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【わたしの書いた最新刊】
東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

4件のコメント

くどひろさま!こんにちは!!憧れのくどひろさまのブログでご紹介いただけるなんて夢のようです。ありがとうございます。

精神障害のおじさんを名古屋と岐阜の遠距離で介護?をしていたときは遠くて交通費もかかるし薬も飲んだり飲まなかったりで大変だったことを思い出しました。病院や手続きも県外というだけで手順が違っていたり関係性を説明するのに「甥っ子の妻」というだけであやしがられてスムーズにすすまず・・笑。5~6年前に在宅介護を選択しました。今は、薬の管理もできるし病院も自分の家からつれていけるし様子も見れるし「遠距離」のころとくらべると良いことも多いのに他の家族の
介護やら雑用が加わり文句たらたらでした。(;´Д`)

くどひろさんがおっしゃるように介護は皆それぞれ状況が違うし環境も異なります。介護する相手にもよるし・・遠距離でも在宅でも「親」や「身内」の介護をせざるを得ない状況の人は増えてくるばかりなんでしょうね。介護ときくと将来への「不安」や「心配」しかなくてどんより暗い気持ちでしたがブログ記事を読ませていただきながら在宅ならではの「良さ」にも気付かされました。

今後もくどひろさまのブログ記事更新を楽しみにしております。

西ちゃんさま

いえいえ、こちらこそブログネタとして使わせて頂きましてありがとうございます。

わたしの言葉でいうと誰とも比較せず、それこそ「しれっと」介護を続けていければと思っています。もうひとネタ思いついたので、そちらもアップしたいと思います。佐藤眞一先生の本を、年初からゆっくり読んでやっと読み終わったのですが、かなりいいですね。明日のブログで猛プッシュします。

再び、こんにちは!!ご紹介していただいたおかげでアクセス数が急上昇していました!佐藤眞一先生の本の紹介記事もさっそく読ませていただきました!!くどひろさんさすが!わかりやすい!書き方で勉強になります。

西ちゃんさま

アクセスに少し貢献できて、よかったです!

文章に関してはまだまだ勉強中です。書いても書いても、いろんな手法があるんですよね・・・

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて13年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか