認知症を治そうと間違った病院を選択し、多くの薬を投与してますます悪化させるという話は、認知症介護している人の中ではだいぶ浸透してきた話です。
しかし、遠くにいる親御さん、おじいちゃん・おばあちゃんを、「生活不活発病」 と判断できるお医者さんやご家族はどれだけいるのでしょうか?
大川弥生先生が提唱するこの病気、特に遠距離介護している人にはぜひ知ってほしい!ということで取り上げます。(ゴールデンウィークで帰省するので、特に)
生活不活発病とは?
生活不活発病は文字通り、生活が不活発になることで動けなくなり、寝たきりまでになる病気のことですが、下記のような悪循環を引き起こします。
動かない → 生活不活発病になる → 動きにくい(歩けない、生活動作が厳しい) → さらに動かない
亡くなった祖母、認知症の母がこの状態に陥りました。特に母は独居で冬を迎えた結果、一気に生活不活発病を発症しました。こたつから動かなくなり、昼寝の時間がどんどん増え、トイレにたどり着けず失禁するまでなりました。
この生活不活発病は、大きく2つのタイプに分かれます。
「脳卒中モデル」 と 「生活不活発病モデル」
「脳卒中モデル」とは、脳卒中や骨折などの病気や外傷で急激に運動機能が低下すること、一方の「生活不活発病モデル」は、文字通り生活動作が徐々に低下していくことを言います。
祖母は病院内での大腿骨骨折がきっかけなので脳卒中モデル、母は気候の変化がきっかけだったので生活不活発病モデル(手足が不自由なので、脳卒中も含む)に該当します。
遠距離介護の「生活不活発病」
大川先生の著書、「動かない」と人は病むでは、75歳で独居の女性が登場します。
息子が心配して、東京近郊へ呼び寄せます。息子の嫁が専業主婦で姑のお世話を一生懸命した結果、この女性は 「生活不活発病」 になったのです。この女性は東京に引っ越したことで、このように思ったそうです。
東京は人が多く、みんな早足です。駅などでは周りの人にどんどん追い越されるし、ぶつかりそうになることもたくさんあります。まるで邪魔者になっているようで、肩身が狭く感じました。
さらにこのお嫁さんは、お姑さんへの気遣いで家事を自分ですべてやっていました。その 「余計な」 気遣いが、さらに「生活不活発病」に拍車をかけます。
周囲の目が気になったのと、お姑さんにやってもらうことへの遠慮があったのです。また自分の領域に侵入されてしまうような気持ちがあったことも否めません。
これ遠距離介護の典型的な「呼び寄せ」問題と、嫁姑問題の代表例ですよね?どうやって解決したかというと、お嫁さんが外出機会を増やして、お姑さんが家事をやり出したら元気になったんです。
お姑さんに家事をさせて、嫁が出歩くなんて不届き!悪い嫁!一般的にはそういう構図になりますが、まったく逆です。本当に悪い嫁はどちらでしょうか?
本人と専門家が一緒に工夫することが大事
先日、このようなエントリを書きました。紙に書いて病院や施設の方に、家での様子や希望を渡して伝えるコミニケーション術の話なんですが、この本にも同じ事が書いてありました。
紙に書いて渡すことですが、書いて渡すなんて、理屈っぽいと思われないかなどと危惧する必要はありません。デイケアや医療機関など専門家にうまく伝えたいと思ったら紙に書くことをおすすめします。書いてあると、多くの人が見ることができるので、正確に本人と家族の状態や意向が伝わります。
わたし自身、うぜぇ奴かも?と思いながら2年間、医療・介護従事者に紙で渡し続けたのでこれでよかったんだと。特に遠距離介護の方は滞在時間が少ないので、より正確に伝えるにはやっぱり紙で渡すのがいいんですよ。
もっとも大切なこと
一番言いたいのは、
「元気がない親御さん、実は生活不活発病じゃないんですか?」
ということです。遠距離介護の場合、たまにしか状態を確認できません。久々にあった親御さんが憔悴していたら、すぐ病院へ連れて行って何とかしようという気になります。
しかし、定年退職後に趣味がなく家でぼーっとしているお父さん、ひとり暮らしで何もすることがないお母さんに何か役割を与えることが、病院に連れて行くよりも先にやることかもしれないです。
元気がないから病院へ行き、薬を飲ませて安静にして、生活不活発病に拍車をかける。遠距離介護だから、またしばらく会えず、再び会うとさらに悪化している。これやってるご家族、きっと多いはずです。
うちは認知症で手足が不自由、そして独居という不活発病に最もなりやすい環境なので、ヘルパーさんやデイサービスを活用して役割を与えて、とにかく動かす努力をしています。
廃用症候群は知っていたのですが、同じ意味の「生活不活発病」・・・知りませんでした。特に遠距離介護中のみなさま、必読の本ですっ!
今日もしれっと、しれっと。
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