認知症の人の「痛み」を知る方法

認知症 痛み

遠距離介護で困ることが、ケガです。

独居で認知症の母は、ケガの理由(いつ、どうやってケガしたか)を覚えていません。しれっとした顔で生活しているわけですが、ふとした瞬間に思い出したかのように違和感を訴えます。

わたしの場合は1週間近く滞在するので、どこかで気づくことができます。しかし、ヘルパーさんや妹は、数十分~数時間の滞在。ケガを見逃すことがあります。今回はGW中、妹が家に居たときに、母の自己申告で発覚しました。

前回のケガは包丁でザックリ指を切る

前回、包丁で(推測ですが)指を深く切ったときはあせりました。いつ切ったか、なぜ切ったか分かりません。本人に聞いても、理由が二転三転します。包丁も、切り口を見たわたしの推測です。

いつの出来事かは、家に来たヘルパーさん、作業療法士さん、看護師さんに、訪問時の様子をヒアリングします。ところが手足チェックなんていう項目はないわけで、母が痛いと言わないとまず気づきません。

うちは訪問リハビリが週1回あり、体を触れる機会があるので、ケガを見つけやすいです。こうやって、ひとつひとつ質問しながら、ケガした時期を特定し病院へ連れていきます。これをやっておかないと、医師のこの質問に答えられません。

医師
いつ頃、おケガされましたか?

母に答えさせると、「それっぽい」ことを言います。3%くらい当たっている可能性もあるのですが、回答はコロコロ変わるし、取り繕いをしてしまいます。

医師は認知症ということを知らない状態で答えを聞きますから、もちろん信じます。それをその場で訂正するのも面倒だし、認知症だということを、本人の目の前で伝えるのもイヤ・・・いつもと違う病院に行くときは、こういう気苦労があります。

しばらく通う必要がある病院(歯医者とか)は、認知症であることを伝えます。しかし、単発のときは、何も言わないことが多いです。

GW中のケガ

5月5日、妹からLINEで母の足のむくんだ写真が送られてきました。今回は、母の自己申告で発覚しました。

画像ではよく分からないのですが、まず頭をよぎるのは「骨折」。足が不自由なので、しょっちゅう転びます。次に、認知症のお薬としてシロスタゾールを試しているので、むくみとか発生するのかな? この2つでした。

GWじゃなかったら、前日の訪問リハビリで発覚するはずでしたが、お休み・・・ヘルパーさんもGWで手配できないということで、今週は休み。妹に見に行くように、お願いしていて正解でした。

こういうときに限って、都内で外出中だったわたしは、ベンチに座ってスマホで対応です。

  1. LINEで母の足の画像を見る
  2. 反射的に、かかりつけ医のFacebookメッセージに画像を転送する
  3. 画像で仮診断してもらい
  4. 妹に当番医を調べてもらって、母を整形外科に連れて行く

たぶん、2.の行動をとる人いませんよね・・・普通。ケガなのか、それ以外なのか分からなかったので、思わずやってしまいました・・・先生すみません。

脳梗塞のお薬でもあるシロスタゾール、薬剤師に「歯を磨いていると、血が出ることがある」と言われたこと、他の病院で認知症でシロスタゾールを使っていると説明しても、何のことやら?と言われると思い、反射的に行動してしまいました。

むくみの画像を送ると、先生より足の裏も見てという指示を受け、妹にLINEして、また画像を先生送ります。表より裏が紫色になっていました、さすがです。画像診断の結果は「打撲」。シロスタゾールは関係ないとのことでした。

妹に当番医を調べてもらい、整形外科へ。GWということで、病院も混んでいます。診断結果は推測どおりの「打撲」。最悪、骨折も考え、緊急帰省も考えてました。

診断結果を先生にお伝えして、事なきを得ました。遠距離介護のケガ、見守りカメラでも分からないことはありますね。
先生とのやり取りの中で、ありがたいお言葉を頂きましたので、皆さまにもシェア致します。

痛みの訴えは必ずしも言葉とは限りません。目や表情も含めて、五感をフルに活用して、認知症の方の声なき声を受け止める努力をしなければいけません。

認知症の方の痛みをどう知るか、ご家族の皆さんも胸に刻んでおいてくださいね。祖母はこれをやらないとダメでした、母はまだ自分で訴えることができますが、ケガを忘れるので時間が経過していることが多いです。

くどひろ
こんなやりとり、普通できないよね?恵まれてるよー

外出先で奥さまにこんな話をしながら、家へと帰ったのでした。

今日もしれっと、しれっと。


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東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

2件のコメント

前頭側頭型やレビーだと、セロトニン過剰状態のケースがいます。セロトニン過剰により、末梢のニューロンで体性感覚(痛みや痒み、温かい・冷たいなど)がブロックされ感じなくなっています。骨折しても痛みを訴え無いことが、珍しく有りません。動かすと、動きが不自然になったり、一時的に非常に強い痛み刺激が起こり、表情が歪むことはありますが・・・・・。
逆に中枢のニューロンが過剰に興奮し、痛み刺激が作られることもよくあります。痛む場所には全く異常なく心気症と呼ばれている状態です。痒みのことも多いですよ。
このセロトニン過剰による異常な体性感覚には、ニューレプチルなどのセロトニンを抑制する薬剤が有効です。麻薬系の痛み止めは、無効なことが多いですよ。
この事実を、理解している医師は、ほとんど居ないと思いますよ。

小関先生

またひとつ勉強になりました、ありがとうございます。

痛みに鈍いと言われると、それもまた正解なような気がします。包丁で指を切ったっぽいときも、もっと訴えてもいいのになぁと思いました。シロスタゾールを疑ってしまったわけですが、そもそもピックであることを忘れてはいけないということを学びました。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて13年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか