介護している人は「いい人」という期待には応えない

介護 いい人

東京ローカルでやっている「5時に夢中」という番組があります。かなりゲスい番組ですが、よく見ています。ゲストで乙武洋匡さんが出演されたとき、こんなことを言ってました。

乙武さん
障害者というだけで、物凄いいい人だとか真面目な人だと思われるんですよね

「周囲から過剰に期待をかけられたことがあるか」という問いに対しての乙武さんの答えだったのですが、これを聞いたとき、「介護者」もそういう面があるよなぁ・・・と思ったのです。

介護者がまず最初に言われること

初対面の人(特にメディアの取材)によく言われるのが、

女性記者
東京と盛岡を往復されているなんて、偉いですよね。親孝行されてますね。
男性記者
介護離職されて、ご苦労されていますよね。
くどひろ
あ・・・え・・・ま、まぁ・・・

ひょっとしたら本気、いや社交辞令・・・どちらでもいいのですがあまりに言われるので「苦笑い対応」がデフォルトでした。しかしだんだん慣れてきて、こう返事するようになりました。

くどひろ
いや、大したことないですよ。往復できるうちが華ですから。もっと大変な介護している人、いっぱいいますよ。
記者
いやいや、そうはいっても大変だと思いますよ

で、わたしが「いやいや、そんなことはないですよ」と言い返そうものなら、いつまでも「いやいや」言い続けて疲れ果てることになるので、「そーですかねー」と言って折れるようにしています。豊洲問題や東芝の決算ぐらい、決着がつきません・・・

頑張っているいい人だと思われるのは大変ありがたいのですが、当の本人は全くそんなこと思っていません。

介護業界のボランティアイメージについて

認知症介護=大変なことと思われ、それをこなしている人は間違いなく偉い人となります。介護者というだけで、物凄いいい人だとか真面目な人だと思われます・・・他の介護者は当てはまると思いますが、わたしは全く違います。

ある大手メディアの取材を受けることになって、ギャラについて質問しました。すると額が提示されたので受けたのですが、完全スルーされたことがありました。それ以来、お問い合わせの欄に「ギャラ提示」と書いたら、だいぶ取材が減りました(笑)

会社員以上に、フリーランスはギャラにうるさいのです。毎月決まった給料が振り込まれるわけではないので、全く安心する月がありません。それが楽しいとわたしは思っていますが、それゆえひとつひとつのお仕事に対して真剣ですし、その報酬も大切です。

いい人イメージから、ボランティア精神にあふれていると思われるのですがそれも違います。経済的にも介護的にも余裕ある生活ならば貢献したいのですが、まだそのステージまで到達できていません。本の印税も出版したときと、重版したときに臨時ボーナスが入るだけで、ふだんは1円も入ってきません。介護者→いい人→ボランティア→ノーギャラという流れ・・・

介護・福祉業界の「民間の」新ビジネスについて相談を受けることもあるのですが、わたしは決まって「がっつり儲けてください!」と言うようにしています。この業界にもボランティアイメージがつきまとっていて、儲けることが悪のように思われているのがイヤです。ビジネスが拡大すれば雇用も生むし、わたしもそういう便利なサービスを使ってみたいし、働く人の給料も増えて欲しいです。

わたしは「いい人」ではないので、その期待に応え過ぎて疲れないように生きていきたいと思ってます。いい人っぽい振舞いをして疲れたら、人生もったいないなと。

フリーランスになってからは会いたい人にだけ会うようになったし、薄い懇親会は極力避けるようにしています。「いい人」をキープするための集まりには参加はせず、仕事に結びつくかと面白い・興味がある・会いたいと感じるかというシンプルな参加基準です。昔は、ムリしている部分はあったと思います。

佐々木俊尚さんの朝8時ツイートを読んで数年になりますが、下記記事もいいな。日本人がイメージする「老後」の崩壊、本当にそう思います。この記事のとおり「緩いつながり」が、自分を支えているのは間違いないです。毎年、仕事相手や人脈が変わる・・・緩いつながりが楽しいです。

乙武さんの話をテレビで見て、イメージについて書きたくなりました。ブログは自分をそのまま出せるメディアなので、全く疲れません。

今日もしれっと、しれっと。


にほんブログ村 介護ブログへ


【わたしの書いた最新刊】
東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて13年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか