認知症の人がホールで働く「注文をまちがえる料理店」が話題、我が家は「注文も味もまちがえる料理店」

ホワイトボード

2017年6月3日・4日に、プレオープンイベントとして開催された「注文をまちがえる料理店」。

認知症の人がホールスタッフのこのお店は、ときどき注文を間違えることもあるけど、それをも受け入れて楽しもうという素敵なコンセプトです。ふだん認知症に関心のない人たちも、こぞって記事をアップしていることに驚きました。

イベントには参加できなかったのですが、認知症の母を介護する立場でこの話題に触れてみたいと思います。

注文をまちがえる料理店とは?

料理はプロの料理人が作るけど、ホールスタッフが認知症の方で、それをサポートする担当もいるというシステムだそうです。注文票は客が書くシステムで、ミスをできるだけ減らす仕組みになっています。今後の予定については、次のように書いてありました。

実行委員会によると、今後クラウドファンディングなどで資金を集め、9月をめどに1週間程度の期間で本オープンしたいということです。
引用元:https://news.yahoo.co.jp/byline/mamoruichikawa/20170604-00071670/

これはクラウドファンディングで、応援したくなりますよね!推測ですが、たぶんReady forで賛同者を募るのではないかと思います。見つけたら、発信しますね。

我が家は注文も「味も」まちがう料理店

我が家のシェフは認知症の母で、注文する人は息子のわたしです。

口頭でメニューを伝えても忘れてしまうので、冷蔵庫に貼ってあるホワイトボードに、メニューを必ず書くのが日課です。母はホワイトボードを何度も見ながら料理を作るのですが、先日こんなことがありました。

ホワイトボードに書いた昼ごはんのメニューは「月見きつねうどん」でした↓

きつねのおあげは売っているものを入れるだけ、うどんに卵を落として完成なのですが、何度か卵を入れ忘れることがありました。それまでホワイトボードになんて書いたかというと「きつね月見うどん」。こう書くと「月見」の文字を読み飛ばしてしまい、ただの「きつねうどん」を作ってしまうのです。

嘘でしょ?と思われるかもしれませんが、月見を先に書いてからというもの、卵を忘れることがなくなりました。ほかにも、

  • ラーメン
  • みそおにぎり

ホワイトボードにこう書いたら、みそおにぎりを作り忘れました。だからホワイトボードの書き順を変えて、

  • みそおにぎり
  • ラーメン

にしたら、今度はきちんと作ってくれるようになりました。4年半の試行錯誤でこうなったのですが、認知症の人への注意の向け方の難しさを痛感するエピソードです。

ちなみにみそおにぎりは焼きおにぎりで、我が家のご飯を消化するために「やむを得ず」作ってもらう定番料理です。独居なのに、頑なに3合炊きしかしない母(1合炊きはおいしくないという思い込み)なので、どうしてもご飯が余ります。2日目、3日目はカピカピなので、それをごまかすために味噌を塗って焼くとギリギリ食べられるという・・・これも工藤家の知恵です。

そして当たり前のように、塩が入ってない、じゃがいもを噛むとカリッという、ニンジンの皮をむいてない・・・うちは「注文も味もまちがう料理店」なのです。

思い出してしまったドリフターズの往年のギャグ

「注文をまちがえる料理店」のコンセプトを知って、思い出したのがドリフターズでした。

高齢者に扮する志村けんが、耳が遠いからとことごとく注文を聞き間違えるあのギャグです。久々にこの動画を見て、笑ってしまいました。認知症のコントではありませんが、なぜかシンクロしてしまいました。

認知症の人が働くということ

ドリフのギャグのように、認知症の人が巻き起こす出来事を笑い飛ばせる世の中ならいいのに・・・子どもの頃にただ笑っていたドリフのギャグを、そんなふうに見てしまいました。現役の認知症介護者ゆえです。

お客さんも認知症の人だからと、注文を間違えることに寛容だったことが何よりも素晴らしいし、記憶のハンデを逆手にとったネーミングも最高です。わたしも母の毎日のミスには、寛容に対応しています。でも、「味」にまで寛容になるのは、きっと一般の人には難しいでしょうね。それは介護者だけの特権?ということで(笑)

お店の場所をあえて記事に書かないのは、人が殺到すると認知症の方は特に疲れやすい(逆に疲れ知らずで、あとで反動がくることも)ため、その配慮があるのだろうと推測しました。ネット上ですごく盛り上がって、認知症に対する関心と皆さんの寛容さが広がればうれしい・・・だけど、盛り上がり過ぎて、スタッフの皆さんが疲れてしまうのもよくないです。

運営者側がきっと今回の反響を見て、しっかり配慮してくれるのだと思います。こうやって少しずつ、認知症の方が働ける環境が広がっていくといいなぁと思います。

ちゃんと読めるやつ #注文を間違える料理店

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間違えたものが出てくると喜び、普通に出てくるとガッカリするという妙なお客様が増えそうですね。

わたしの2冊目の自著「医者は知らない!認知症介護で倒れないための55の心得(廣済堂出版)」の裏テーマは、認知症の人が働くということでした。認知症の母がホールスタッフではなく、シェフとして頑張った話などが載っています。ご興味があれば、読んでみてくださいね。

今日もしれっと、しれっと。


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【わたしの書いた最新刊】
東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

2件のコメント

まだまだ認知症ではない母ですが、(MCIと診断されてます)一緒にいると疲れてしまいます。
昨日も二人で映画を観に行きました。
映画は理解して喜んでくれましたが、行くまでのモロモロ、母と二人だけの辻褄の合わない会話。
まだまだ慣れません。
先日もセールスの口車に乗せられ変更しなくてもイイ電話を変更してしまい、今度またNTTに戻す工事です。
大変な介護をしてる方から見れば小さな事で右往左往してしまってる私です。
取り敢えずは一人暮らしができる母なのに私一人で疲弊してます(^^;)

しれっと〜心の中でつぶやいているんですけどね(笑)

kazuminnさま

わたしも一緒にいるだけで疲れているようです。一緒にいる時はなんてことはないのですが、帰京して日常に戻った瞬間にそれに気づくようです。会話が普通にできることで、自分はやっぱり疲れていたんだなぁと、そこで気づきます。大変な介護している方との比較というよりかは、やはり自分自身との比較になるのかなといつも思っています。小さなことでも右往左往する時期もあれば、気づけばどうってことないと思える時期も来るみたいな感じでしょうか?

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて12年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか