2年ぶりに本の執筆から解放されたので、本を書くための読書ではなく、自分が読みたい本を読んでいます。
遠距離介護が終わり、東北新幹線で東京へ向かうときに何か読もうと思って、いつもお世話になっている盛岡駅内にあるさわや書店フェザン店さんで偶然見つけた本が、ジェーン・スーさんの『介護未満の父に起きたこと』でした。
スーさんのラジオを聴いたことはありますが、どういうキャラクターの人なのかは分かりません。介護未満の本って、どんな内容なんだろう? そう思って、新幹線で読み始めました。
ビジネスライクな介護アプローチ
スーさんのキャラクターを知っているリスナーさんなら驚かないと思うのですが、わたしは女性目線の介護(未満)エッセイだと思って購入したから、いい意味で裏切られました。そして、13年前に介護が始まった自分も、同じアプローチだったなと。本から一部引用します。
こういうときは感情を使わず、まるで仕事のように処理するのが吉。親子関係の対極にあるのはビジネスだ。ならば、ビジネスの問題解決法に倣おうではないか。
スーさんは介護本コーナーを通り過ぎ、ビジネス書を読み漁ったのだとか。
自分は介護の本を読んで情報収集したけど、何度も読み返すまでに至らなかったのは、声掛けなどいわゆる介護のプロがやるアプローチでは、家族介護者は根本的な解決にたどりつかないと思っていたからです。
第三者と家族とでは過ごしてきた時間が違うし、えもいわれぬ家族同士の感情が邪魔をして、長期的に本に書いてあることを実践できません。会社員生活が長かったから、自分も介護以外の本からヒントを抽出してやろうって、常に思っていました。
声掛けとかアプローチを工夫するよりも、介護の態勢や仕組みを整えたほうが介護者としての心の安寧が保てると思っていて、ケアマネさんとケアプランを真剣に考えたり、IoT機器を使いまくったりする方向に舵を切りました。
自分はスーさんのように父を手なずけられたのか?
本を読みながら、亡くなった父との介護をひたすら思い出していました。
スーさんのお父さまの汚部屋整理の話、家事代行サービスの若いスタッフさんに対する昭和の価値観の押し付け。わたしの父も汚部屋に住み、女性ヘルパーさんに「おんな、子どもは!」的な感じで接し、無礼な父の行動を平謝りする自分の姿と重なりました。
父の介護は3か月で終わったからよかったものの、スーさんのように割り切って、父と対峙できただろうか、いやできなかっただろうと思いました。今介護している認知症の母のほうが、父に比べればラクです。
お父さまを大物アーティスト、ミック・ジャガーにたとえ、大物を丁寧に扱うよう裏方として接する。自分なら家族としての感情が勝って、父を手なずけられないと思います。それをやってのけるスーさんのある意味、冷静な戦略。
介護保険サービスにみんながみんなアクセスできるわけではないので、自費のホームヘルパーを頼って態勢を整えるところは、意外と発信している人は少ないと思います。お父さまに必要なのは生活援助、だけど話し相手も必要。介護保険では、話し相手にはなってもらえません。
とはいえ週3日、1回3時間、月15万円はやはり高い。でも自費のほうが変に介護保険に縛られずにいろんなことを頼めるので、多忙なスーさんには合っているのでしょう。
こうした方法も知っていて欲しいです。うちは要介護4、介護保険サービス使いまくり、遠距離介護の交通費も含めて、15万まではいってません。ただ自費サービスを使う機会は増えました。
たくさんの介護未満の人々を掘り起こしてくれた!
実は2025年1月に書いた本『老いた親の様子に「アレ?」と思ったら』(PHP研究所)も、最も多いと思われる介護未満の層の掘り起こしを狙いましたが、あまりうまくいきませんでした。
スーさんの本は、すでに10万部を突破。多くの人が、自分の親の介護について意識してくれるきっかけになっていると思います。介護ジャンルで10万部を超えた本って、おそらく認知症世界の歩き方以来じゃないかなと。
スマート介護の紹介が、最後のほうに出てきます。わたしも13年以上やっている、IoT機器を使った見守りなどです。スーさんの本を通じて、多くの人がその便利さに気づいて欲しいですね。
今日もしれっと、しれっと。
2025.12.13(土) 出版記念イベント開催!
11/17(月)『工藤さんが教える 遠距離介護73のヒント』(翔泳社)の発売を記念して、12/13(土)朝10時から、東京・品川にあるフラヌール書店(不動前駅)とオンラインのハイブリットで出版記念イベントを行います。ブログや音声配信では絶対に話せないリアルな介護の話を、たくさんします。オンライン参加は顔出し不要、匿名参加OKです。気軽にご参加ください!介護の本屋「はるから書店」





























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