樹木希林さんが亡くなったニュースを見て「がん」より気になったこと

樹木希林さんが亡くなったニュースを母と見ながら、こんなやりとりになりました。

この人はなんで亡くなったの?
くどひろ
全身がんだったみたい、いろんなところがね・・・
かあさんも子宮頸がんで亡くなったから、わたしも遺伝するのかしらね
くどひろ
2人に1人はがんで死ぬと言われているから、こうなると遺伝とかそういうレベルじゃないよね

希林さんのニュースだけでなく、がんで亡くなった人の訃報を見るたびに、必ず母とはこのやりとりになります。

わたしも母もがん検診は受けていますが、すべてのがんをチェックできているわけでもないし、年齢に関係なくがんになる可能性はあります。山本KID徳郁さんなんて、まだ41歳・・・若すぎます。屈強な身体をもってしても、格闘家でもがんには勝てないのかと、切ない気持ちになります。

昨年父が亡くなった姿を見たり、こういった訃報を知るたびに「自分が生きていられるのは、たまたま運がいいだけ」と思うようになりました。朝起きれば「今日も目覚めることが出来た、うれしい!」と思うし、スマカメで東京から盛岡の母を見ても「今日も生きてる!」そう思います。なので、時間の大切さ、健康の大切さを人生MAXで噛みしめて生活していると思います。

そのため、母が巻き起こすドタバタにも余裕ができたというか、何か嫌なことがあっても「いろいろあっても、生きているからまぁいいか」という、認知症介護家族がたどる4つのステップの最終ステップ「人間的、人格的理解」に到達したのかもしれません。

今までも到達した気でいたのですが、ひょっとしたら第3ステップ「割り切り、あきらめ」と勘違いしていたのかもしれません。と言いつつ、あっさり第2ステップの「混乱・怒り・拒絶」に足を突っ込むことも正直あるのですが・・・あれ?

希林さんのニュースで最も気になったことは大腿骨骨折

希林さんのニュースに関しては、

  1. 年齢が母と同じ75歳
  2. 長年の別居婚

という母と2つの共通点があって(母の別居婚はただ離婚しなかっただけで、実質は離婚状態ですが)、ニュースを追っかけてしまいました。このニュースの中で、最も気になったことは「がん」ではなく、亡くなる1か月前の「大腿骨骨折」でした。

亡くなる4か月前にテレビ出演されていたので、大腿骨骨折のニュースを聞いたときはドキッとしました。というのも、90歳で亡くなった祖母もがんで亡くなる数か月前に、病院のベッドから転落して大腿骨を折ったからです。

高齢者は骨自体が弱っているうえに、筋力も低下しています。だから、ちょっとした転倒でも大腿骨骨折をしてしまいます。その骨折をきっかけに、寝たきりになってしまう方もいます。手術が必要で入院することになるので、認知症が進行してしまったり、一気に死が近づいてきてしまったりすることもあります。今でも祖母の死因はがんではなく、大腿骨骨折のほうが影響が大きかったと思っています。

わたしたちが思っている以上に、普通の自立した生活というのは、最強のリハビリなんだろうなと思います。ふつうに起きて、ご飯を食べて、歩いて、寝て、排泄する、誰もが普通にやっていることができなくなるだけで、特に高齢者の方はガタっと弱ってしまいます。ましてや、全身がんの希林さんはきっと、忙しく仕事をしていたことも、生きがいやリハビリになっていたのだろうと推測します。

96歳の内海桂子師匠も、95歳のときに大腿骨骨折をしたのですが、3か月後には舞台に復帰されています。凄いとしか表現しようがないのですが、再び舞台へという強い思いが意味のあるリハビリにつながったのだと思います。

うちの母は、週1回訪問リハビリをやっていて、筋力強化をたぶん4年くらいはやっています。祖母が大腿骨骨折したあと、認知症でリハビリの意味が分からず、わたしもそこまでリハビリの重要性が分かっていなかったので、病院内を歩いていた祖母があっという間に寝たきりになりました。

あの経験は今でも忘れないし、後悔しているので、母にはリハビリをとにかく頑張ってもらっています。元々、手足の筋肉が萎縮する難病持ちなので、とにかく転びます。あれだけ転んで骨折していないのは奇跡かもしれません。それなのにひとり暮らしをしているという・・・。

母を24時間監視するわけにもいかないし、あんまりバリアフリーだらけにすると、今度は筋力も落ちてしまうかもしれません。タンスの引き出しも、棚も母はうまく手すりとして利用しているし、その環境を変えないことがリハビリになると信じています。

希林さんの大腿骨骨折が、死とどれだけ影響しているかは分かりませんが、大腿骨骨折のニュースを聞くたびに、亡くなった祖母のことを必ず思い出します。母も訪問リハビリを頑張ってもらって、とにかく長く家の中を動き回って欲しいと思ってます。

ってことで、春に延期になった富士山旅行のリベンジ、再びチケット取りました!ブログ読者の方から頂いた富士山情報を参考にして、行ってきます。あとは天気だけ・・・、前回は雨でしたが、今回は?

山を登るの?と勘違いされた方もいたのですが、ただ富士山を見て、岩手山との違いを感じてもらいます。

今日もしれっと、しれっと。


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2件のコメント

くどひろさん、こんばんは。

記事を読ませていただいて、あれこれ思う事があります。

私も黒柳さんは日々の筋トレが功を奏しての復活だと思いました。
ご本人さまがテレビで頻回話されてましたが、ジャイアント馬場さんから、いつまでも歩きたいなら、スクワットを続けてくださいと言われて、以来長らく続けてこられたと話されてました。

以前は術後のリハビリが主流でしたが、昨今は術前リハビリとして、しっかりと筋肉をつけておくと言う事が当たり前になっているようです。
私は骨の形成不全症があるので、将来人工関節手術が両足に必要になるかも知れず、6年ほど前に殆ど歩けなくなり、2年のリハビリを経由して、現在はほぼ人並みには歩けるようになりましたが、疲れやすく不安定な歩き方をしています。

一方でその経験から、リハビリの大切な事などもくどひろさん同様、自らの経験を通して多くの事を学びました。
筋力は、EMS機器等の自動で筋肉運動をするものもありはしますが、やはり基本は本人が動いて、必要な箇所に必要な筋肉をつける事が重要です。
怪我で寝込んでも、筋力があれば廃用症候群にもなりにくく、手術で切断した筋肉線維も、傷が繋がれば鍛えてあった筋肉が助けになり、リハビリも順調に進みますが、そもそも筋肉のない方が寝込むと、一週間で12%ほども落ちると言われて居る筋肉の回復はなかな厳しいのでしょう。

樹木希林さんの骨折を聞いた時は「これで最後か」と失礼ながら思いました。
一時期の危篤状態から脱して手術も成功された様子なのに、本当に残念ですね。

テレビで安曇アナウンサーと共演されてましたが、慎重に慎重に「転ぶといけないから腕貸していただける」と、安曇さんの腕に両手を回して階段を降りておられました。

お母さまの転倒ですが、認知症で82歳で亡くなった私の実母も、80センチ程落差のある歩道から水の無い水田に転がり落ちても、骨折しませんでした。
さらには、既に骨粗しょう症と言われて診断も受けており、治療の為の薬も飲んでましたが、転んでも転んでも骨折はしませんでした。
私も骨折は未経験で、遺伝的に骨の質も似るようですが、スカのスカの骨も柔軟性のある骨を持つ人がいるようで、骨密度が低くても柔軟性のある骨は折れないそうです。
逆に、骨密度が高くても、しなりの無いがちがちの骨は折れやすいそうです。
お母さまも、骨に柔軟性があるのかも知れません。

長文になり、すいません。

自分もてんてこ舞いさま

貴重な体験談、大変参考になりました。
リハビリの大切さを知る機会があるかないかで、人生大きく変わると思っていたので、頂いたコメントでさらにその思いを強くしました。

希林さんの骨折の話を聞いたときは、わたしも全く同じことを考えました。
なるほど、柔軟性のある骨というのがあるのですね。母はきっと、その骨なのかもしれません。

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工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(80歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて12年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか