成年被後見人に選挙権回復のニュースを成年後見人であるわたしがどう思ったかのはなし

”成年被後見人に選挙権回復” のニュースが、Yahooのトップページで取り上げられました。マスメディアもこのニュースは多く取り上げ、”成年後見人” という耳慣れない言葉を、このニュースで知ったという方も多いのではないでしょうか?

成年被後見人の選挙権、公選法改正で与野党合意(Yahooページ:読売新聞)↓
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成年後見人であるわたしがこのニュースを見て最初に思ったこと

2011年の9月26日の読売新聞の記事より抜粋 ↓
『計算は苦手だが、日頃から新聞を読み、障害者向けの政策への関心も高い。講演会にも足を運ぶといい、閉廷後の集会では「僕らはバカじゃない。障害者の声にもっと耳を傾けてほしい」と声高に叫んだ。』

京都市内の男性が訴えたこの内容は、「(再び)選挙に行けたら、障害者のために頑張ってくれる人を選びたい」 というものです。知的障害者やその家族らの全国組織「全日本手をつなぐ育成会」(東京)が09年、会員約2000人に行ったアンケート調査によると、選挙権がなくなることへの疑問を持つ人は8割に上ったという事も書いてあります。

ここまでの内容はわたしも大賛成で、そういった人には選挙権を認めるべき!って思います。ただです・・・私がこのニュースを見た時の第一印象は、まるで逆でして、『まじかっ!本気でかっ!』 これが本音です。

なぜ素直に賛同ができないか?

我が家の場合は成年被後見人は祖母(89歳)で、『認知症』 です。自分の娘が分からなくなったり、便いじりをはじめたり、長谷川式認知症スケールでは30点満点で5点しかとれません。要はまともなジャッジができる状態ではないので、わたしが成年後見人として、祖母の財産管理をしています。

今回のニュースは私が間違えてなければ、成年被後見人が重度の認知症でも、平等に選挙権を与えるというものです。第一印象で、『まじかっ!』って思ったのは、祖母が果たして選挙というものに興味があるのか?祖母自身の信念を、成年後見人であるわたしに言う事ができるか? ということです。

成年後見制度を利用する理由で最も多いケースは、認知症なはずです。今回訴えを起こした知的障害の方は割合としては小さいので、本当に選挙権回復して大丈夫?って思ったわけです。

認知症の祖母が候補者や政党を選べるの?

わたしが予想するに、祖母は選挙なんて興味もないし、きっとこういうでしょう。 『選挙?わたし分からないから、あなたに任せるわよ』 って。もしそうなると、わたしが選挙権を祖母の意思ではなく、 ”自分の意思” で行使するってことになるんですかね?判断能力に欠けるんだから、成年後見人が財産を管理するのと同じで、選挙権を管理する?うーん、分かりません・・・

全くの第三者である司法書士や社会福祉士が、成年後見人になっているケースもあります。家族ならまだしも第三者が選挙権を行使するんでしょうか?財産横領で逮捕される後見人は多いのですが、この1票を巡って選挙権の売買じゃないですけど、よからぬ事も起こり得ますよね?

ただ、こういう考え方もあるかなと。わたし自身も含めて、選挙権を正しい判断のもとで行使しているかと言えば微妙です。マスコミが伝える雰囲気であったり、ものすごく安易に投票しているようにも思えます。若い人は選挙権を行使してないし、行かなければいいのか??そもそも考え過ぎなのかなと。

わたしの場合は候補者の公約とかマニフェストを読みますし、支持政党もない・・・毎回投票先が変わるので、面倒です。祖母も支持政党なんてないし、そもそも選挙なんて行ってたかな??

さらにすげー深読みすると、この14万の票田が欲しいと思う政党があるんでしょうね・・・ 実際、判断能力のない人を選挙に連れ出して、投票させるなんて事もあるんでしょうからね・・・わたしのところにも売り込みにくる候補者がいるのかな(笑)

じゃぁ、どうすりゃいいの?

結局、成年被後見人の中にも、選挙について正しく判断できる人 と そうでない人 がいます。一律に選挙権を認めてしまうことは、本当にいいのでしょうか?訴えを起こした方みたいな成年被後見人には、ぜひ選挙権を回復してほしいです!でも、認知症患者には必要ないと思います。

正しい判断ができる成年被後見人の方にだけ、自己申請制で裁判所が認めるようにすればいいんじゃない?って、思います。参議院選挙も近いですし、近いうちに裁判所から通達がくるのかな??


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【わたしの書いた最新刊】
東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

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工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(80歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて12年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか