認知症の母にある強い責任感「人から何かをもらったら、必ずお返しをしないといけない」

認知症 責任感

最近、父の相続のお話や出版の告知ばかりで、認知症の母があまりブログに出てこなくなりました。でも、遠距離介護は今までどおり続いておりまして、最近また母からよく電話が来るようになりました。

デイに来ている人から、家に電話がかかってきて、早く返して欲しいって言われてるのよ!
くどひろ
ん?何を返さないといけないの?
ほら、折り紙。1日中デイで折っている人いるでしょ!その人が折り紙(記事タイトル下の写真が現物)を返して欲しいって、わざわざ電話番号をデイから聞いて、それでうちまで電話してきたのよ~

このやりとりは2年前にもよくあったのですが、最近またスイッチが入ったみたいで、ほぼ毎日2回ずつ東京のわたしのところへ電話してきます。わたしも介護者としての好不調の波がありまして、まず絶不調だったダメな例をご紹介します。

くどひろ
デイサービスが、他の利用者さんの電話番号教えるはずないでしょ?
何言ってんの、さっき電話来たのよ、さっき!わたしが嘘つくはずないでしょ!
くどひろ
なんて人から、電話きたの?
ほら、あれ、1日中折り紙折っている、ほら・・・・だから電話来ないはずないでしょ、さっきのことなんだから!わたしが嘘つくわけないでしょ!

てな具合で、母の妄想に対して正論で立ち向かって怒らせてしまいます。わたしはいつも忙しくないのに、たまに忙しくなると余裕がありません。そんな時つい、正論言っちゃうんですよ・・・それで後悔して、「あぁ~、またやっちまった。学習しねぇな、おれ」って自省します。

しかし、最近は父が亡くなったこともあって、母がわたしに電話してくるだけでうれしいモードになっています。「うわっ、ちゃんと東京に電話かけられてる!」と思うことすらあって、超寛容モードのほうが圧倒的に多いのですが、たまにこういうミスをします。ちなみに超寛容モードの場合は、こう切り返します。

くどひろ
あの折り紙ね、他のみなさんも同じようにもらっているんだってよ
あら、そうなの?わたしだけじゃないの?
くどひろ
そうそう。デイでもね、どんどん折り紙がたまって大変だから、みんなに無料で引き取ってもらうと助かるって言ってたよ
それなら、返す必要ないわね

これはわたしの作り話ですが、お互い笑って終えることができます。母の深層心理にはどんな思いがあって、こういった妄想になるのでしょうか?それは、

人から何かもらった場合、必ず何かお返しをしなければならない

これです。

デイで他の利用者さんが作った折り紙は、金銭的な価値はないかもしれません。しかし、何かもらってしまったということに対して、必ずお返しをしないと母は気が済まないのです。家にはその折り紙があって、それが目に飛び込んでくるたびに毎回毎回「お返しをしなきゃ」と思う、でもお返ししたかどうか記憶もないし、分からない、そしてわたしに電話をしてくるの繰り返しです。

妄想への対処法

こんな時の対処法は2つしかなくて、

  1. 時が過ぎるのを待つ
  2. 折り紙を隠す

これだけです。1のパターンで成功した千羽鶴が居間に飾ってあるのですが、今回はわたしに余裕がありません。相続は終わらないし、新刊の発売前です。それで2を選択して、折り紙を隠すことにしました。すると、母のお返ししないといけないスイッチは消え、電話も来なくなりました。

妄想のストーリーとしてはどうかなとは思うのですが、すごくまじめな母なんだと思います。ものでなくて感謝の気持ちを伝えるだけでお返しになると思うのですが、やっぱりものとかお金で返さないとバランスがとれないと思っているんでしょうね。

電話が鳴るたびに「また来た・・・」と正直思いますが、生きている証拠なんですよね。認知症の症状が進んで、できないことも増えてますが、電話はできるんですよね。やっぱり父の死の影響で、かなり母に対して寛容になり過ぎてます。この効果はいつまで持続できるかな・・・

今日もしれっと、しれっと。


にほんブログ村 介護ブログへ


【わたしの書いた最新刊】
東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

4件のコメント

くどひろさん、こんばんは。

細かい事は書けませんが、今日のお話は興味深い内容でした。
本当に妄想だけでのお話なのか、お母さまがお話されてる先方の方は
どのような身体状況の方なのか、また施設の対応も本当に連絡先を教える事は絶対にないのか?等々
色々思い巡らせるばかりです。
だから認知症という病気は、難しい事が多いなと感じます。

自分もてんてこ舞いさま

興味深い内容だと思ってくださる方がいるだけで、モチベーション上がります!ありがとうございます!

一度かかせてもらって本をもってるももです。
97歳のばばは自分でしてることを私がやろうとすると「私がしてるからせんといて」と怒ってしまいます。
でも夕方には優しいばばに戻りましたが今日もケアマネさんにばばが編んでるサブトンあげてました。
デーにいてた人がケアマネになり代わりました。母は私が世話してるのをありがとうねといってくれたことがありません。尿粗相や便粗相がありましたから急いで散歩から帰ってもらいました。

ももさま

コメントありがとうございます。わたしはたまに「ありがとう」と思いもよらない瞬間に母から言われることがありますが、基本は言われることはないです。またわたし自身、ありがとうを期待しないようにしているので、たまに言われるとびっくりしますしうれしいです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて13年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか