小室哲哉さんの会見を見て思った「音楽」という介護の逃げ場所が無くなること

小室哲哉 介護

小室哲哉さんの謝罪・引退会見を、フルでネット動画で見ました。不倫疑惑うんぬんについては、わたしは興味がないので触れません。あくまで「小室さんの介護と仕事」の部分だけ、思ったことについて書きます。

小室さんの発言で共感したところ

小室さん
大人の女性としての会話のコミュニケーションが日に日にできなくなって、かわいそうな気持ちもあった。そこを諦めてはいけないことが、精神的なサポートというのは、重々承知していた

クモ膜下出血で倒れた、わたしと同じ年のKEIKOさん。生存率3割といわれるこの病気で、生きててくれてありがとう!と最初は思ったと思います。でも、普通のコミュニケーションが取れないことに、日々イライラが募ることもよく分かります。

わたしも認知症の母と1週間生活を共にすると、何度も何度も同じ話の繰り返しで疲れることもよくあります。何に疲れているのかを自分で考えてみると

  1. 会話から新しい興味や刺激が全く得られない
  2. 同じ会話の内容なので、答え方もいいかげんになってしまう
  3. 脳を使って話してないので、自分の脳がOFFになっている感じがする
  4. 会話に広がりがないので、しゃべり足りない

もちろん母が思いもよらないことを言って、楽しい瞬間もたくさんあります。しかし母と1週間過ごして、東京に帰ってきて奥さんと話し始めるときにいつも感じるのが、

くどひろ
あれ、自分、脳の違うところでしゃべっている

ということです。

母と居た1週間では決して使うことのなかった回路に、奥さんと話し始めることで電流が流れ始める。そうすると脳が活性化して、いつも以上にしゃべってしまうのです。なので奥さんに、「テンション高いね」とか「しゃべりすぎ」とか言われる始末です。

小室さんが看護師さんと話しているときも、きっとこの感覚に近いのだろうと思います。母は口数は多いのでまだいいのですが、KEIKOさんは小4の女の子のようと言ってました。だから大人のふつうの会話ができる喜びは、わたしの数百倍だと思います。

小室さんご自身の闘病生活

小室さんは現在、左耳がほとんど聞こえず、たえず耳鳴りがキーンとしているうえに、以前はC型肝炎を患ったりもしています。わたしも耳鳴りがよくするので、イライラします。この状況を、わたしは独身時代ひとり40度の熱にうなされた自分に重ねました。

誰も看病してくれる人がいない孤独や不安、フラフラになりながらも洗濯は自分しかやる人がいないので、なんとか頑張るしかない・・あの感じに近いのかもと、会見を見ていて思いました。KEIKOさんに看病を依頼したり、病気の苦悩を伝えたとて、求める理想の答えは返ってきません。

そんな状況でも音楽活動の仕事は続いていく、90年代の輝かしい栄光、期待に応え続けることができた自分と、現在闘病しながら満足が得られる仕事ができない、期待に応えられない自分をもどかしいと思う・・・山が高ければ谷も深いので、普通の人以上に自分の老いを認めるのに時間がかかったり、悩みも深いのだと思います。

会見を全部見ないで、ネットニュースだけを見ていたときは、引退に追い込んだメディアに腹が立ちました。でも会見を見る限り、ちょっと雰囲気が違う感じもしました。病気で自分の思うような理想の仕事ができなくなっていたところに、この報道で引導を渡されたようにも見えました。

仕事という逃げ場所

四六時中介護をしていると、疲れます。仕事はストレスになるのですが、時として逃げ場所やオアシスにもなります。引退によって、音楽という介護の逃げ場所を奪われたと思って会見を見始めたのですが、ひょっとすると今の小室さんにとって「音楽」は逃げ場所になってなかったのかもしれません。

介護から離れて、仕事に打ち込む。でも理想とする楽曲ができないから悩む。仕事、介護、ご自身の病気というトリプルパンチ状態だったのだと思います。

復帰の可能性もあるっぽいので、「音楽」を楽しいと思えた原点を模索しながらゆっくりお休みになり、自分の治療にも専念し、他の人の協力を得ながら頑張って欲しいです。音楽を完全に閉ざしてしまっては、この先の介護はもっとつらく大変なものになってしまいます。

わたしも祖母や父、母の介護をしていて、どこに逃げ込むかといったら書くことです。ここで書いていることで、自分自身をいやすことができる。仕事が介護の逃げ場所になっています。

合わせて読むといい記事や気になったツイート

まずは三浦瑠麗さんのツイートから。

そして紫原明子さんのツイート。介護は人に相談すべきでしょ、コメンテーターさんたち。

ちゃぴぴさんのツイート。そうなんです、外の人と関わることで救われるのです。一方的な批判は、本当に酷すぎる。

脳科学者である中野信子さんのこちらの記事、大変参考になります。「他人の不幸は密の味」なのはどうしてか?よく分かります。人間の本質としてこういった報道を求める人が多いから、不倫報道はなくならないのかな・・・

わたしが見たノーカットの会見動画はこちらです。

今日もしれっと、しれっと。


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東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

3件のコメント

>脳の違うところでしゃべってる

すごくよくわかります。
アルツハイマーの母と、いつも一緒です。
昔話をすると、とても喜んでくれて、会話も弾んでるように見えるのだけど、
たま~に、遠方の妹と電話で話したりすると、やっぱり、全然違うんですよね。
同じ内容の昔話でも、頭の中で、ちゃんと言葉が動いてるっていう感覚。
くどひろさんのブログを読むようになってから、少し、気持ちにゆとりが出てきたように思います。
ありがとうございます。

追伸

「昔話」というのは、童話とかおとぎ話のことではなくて、
母が若かった頃の、思い出話、という意味です。念のため。

まあちゃんさま

コメントありがとうございます!

わたしのブログで少し気持ちにゆとりが出るというコメント、とてもうれしいです!

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて13年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか