介護が始まったとき離職ではなく転職の道を選ぶということ

履歴書

介護のために離職するのではなく、他の会社に正社員として転職する。あるいは正社員ではなく、時間の融通がきく派遣社員やパートの道を選ぶというケースがあります。

介護によって転職した人の年収がどうなったかという調査(明治安田生活福祉研究所・2014年)によると、男性が556万円から341万円に、女性は350万円から175万円に年収が下がりました。

女性の年収が約半分になってしまう理由は、介護転職によって正社員からパート・アルバイトになってしまったことが要因です。このケースには、世帯全体で考えたときに男性のほうの収入が多いから、男性がそのまま働いて、女性は収入ではなく時間の融通さを選択して、世帯全体で介護環境を整えるというものも含まれます。

こういった結果から、介護が始まったときに転職を考えてはいけないと言われています。介護と仕事(現職)を両立させるべきという声が多いのも、うなずけます。

お金は特に大切なのですが、わたしは転職という人生の大きなイベントの負荷が大きいから、介護が始まったときに転職はすべきではないと考えます。5つの会社を渡り歩いた元会社員の目線で、転職を語ります。

転職は想像以上にパワーのいる人生のイベント

介護による転職でなくても、転職自体がパワーのいる人生の大イベントであることは間違いありません。通勤ルートが変わり、どんな性格か分からない人が上司や同僚になり、そんなに仕事ができるわけでもない人が先輩風を吹かす・・・

何も分からないまま、その会社に飛び込んでいき、1日8時間以上を共にする。転職は本当に大変で、特にその会社に慣れるまでの時間が疲れます。社風、仕事の進め方、人間関係など、半年から1年くらい経たないと、会社の全貌は見えてきません。

パートやアルバイトになれば、正社員より責任が減ってラクと思われるかもしれませんが、そこにも同じように職場はあります。パートの偉そうな先輩もいますし、高給取りのくせに仕事をしない社員を見て、イライラもします。(←という話をよく聞きます~)

そんな状態にも関わらず、 慣れない介護までスタートしてしまったら、精神的にも肉体的にも疲弊してしまいます。だから、介護が始まってすぐの転職は特に、オススメしません。

唯一の例外は、介護に優しい会社であること

「介護に優しい会社」に転職できるのなら、話は別です。

会社の上司や人事に介護経験者がいたり、同僚が現在介護と仕事の両立中であったり、時短勤務やテレワークなど、働き方の選択肢が多いというケースです。

残念ながらそういった会社にめぐり合う確率は低い・・・。結果として介護転職をしないで、今の会社で介護休業制度を使ったり、職場の仲間の力を借りながら、介護初期パニックをとりあえず凌ぐことが正解だと思います。

もし転職を考えるのなら、介護の初期パニックを無事やり過ごしてからのほうがいいです。年収減よりもやはり、介護初期パニックと仕事を覚えることを同時にやるというストレスは尋常じゃないと思います。

介護転職による年収減は確かにつらいのですが、それ以上に転職自体がパワーのいる人生のイベントだということを覚えておいてください。

今日もしれっと、しれっと。


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東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて13年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか