GW中に認知症の母が町内会の班長になっていた!

回覧板

GWは楽しめましたか?

わたしは都内のジムで汗を流したり、ブログの改修作業をしたりして過ごしました。前半は良かったのですが、後半はある事件が起きてしまい、その対応に追われてしまいました。

ヘルパーさんから「札下げました」の連絡

5/2(木)に盛岡のヘルパーさんから、こんな連絡がありました。

「本日訪問時、町内会の当番札きてました。玄関に札を下げてきました」

一瞬、何のことか分からず、岩手に居る妹にLINEをしてみると「町内会の班長じゃない?」と。ヘルパーさんは、自宅玄関に班長札を下げてくださったのです。

認知症の母に班長の仕事が務まるはずがない!これは緊急事態!と思ったわたしは、東京でいろいろ作戦を考えました。

町内会の班長の仕事とは?

町内会の班長の仕事は、こういったものです。

  1. 町内会費の集金
  2. 会員異動の報告
  3. 会員や家族の死亡報告
  4. 文書の個別配布
  5. 回覧板を作成し、回す
  6. ゴミ集積所の掃除
  7. 街灯故障の連絡

こんなに仕事があるなんて!

この中だと、回覧板はすぐやらないといけない仕事です。うちの班だけで20人近くいるらしく、連絡が途絶えるのはまずい!しかし、東京に居てはどうすることもできません。

そこで妹に実家に行ってもらって、班長のお仕事書類一式を取りあえずわたしの部屋に逃がすように指示しました。母がこれら書類をどこかに整理して失くしたり、廃棄したりする可能性があったからです。

妹を長時間、拘束はできないので、書類を逃がすのが今は最善策だろうと考えました。GW明けの帰省で、わたしがすべて解決しようと。とりあえず、書類を写真に撮って送ってもらいました。

書類には分からないときは事務局に電話してと書いてあったので、そこに電話してみました。しかし、GW中だからなのか、見慣れない東京03の市外局番の番号だからなのか、電話が通じません。

さらに母から「なんか会員名簿ってのが家にあるんだけど、何なのこれ?」という電話が。どうやら追加の資料を母はもらったようで、不安でわたしに電話してきたのです。後日、妹に会員名簿も回収してもらって、母の不安を解消しました。

結局、電話はつながらなかったので、GW明けの帰省でお宅訪問することにしました。

そもそも認知症で足が不自由、介助なしでは外が歩けない母に班長の仕事は務まりません。なぜ、母は町内会の班長になってしまったのでしょう?

母が町内会の班長になったワケ

GW明けに盛岡に着いたわたしはまず、事務局宅へ訪問しました。

しかしまた留守・・・5日連続のスルーでかなりイライラしていたので、町内会トップである会長に電話をしました。

会長はわが家の事情は汲んでくれたのですが、結局はご近所さん同士で班長は誰がやるか解決してよ という話でした。

これは遠距離介護あるあるなのですが、わたしのように30年近く前に実家を離れていては、ご近所も変わっています。うちの両隣も変わっていて、1件には母が認知症であることを「たまたま」伝える機会がありました。もう1件は、一度も話したことがない家でした。

班長の仕事は、母が認知症であることを知っているお隣さんから引き継がれました。なぜ、そんな母に引き継ぐのだろう・・と思いながら、お隣に話を聞いてみると、母はしれっと「班長の仕事、やります」と言ってしまったらしいのです。

お隣さんは、母が認知症であることは知っていても、どのくらいのレベルかまでは知りません。ましてや、玄関先で普通を取り繕う母を見て、本人がやると言えば、「じゃぁ、お願いします」と言ってしまうのはやむを得ません。

こういう場合どうしたらいいのか、お隣さんも分からないとのこと。母がやりますと言った現場に連絡員さんも居たという情報を得て、今度は連絡員さん宅を訪問することにしました。小学生の時に行ったことのある家で、実に35年ぶりの訪問でした。

連絡員さんから見たうちの母

連絡員さん宅で、名前を名乗ると「あぁ~、立派になって」と言われました。小学生が46歳のオッサンになっているわけですから、そうなりますよね。

連絡員さんも引継ぎが終わっていて、もう担当ではないと言われました。元連絡員さんも、母と話してみて「しっかりされている方だ」と思ったそうです。

玄関先での1分の会話なら、母を認知症と思う人はいません。せめて3分、いや5分話したら、認知症だと分かります。同じ話を何度もするので。

母が認知症であること、外は歩けないこと、わたしが遠距離介護7年目であることを元連絡員さんに説明したところ、アドバイスをくれました。

どうやらもう1件の話したことがないお隣さんが、うちの次の班長だということが分かりました。元連絡員さんは男気のある方で、わたしと一緒に、その家に行って話してくれるというのです、本当にありがたい!!

元連絡員さんと一緒にお隣さん宅を訪問。一緒に頭を下げてくれて、班長を引き受けてもらうことになりました。お隣さんも介護に詳しく、うちの事情をすぐ理解してくださいました。

GW後半からずっとモヤモヤしていたので、問題が解決してスッキリしましたし、同時にグッタリもしました。母も町内の人も悪くない・・責める相手がどこにもいないからかもしれません。

今回の事件で良かったこと

今回の事件で、母が認知症であることを「より広く」町内に知らせることができました。

わたしは、母が認知症であることをオープンにする主義なのですが、決して積極的ではありません。こういうことがあったり、葬儀で集まったりした機会を狙って、そこで周知させていくという方法をとっています。

町内会も交代制でどんどん変わっていくので、何年か経ったらまた同じことが起こるかもしれませんが、今回の件を利用して、回覧板とごみ置き場の掃除をスキップしてもらうことにしました。

都内に居ても、実家の訪問者対応がスマホでできる、アレをやっぱり買おうかな・・

今日もしれっと、しれっと。


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東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

6件のコメント

くどひろさんお疲れ様でした。私も5年ほど前に似た経験(うちは金銭トラブル含む)がありましたので、ものすごくお気持ちわかります。私の「認知症介護辛かったことランキング」上位の思い出です。私も遠距離ですので、すぐに行って対応できなかったのはきつかったです。
話変わりますが、購入を迷ってらっしゃるソレ、いいですね。

ふくいさま

金銭はさらに大変ですね!わたしはいい人に出会えたおかげで、本当に救われました。
購入をずっと前から検討しているアレは、わたしの新刊でもご紹介した商品です。

くどひろさま こんにちは。

こういうことが起きると、離れていることにもどかしさを感じますね。
しかし、町内にご理解のある方がおられて本当に良かったです。

連絡員さんから見たお母さまと、お母さまの対応が私の母と重なりました。
ただ、私の母は話し好きで、1分では決して話が終わらないので
「んっ?」と思っていただけるようです。(笑)

近所の方(看護師)や、時々覗いてくださっていた民生委員さんが
「お母さん、少しおかしいよ」と言ってくださったことで
病院へ行ったのが、我が家の認知症介護の始まりでした。
ですから、母のことを知ってくださっている方々に助けられ
私も甘えさせていただきながら、気持ちの余裕が保てています。

離れていると、こういった何気ない見守りのサポートはありがたく
良い人たちに恵まれてラッキーだと、つくづく思います。
でも、たまたまラッキーなのではなく、みんながそうあるような環境が
ごく普通になれば良いなぁ~と、夢のようなことを思うのでした。

hakoさま、こんにちは。

そうなんです、理解者が近くに居て本当に助かりました。

民生委員さんの話をfacebookコメントでも頂いたのですが、わたしの実感では個人差がかなりあります。頼れる人、そうでない人がいますね。(今は頼れない人・・・)

おっしゃるとおり、ごく普通な世の中になるといいですね。ちなみに今回の件でいろいろなところに電話や訪問するとき、怒鳴られたりスルーされることを想定しながら動いてました。
その可能性もゼロではないですしね。

ご無沙汰しております。

我が町内会は年間、回覧する書類だけでも1000部くらいの書類が配布されます。

私は5年前に班長業務をして以来、サポーターと言う立場で町内会へ席を残しているのですが
それも班長業務以外の、各部の活動をサポートすれば、他の事に気を取られずに、班長業務の難しい方等の手助けという形にも、多少なりともなり得ると思う気持ちからです。

しかし、高齢化、独居、認知症、本当にこの数年で班長業務も難しい方は年々増えています。

先週も、今週も、ゴミの始末、回覧の不始末、不始末と言うと言い方は悪いのですが
若い方が班長をしても、そもそもの班長業務を責任を持って行おうと言う気持ちすらないのです。

そして、くどひろさんの記事にもあるように「班の事は班内で解決してくれ」
この一言で全てが済む間はまだ良かったのですが、「班の事を班内で解決出来ない」状態が増え
最終的には「町内会から脱退」と言う手段を選ぶ方も増えています。

肥大化した町内会は、考える事を放棄して「これまでそうしてきたから、これからも同じ考えで」
と言う幹部役員ばかりで、出来ない部分をどのよう工夫して作業するかとか、活動を縮小して
最低限の活動のみで町内会運営を行うとか、工夫も縮小も何も無いのが現実です。
この辺りは何度も提案進言いたしましたが、どなたも口を揃えて「今までそうしてきたから」
理由はないと平然と答えます。

そして「班長業務が難しい:と言う人が脱退を口にすると「あんたら辞めたら回覧も、お知らせも、何も無くなるんじゃけ、自分らが孤立して困るんよ」と脅し文句で引き止めます。

回覧も挟んで廻すだけで済まない物や、記入や確認が必要なものもあり、時に神社の寄付の集金まであります。

それらに加えて
春に地域運動会
夏に夏祭り
敬老会
秋に秋祭り
親子ふれあい行事
桜木の手入れ
防災訓練
とんど
クリーンキャンペーン
救命講習会
町内清掃
広報誌発行

ほぼ毎月一回の割合で行事があり、その度に役員はほぼ全てに駆り出され
私が班長の時には、月3回週末会議などと言う事も度々でした。

町内会に残りこの業務をこなすよりも、脱退した方がどれだけ楽になるか、そこを引き止めるのは
会費欲しさなのかとさえ思います。

そんな事なので、祭りと敬老会に町内会会経費の25%を使うと言う状態です。

お母さまの件は、今回は事なきをえて良かったですね。

自分もてんてこ舞いさま

PTAのことがよく話題になりますが、この町内会問題もいろいろありますよね。
すごく勉強になるコメント、ありがとうございます!おっしゃるとおり、今までのやり方を変えたくない人は町内にも、会社の中にもいますよね。
今までのやり方が正しいのかと言えばそうでもないし、新しい人ほどおかしいことに気づき、古い人ほど気づかないのも特徴です。

今回、いろんな方と話す中で、集金と個人情報と取扱いに苦労しているという話を聞きました。地域で支えるって何だろう・・・今回の件で、すごく考えたことです。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて13年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか