認知症の母とパラリンピックを見ると必ずケンカになる理由

わたしの大好きなプロテニスプレーヤーのロジャー・フェデラーに対して、日本の記者が「なぜ日本から世界的なテニスプレーヤーが出ないのか?」と聞いたら、「何を言っているんだ君は?国枝がいるじゃないか?」っていう最高の名言。大坂なおみさんが4大大会を取る前だったか?

チケットが当選していた車いすテニスを見に行けなくて残念ですが、岩手の実家でもパラリンピックは見れていません。というか見たいけど、認知症の母とケンカになるので見られないのです。

ほら、見て。手ないよ。かわいそうだごと。わたしは健康でよかったけども
くどひろ
ちがうちがう。そういう見方はダメよ。もし自分が同じ立場だったら、同じように走ったり、泳いだりできる?

別の日は、

あんや、気の毒だごと
くどひろ
気の毒とか言わないの!

要介護2の母は介護保険を利用しているのでこちらが優先されますが、障害等級の通知は毎年来ます。手と足の筋肉が萎縮しているシャルコー・マリー・トゥース病であり、60年以上も体の不自由さと自ら付き合ってきた人です。

誰よりも障がいに対して理解しているのかと思いきや、認知症の進行がそれを上回ってます。自分の日常生活の不自由さや体のハンデも忘れているので、こんな発言になってしまいます。

共生社会の話をしたり、母の発言を訂正しても、認知症が相当進行してしまっている母の記憶の上書はできません。

パラリンピックのニュースや映像が流れるたびに、母は「かわいそう」「気の毒だ」を反射的に繰り返します。それに腹を立てて母を責めたところで、残念ながら何も変わりません。認知症になる前の母なら、わたしの話をすぐ理解して修正できたと思います。

唯一の救いは、日常生活の不自由さや認知症を意識していないことです。そして、学生時代に感じた生きづらさも忘れています。中学のとき、まだシャルコーマリーが分かってない頃、体育のマラソンでいつもビリで大変だったと言ってましたが、最近そのエピソードも言わなくなりました。

ケンカはしたくないし、説得もできない。

結局パラリンピックの映像が流れたら、チャンネルを変えるようにしました。母と一緒のときはテレビをいつも見ていますが、それ以外の時間は執筆とかvoicyの収録とかやっているので、テキストベースのニュースしか情報が得られていません。NHKプラスで見られるけど、LIVEで見たいな~

パラリンピックは、以下の4つの価値を重視しています。

  1. 勇気:マイナスの感情に向き合い、乗り越えようと思う精神力
  2. 強い意志:困難があっても、諦めず限界を突破しようとする力
  3. インスピレーション:人の心を揺さぶり、駆り立てる力
  4. 公平:多様性を認め、創意工夫をすれば、誰もが同じスタートラインに立てることを気づかせる力

音声配信voicyの最新回は、急に介護保険サービスが停止になったらどうする?というお話です↓

今日もしれっと、しれっと。


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東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

2件のコメント

くどひろサン いつもありがとうございます
「みんな同じか~」です❗
在宅介護6年目 色んな変化ありますが
しれっと受け入れやってます。
気持ちを前向きにしてくれる
くどひろサンに感謝デス。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて13年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか