認知症の母の「同じ話」が消えたとき

盛岡はね、駅のそばにすぐ川が流れててね。盛岡に来た人が、びっくりするのよ~

母が5年以上、繰り返しわたしに言い続けてきた話です。わたしの返事はつれないもので、

くどひろ

駅のそばに川が流れているところなんて、全国山ほどあるよ

母に事実を伝えて、会話のラリーが終わるというパターンを何百回も繰り返してきました。ところが最近は、

盛岡はね、駅のそばにね。びっくりするのよ~

くどひろ

え、何がびっくりするって?

あれだけ何度も繰り返してきた「川」の話自体を思い出せなくなっているのです。わたしにとって川の話は聞き飽きているうえに、ストレスの原因であったわけですけど、定番のリピート話すらリピートしなくなる母を見ていると、認知症もここまで進行したかと思ってしまいます。

他にも歯医者に行くと、受付の若い女性が辞めたって話を毎回していたのに、最近は若い女性のところがなくなって、とにかく辞める人が多いという話になります。

言葉の一部だけでも思い出せなくなると、文章全体が成り立たなくなります。結果、母が何を言っているのか、全く理解できない日が増えてきました。妹と母の様子を情報交換した際も、母が何を言っているのか分からないことがあると言ってました。

あのリピートは嫌なものなんですけど、そのリピートすら懐かしいとか愛おしいとか思うようになる認知症介護のステージに、とうとう来てしまったなと思ってます。

認知症介護の定番の言葉に、「できないものを数えるのではなく、できるものだけを数える」ってのがありますが、「できるものを探すのが難しくなる」っていう、向こう側が少しずつ見えつつあります。

音声配信voicyの最新回は、お盆中の認知症介護について語ってます↓

今日もしれっと、しれっと。


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東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて13年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか