母の認知症テスト結果の公開とその考察

認知症テスト 結果

母の認知症テストは、年1回12月ごろに行うと決めています。以前は1年に何度もテストを受けてもらっていたのですが、長谷川式認知症スケールを開発した長谷川和夫先生(ご自身も先日、認知症であることを公表されました)が、年1回が原則だと講演会で言っていたからです。

その12月がやってきたので、わたしはいつもの通り認知症テストを実施することを依頼して、母と看護師さんがテストしている様子を姿を隠しながら、耳だけ集中して聞きました。

長谷川式認知症スケールを実施する上での注意点

長谷川先生が講演会で言っていたテストを実施する上での注意点として、答え方に注目するということでした。テスト結果の紙には、正解・不正解だけ書いてあります。でも、ヒントをいっぱいもらっての正解なのか、かなり惜しいところまでいっての不正解なのかまでは、紙には書いていません。そこに注目するために、わたしは毎回テストの様子を影でチェックしています。

今回の母の答え方でちょっと気になったのは、以前なら100から7を引くところが簡単にできていたのに、今回は途中で何回もひっかかっていました。ちなみにテスト結果は、満点である3点を獲得していました。100から7をひいて93、93から7をひいて86までできれば満点なのですが、昔の母なら86から7を引くことも問題なかったのに、今回はうまく答えられていませんでした。
 
新しくなった診療所で慣れない環境でテストを行ったことを考慮してあげたいと思いますが、それでも日頃から気になっていた短期記憶の保持がだいぶ難しくなっていることが、改めてテストで分かりました。

認知症テストの結果など気にもしていない親子

テストが終わった直後に母と話したのですが、

何だか分からないことも多かったわね、ボケちゃったかしらね
くどひろ
命に関わることじゃないから、気にしなくていいって。みんな歳取ればそうなるって。
そうよね、確かにそうだ。ハハハハ

わたしの中では、今までで一番悪い点だったのと、やはり短期記憶が保持できていないことがハッキリしたので、それなりに落ち込むポイントはあります。ただテストも8回目になると慣れちゃっていますし、明日同じテストをやると25点取れることだってあります。一喜一憂しないと決めているから、親子共に「しれっと」できているのかもしれません。

何よりうれしいのは、母が結果が悪かったことに落ち込む様子がないことです。いい意味で忘れてくれるから助かるのですが、それでもあっけらかんとしています。前はもうちょっと感情の変化を感じることがあったのですが、そういうのが何にもなくてケロッとしてます。いいよ~、それでいいんだよ!テストの設問とその答えについて、次で公開いたします。

今回の認知症テスト結果

No.質問配点母の答え(正解)2017得点(満点)2016得点(満点)設問の意味
1あなたは何歳ですか満年齢ないし呼び年齢 1点
1歳違い 0.5点
72歳(74歳)0(1)0.5(1)年齢
2ここはどこですか具体的名称 2点
抽象的名称 1点
ものがたり診療所2(2)2(2)場所の見当識
3今は何月ですか1点0(1)1(1)日付の見当識
今日は何日ですか1点0(1)0(1)日付の見当識
今日は何曜日ですか1点0(1)1(1)日付の見当識
今年は平成何年ですか1点0(1)0(1)日付の見当識
4これから言う言葉を繰り返してください。「桜、猫、電車」あとでこの三つの言葉を思い出してもらいますからよく覚えておいてください各1点桜、猫、電車3 (3)3 (3)言葉の即時記銘
5100-7は、それから7をひくと各1点93、862(2)2(2)計算
6682を後ろから言ってください。
3529はどうですか
各1点286
9523
2(2)1(2)数字の逆唱
7先ほど引き算の前に覚えていただいた3つの言葉は何でしたか各2点
(ヒントありで各1点)
桜、うま、うし、電車2(6)0(6)言葉の遅延再生
8野菜の名前を10個思い出してください。5個0点、6個1点、7個2点、8個3点、9個4点、10個5点ねぎ、キャベツ、大根、ホウレンソウ、白菜、じゃがいも、ニンジン、タケノコ、ごぼう、キュウリ5(5)5(5)言語の流暢性
9お見せする5つの品物をよく覚えてください各1点スプーン1(5)3(5)物品記銘
合計17(30)18.5(30)

設問の意味を、一番右につけてみました。17点でしたが、看護師さんのヒントの出し方とか聞いていると、15点ぐらいの感じかなとも思いました。年齢は72歳ということがなぜか多いですし、昨年はテスト部屋にあったカレンダーをカンニングして日付を微妙に正解させてましたが、今年はそういうのはありません。

改定長谷川式認知症スケール5年の推移

母は74歳なので、認知症の人の中では若いほうに属すると思います。若年性の認知症のほうが、認知症の進行スピードが速いとよく言われますが、若年性でなくても若ければ進行は早いのかな・・・とわたしは思っています。そういう意味で、かなりゆっくり進行しているんじゃないかと、楽観視しています。

長谷川式認知症スケール

ピック病からアルツハイマー型認知症へ

これらテスト結果や、最近の母の状況からピック病というよりかはアルツハイマーっぽい感じになっているという診断を受けました。わたしも前からそうは思っていたのですが、今後はアルツハイマー型認知症のお話が多くなると思います。

こうやって認知症のタイプも変化するものと、かかりつけ医もわたしも思っているから不思議ではないのですが、ピック病と診断がついたら一生そのままと思っている方も多いですよね。タイプも変われば、ミックスすることだってある・・・そう考えておかないと、ずっと同じお薬のままでおかしなことになります。

テスト中の特徴として、例えばアルツハイマー型認知症の人は言い訳や取り繕いが多いということです。母の場合は「いつもならスッと答えが出てくるんだけどね」とか「ひとりで生活している分には、分からなくても問題ないから」と、どうでもいい言い訳を繰り返していました。わたしがもし同じ部屋にいたら間違いなく「振り向き症候群(家族に回答を求める)」もあったと思います。これもアルツハイマー型の特徴の一つと言われています。

あと野菜の設問で、少ない野菜を繰り返すのもアルツハイマー型認知症の人の特徴です。母も「キャベツ、キャベツ」と何度も言ってましたが、10個言えたのはやはり料理好きだから?なんて思いました。

100%ではありませんが、ピック病の人は答えが分からん!と言って怒ったり、大声を出す、レビーの人は声が小さい、計算が苦手、高得点が取れるなど、テストにはいろんな傾向があります。

ということで、うちでは初めて微量の「ドネペジル(アリセプト)」を母に試すことにしました。微量とはいえ、いよいよアリセプトを母に試すときがきました。微量でも切れ味鋭いアリセプトが、どんな変化をもたらすのか・・・緊張します。この緊張感を持たない医師、それを信じて飲むご家族とご本人という構図がいっぱいあって、悪化しても飲み続けているケースはあるんですよね・・・

12月6日(水)発売の新刊に、このお薬の現状についても少しだけ書きました。紀伊國屋書店新宿本店さんは今日から新刊を入手できますので、トークイベントの整理券をゲットしちゃってください!
 
今日もしれっと、しれっと。


にほんブログ村 介護ブログへ


【わたしの書いた最新刊】
東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

2件のコメント

うちの母は73歳でアルツハイマー型と診断され、今、75歳です。
くどひろさんところと同じような結果です。
元々天真爛漫で割りと忘れっぽい人だったので、私もあまり気にしてないんですが、同じ話を続けざまにすることが増えてきました。
具体的な点数は先生に聞いていなかったので今度聞いてみます。
というか点数があることを知らなかったので勉強になりました。

うちは診断後、即アリセプト出されましたが、いつも明るい母が別人のように目が座り、感情の起伏が激しく泣きわめいたり怒ったり。
これはおかしいとすぐ薬を代えてもらいました。
今はレミニールと抑肝散です。
アリセプトでおかしくなった時は通帳や証書が無い、と警察も呼び、慌てて会社から駆け付けました。
忘れるせいでいろいろ不安になっているのかも、と主治医に相談、頼んで抑肝散と最初はデパスも処方してもらい、落ち着いた頃にデパスはやめました。
アリセプトやめると別人状態からはすぐに戻りましたが、忘れることに不安があるようだったので頓服的にデパスは正解だったなと思っています。
抑肝散はイライラを押さえるのと認知症にも良いという話もあるし、中国では幼児も飲む薬なので健康のため、みたいに思っています。

近所の方はアリセプトが合ったので、くどひろさんとこも合われると良いですね!

取り敢えず大変よくご存じとは思いますが、アリセプトは合う、合わないがはっきり別れるので、暫くしっかり様子を見ないとですね。

うちはバイク5分の近距離介護ですが、私自身が自宅の家事と、フルタイム会社員なのと、10年前から双極性障害(今は気分障害程度かな?)なのと、9月に乳癌発覚で10月に手術したり(母にはないしょ。中途半端に覚えてたり忘れたりすると会話が面倒だから!(笑))なので周りからは大変そうかも知れませんがテキトーにやってます!
近くに旦那の母も住んでますが半身不随でこちらは義妹がメインで見てくれてますが、うちのが近いのでこっちもまあいろいろ有ります。

いろんな情報を集める時間も気持ちも余裕ないのでくどひろさんのブログは有り難いです!

これからも頑張ってください。
頼りにしてます!

すみこさま

ブログを活用して頂いて、ありがとうございます!

そうなんです、アリセプトは本当にはっきり分かれるので慎重に様子を見ないといけません。すみこさんのように事情を分かっている方がどれだけいらっしゃるか・・・普通は疑いもなく飲み切りますからね、本当に怖いです。テキトー素晴らしいです!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(80歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて12年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか