認知症の母の妹が亡くなった話を改めてした時の反応

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音声配信voicyの #331 親との物理的な距離と心の距離の関係 の中で、叔母(母の妹)が2023年1月に亡くなり、その亡くなり方が切ないというか考えさせられる話をしました。亡くなった事実を認知症の母に伝えたのですが、わたしが想定していた展開にはならなかったのです。

妹の死に認知症の母の反応は?

叔母が亡くなった事実は、岩手に居るわたしの妹から母にすぐに伝えられました。

わたしが1か月後に改めて母に伝える必要があったとき若干躊躇した理由は、妹の死を知って落ち込んだり、認知症の症状が悪化したりするかもしれないと思ったからです。ただこれまでも親族の死を伝えたときにケロッとしていたので、それほど心配はしていませんでした。

叔母は神奈川在住。岩手に居る母は繰り返し、

なんで、あんな遠くに行ったのかしらね

が口癖になっていました。叔母と母が最期に会ったのは2014年の祖母の1周忌で、その後は電話が1回かかってきただけです。

姉妹の仲は悪くないのですが、おそらく叔母は母の認知症が相当進行していて、自分の存在すら分からないレベルになっていると思っていたのではないでしょうか? 1周忌のときに、姉妹水入らずで1日2人きりにしたのですが、母のリピート地獄で叔母も参ってました。

本当は母を神奈川まで連れて行きたいところですが厳しい面もあって、香典を送るだけにしました。しばらくして香典返しの連絡が岩手の実家にあったのですが、叔母の息子もやはり躊躇したようでした。果たして認知症のお姉さんに連絡して、会話が通じるのだろうかと。

たまたまわたしが実家に居て電話を取ったのでホッとしてましたが、香典返しが送られてくるし、母には物を見せないといけないと思って、改めて母に妹が亡くなったことを伝える必要があったのです。

くどひろ

香典のお返しで、缶詰とかコーヒーとかもらったよ~

香典? なに、誰の?

くどひろ

妹の。

ウソ! 亡くなったの! なんでもっと早く言わないのよ~

この展開は想定済みでした。改めて妹の死を伝えれば、初めてのような反応をするだろうと。母は悲しむよりも、なんで神奈川に行ってしまったのかと60年近く前のことを怒ってました。そっちじゃないでしょ? とは思いましたが。

落ち込んでショックを受けて泣き出すよりも、対応はしやすかったです。怒ったあと数分後には妹の死を忘れてしまったので、もらった香典返しを2週間かけて料理などに使って消化しました。これはこれで認知症のいいところだと、わたしは思います。

とはいえ今後はこのやりとりがしばらく、いや最期まで続くかもですね。

認知症になる前の母が、死に対してどんな反応をしていたかを思い出せません。これまであまり母の涙を見た記憶がないのです。影で泣いていたのかもしれないし、そのあたりは今度わたしの妹に聞いてみようかと思います。

それだけ学生時代は、母親をきちんと見ていなかったのかもしれません。認知症介護をしている今が人生で一番、母と接している時間が長いことに今さらながら気づかされた叔母の死でした。

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今日もしれっと、しれっと。


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東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて13年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか