認知症の母にバレないよう食事の準備をするワケ

2018年11月のブログを読むと、母は2枚の皿を用意しておけば、間違いながらも自分と息子の朝食を作ってくれていたようだ。2022年6月のブログでは、2枚の皿を用意しておけば、母は準備したいけどできないから、台所をウロウロするルーティーンの話が書いてあった。では最近は?

2枚の皿を用意すれば、食事の準備の合図になっていた

時間の感覚がかなりずれている母

認知症が進行した今の母は、時間の感覚がかなりずれている。夕食の時間よりだいぶ前の16時だというのに、「今日は何作ろうか?」と何度も言い続けながら、冷蔵庫を何度も開ける。

この行動のきっかけになるのが、2枚の皿。わたしが食事の準備をする際に、台所のテーブルに並べる。母が洗った皿は汚れが残っていて使えないので、わたしがキレイに洗い直して、2枚の皿をセットする食事前のルーティーンだ。

母はこの2枚の皿を見ると、何時であろうと食事の準備するようになってしまった。

食事の準備と言っても、冷蔵庫に入っているわずかな飲料、お菓子を持ってきて、汚れた皿と箸を並べるだけ。わたしはそれを元に戻すが、母はまた出してしまう。

これを1日数回、何年もバトルを続けてきて、最近は冷蔵庫の野菜室をロックしてしまった。なので主要な食材や調味料はすべて野菜室に入っているから、並べられる食材も少ない。

前は、冷蔵庫の食材をあるだけ並べて常温に戻していた。食材をダメにするので、こういうことになってしまった。

2枚の皿を隠す作戦

母親として息子の食事の準備をしなければならない気持ちは分かるのだが、重度の認知症ではそれも厳しい。だけど本人はできると思っているし、口頭で言ったところで止められないので、物理的に何とかするしかない。

最近は夕食の下ごしらえしたものは野菜室の中に隠し、キレイに洗った2枚の皿は台所の隣の部屋に置いて、母に見えないようにした。自分の家なのに食材や皿を隠すって、いったい何をやっているんだろうとは思うが、これで少しだけ改善された。

しっかり隠さないと下ごしらえした野菜を鍋に入れて、水も入れて、砂糖も入れて、謎の料理を作ってしまうので、やるしかない。わたしが居れば止められるけど、1人なら謎の料理を疑うことなく食べてしまう。吐き出すレベルの料理なのだが。

これから母にお願いするのは、果物の皮むき、朝食の目玉焼きともやし炒めのみ。いずれも要見守りではあるが、まだやれるのでここは頑張ってもらうつもりでいる。

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東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

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工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて13年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか