便失禁の対処に悩む介護者にぜひ伝えたい肛門科を受診したときの話

昨年末から母(80歳)は、大量の軟便が出て血圧が低下してフラフラになったり、血便が出たりして、大腸がんにでもなったかと思っていました。それで大腸内視鏡検査を受けたところ、異常はなく紹介状をもらって肛門科へ行くことになったのです。

肛門科を受診する前の準備

肛門科を受診するので、いつも以上にお尻をキレイにしておかないといけません。家を出る直前に、リハパンを新しいものに交換。予想どおり、リハパンに便がついていたので、やむを得ずビニール手袋をして母の肛門まわりをしっかりお掃除してから、病院へ向かいました。

新患だからか、問診票に書いたことを看護師さんに細かく質問されました。1番のポイントは、母が認知症で理解できないから、全部わたしに説明する。これです。90分ほど待って処置室に呼ばれたら、息子さんも一緒に入ってと。普通は入らないと思いますが、やむを得ません。

看護師さんに「先生に肛門が見えるよう、壁を向いてお尻をこちらに向けましょうね」と言われて、母のリハパンを下ろしたら、まさかの便失禁。待ち時間が長いと、ダメですね。

念の為持参していた替えのリハパン、おしり拭き、ズボンがあったので、看護師さんにおしり拭きで拭いてもらって、診察後に新しいリハパンを履きましょうということになりました。肛門科だったので良かったのですが、他の科だったらと思うと……。

痔ではなかった

母はベッドで横になり、真横で立っていたわたしは母の肛門を見たくない。でも説明は聞かないといけないので、肛門や直腸の中の様子が映し出された液晶画面を見ていました。

直腸に出血があり、前にブログに書いたとおり痔という診察だろうと思っていました。しかし、直腸脱だったのです。脱肛は肛門が外に出てくることで、直腸脱は肛門の先の直腸が外に出てくる症状です。痔とも違います。

肛門の先にある直腸が落ちそうになっていて、その際に出血もあるとのこと。さらに肛門内圧検査を実施しました。直径5mmの圧力センサーを肛門に挿入して、肛門に力を入れた時、入れない時の圧力を測定する検査です。

検査すると、母の肛門括約筋が相当弱っていて、平均値の2割しか締め付ける力がないと判明。便失禁の原因は、どうやらこれのようです。高齢女性に多く、母は3回出産しているので、そういう影響もあるようです。

とはいえ、母の直腸脱は完全に外に出るタイプではないので、まだ手術は不要。内視鏡で直腸を吊り上げる手術があるようですが、今回は飲み薬と肛門から注入する軟膏を処方されて終わりました。

うちは便失禁はそれほど多くないのですが、リハパンが便で汚れていることはよくあって、軽い便漏れは多いなと思っていたら、直腸脱が原因でした。たまにトイレの時間が長かったのも、直腸脱が原因だったようです。

これまでのモヤモヤが、すべて解決しました。軽い便失禁を病気と思わない、誰にも相談できないまま、時間が経過して受診される方も多いみたいですよ。

直腸脱の情報をシェアしていたら

診断結果をケアマネさん、薬剤師さんに連絡しつつ、デイサービスの看護師さんに軟膏の注入をお願いする電話をしました。調整が終わって台所へ行くと、母がこの日3回目の便失禁をして、自分で処理をしていました。

母が自分で処理をするときは、台所でリハパンを水洗いします。これがなかなかの地獄絵図で、4回分尿を吸収するから、大量の水を吸って巨大化するのです。これまでも何回もありましたが、新しいリハパンにしてからは初だっだので、重さが本当にやばい。

「ちょっとー!」と叫ぶ事件でしたが、リハパンと布のパンツの違いも分からないし、直腸脱だし。妙に納得しながら、重いリハパンを廃棄し、台所の消毒作業に入りました。

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今日もしれっと、しれっと。


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東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて13年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか