「認知症でよかった」 と思う瞬間とは?のはなし

祖母(90歳)は子宮頸がんで血尿が出ています。そして、やや高度の認知症であり、大腿骨骨折によりベットにいる時間が長くなり、寝たきり度がどんどん増している状態です。以前は3食きちんと食べていたんですが、最近は食べられない日も出てくるようになりました。

病院からの第一連絡先にわたしがなっているので、何かと携帯が気になるし、朝が来ると

「夜を越えて、無事朝がきたなぁ~よかったよかった」

という思いになります。子宮頸がんで病院に運ばれたのが、昨年の11月なのでそろそろ1年になります。

認知症の祖母の介護

療養型病院に祖母はいるので、基本は週2回、認知症用のつなぎパジャマ(便いじりをしないようにするための特殊なしかけ付)を洗濯して、車で30分かけて病院に持っていきます。あとはティッシュ、ポリデントの補充をしながら、病院代の支払を成年後見人の立場で行います。

軽度の認知症の母(70歳)を、この病院へ連れて行く役割もあります。母はシャルコー・マリー・トゥース病で、外ではうまく歩けないので、わたしと腕を組んでカップルのようにして病室まで連れて行きます。今までは1回お見舞いに行ったら1時間くらいいるようにしましたが、祖母はだんだん体力がなくなってきているので、30分で切り上げることもあります。

認知症の人同士 の話って、2人で同じ話を何回もループさせているんですよね。普通の人から見れば不思議な光景なんですが、祖母と母は楽しそうです。2人が無限ループに突入したところを見計らって、病院の手続きとか看護師さんからの依頼事項など、まとめて処理するというのをやってます。

「調子はどう?痛いところはない?」 と祖母に聞くと、毎回決まって

「どこも痛くないよ、調子はいい!」

と言います。本当のところはどうか分からないんですが、お見舞いに行く自分たちにとってはありがたい回答を毎回してくれます。こんな状態でも気遣ってるのかな?とすら、思う事もあります。

延命治療について

今回改めて先生に呼ばれたのは、”延命治療の家族の方針を聞いてないから” ということでした。2か月前に伝えていたのですが、病院側で連絡がうまくいってなかったようで、再確認で終わりました。

「延命治療をしますか?しませんか?」

という問いも最初はショックでしたが、3回目にもなると人間って慣れるんですね・・・・

祖母の隣のベットにはいつも延命治療をしていたおばあちゃんがいて、

「延命治療すると、こんな感じになるんだなぁ~」

生きているだけでいいというのもあるかもしれないけど、意思疎通も厳しいし、うちはどうなんだろう・・・・といつも考えさせられる環境でした。(最近、いなくなってしまったんですが)最終的に延命治療の方針は、祖母の娘2人に判断してもらいました。

そのうちの1人、認知症の母は、延命治療の方針の事は当に忘れています。また、祖母の症状を自宅に着くまでの、30分の間に忘れてしまいます。ただ救われるのは、

「いやぁ~、今日も母さん笑顔で元気だった~、病院に入ってから、みるみる元気になってびっくりした」

と毎回言います。本当に記憶が残っているならば、明らかにここ数か月で祖母の状態は悪化しているんですが、こういう時に、「認知症でよかった」って思います。また思い込みが、ポジティブなのがありがたい!

「そうだね~、今日も元気だったね~」

としかわたしは返事しません。これが認知症の人に対する、ベストな回答だからです。

「いやぁ、全然だよ。以前よりもだいぶ悪化していて・・・」

といったら、今度は母の認知症が不安から悪化してしまいます。だから、ウソでもこの回答がベストなのです。

看護師さんが言ったひとことが、とても心に響きました。

「おばあちゃんは、認知症でよかったかもしれないね。寝たきりの自分の状態を、はっきり理解している方がつらいと思うよ。」

ホントそう思います。祖母は自分の健康状態を忘れ、母は祖母の状態が悪化していく事、延命治療の事を忘れる・・・わたしや妹はしっかり記憶している分、つらいものがありますが・・・・

「認知症でよかった」

ふだんなら絶対に思わないんですが、こういう場面では本当によかったなぁ~ そう思います。


【2024年講演会予定】
10/19(土)宮崎県えびの市 → 講演の詳細・お申込みはこちら

にほんブログ村 介護ブログへ


【わたしの書いた最新刊】
東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて12年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか