認知症の母の携帯電話を解約しに行った話

母に携帯電話を持たせたのは、確か2011年だったと思います。東日本大震災を機に、何かあったときのために持ってもらうようにしました。当時の母はもの忘れが始まりつつあって、認知症なのか単なる老いなのか分からない状態でした。

その1年後に遠距離介護生活がスタートして、母の認知症も確定。母の携帯電話から留守電に連続で11件、しかも1分おきに同じメッセージが入っていて当時は驚きました。

認知症の軽度の頃はまだ、携帯電話を使ってわたしに連絡できていましたし、携帯に連絡すればきちんと出てくれました。しかし重度まで進んだ今は携帯を使うこともなければ、おそらく出ることもできないと思います。家のコードレス固定電話も、出られないくらいなので。

それでも携帯電話をしばらく解約しなかった理由は、母が固定電話の電源プラグを抜いてしまうからです。母が誤って抜いてしまって連絡がつかなかったときのために、携帯を敢えて残しておきました。

しかしコンセントは対策済みなので、母がプラグを抜く心配もありません。母も携帯は必要ないと言いましたし妹とも話し合って、携帯電話を解約することにしました。

委任状を持って携帯電話を解約

母の携帯はドコモのらくらくホン(ガラケー)で、もう修理対応もできなくなった機種です。下の写真がブログに残っていました。

2013年9月に撮った母の携帯の写真

認知症の親の携帯電話を解約した経験談がネット上にあって、親と一緒にドコモショップに行くケースや委任状なしで解約した話など様々でした。

母をドコモショップに連れて行ったり、電話で応対したりするパターンは会話に不安があるので、1番シンプルで確実な委任状を母にすべて書いてもらって、母と私の身分証明と携帯電話を持って、自分がドコモショップに行く方法を取りました。

早速母に委任状を書いてもらおうとしたのですが、これが難しい!最近は自分の名前を書くのも、時間が掛かります。失敗してもいいように委任状を3枚プリントアウトして、まずは練習です。わたしの書いた見本どおりに、書いてもらうことにしました。

このとおり書けばいいんでしょ、簡単じゃない。あれ? 手が震えて書けない。え、この字はなんて読むの?

まず、名字の工藤の「藤」が難しくて書けません。ホワイトボードを使って、拡大した「藤」の字を委任状に写してもらったのですが、字が震えているし読めません。1枚目はやはり失敗。これは完成まで相当時間がかかりそうです。

2枚目。ホワイトボードに拡大したお手本となる文字を都度書いて、名前、住所、生年月日、電話番号を1つ1つクリア。ギリギリ大丈夫そうな委任状が、奇跡的に完成しました。30分から1時間は覚悟していましたが、わずか15分で完成。普通なら1分で終わるので、苦労はしました。

苦労して作成した委任状が必要なかったワケ

10時15分の予約を入れたところ、なぜか予約が10時30分になっていました。オンラインの来店予約メニューに委任状を使った解約がなかったので、やむを得ず電話で予約したのですが、先方が間違って予約を入れたようです。

待ち時間が15分増えたので、店を出ようとしたら前倒しの対応に。

ドコモショップ店員

お母さまの携帯の解約ですね。それではお母さまの電話番号を入力して頂けますか?

入力後、わたしは苦労して作成した委任状と母のマイナンバーカードを準備し、母の携帯電話も机の上に出しました。するとドコモスタッフの方から、思わぬ言葉が。

ドコモショップ店員

こちらの携帯電話は、息子さんの名義で契約されてますね。なので委任状は必要ありません、息子さんの身分証明書はお持ちですか?

くどひろ

え゛? あ、はい。運転免許証持ってきました。

手続きは10分かからず終了、母の携帯は無事解約されました。

認知症の親の携帯電話の解約について調べまくって、コールセンターに電話までして必要書類や持っていくもの、委任状の書き方まで確認したのに、まさか自分名義だったとは!

ドコモショップを出たあと、なぜ自分名義にしたのかを思い出しました。いずれ母の認知症が進行して携帯電話が使えない時期が来るかもしれない。その時の解約が面倒だろうだから、わたし名義にしておけばラクだろうと。なのに10年経って、すっかりそのことを忘れていたのです。

10年前の自分を褒めつつ、母に委任状を必死に書いてもらってた自分のアホさに失望しました。認知症も重度まで進行すると、委任状の準備もドコモショップへ行くのも大変になります。ひょっとするとこのやり方、認知症介護中の人にはいいかもしれませんね。

音声配信voicyの最新回は、回転ずしに母と行ったときのお話です↓

今日もしれっと、しれっと。

にほんブログ村 介護ブログへ


【2023年1月発売の最新刊】
東京と岩手の遠距離在宅介護を、10年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。2012年から岩手でひとり暮らしをする認知症で難病(CMT病)の母(79歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて11年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。
音声配信Voicyパーソナリティ『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか