『ボケの8割は「水・便・メシ・運動」で治る』の感想

ボケの8割は水・便・メシ・運動で治る

廣済堂出版の健康人新書シリーズで、2019年4月末に発売されたばかりの新刊『ボケの8割は「水・便・メシ・運動」で治る』を読みました。

著者である国際医療福祉大学大学院教授・竹内孝仁先生は、 高齢者介護の基本は、水をしっかり飲み、普通の食事をとって、運動して、自然な排便を促すという講演を全国でされている方で、まさに本のタイトル通り。

特養の担当医時代に、おむつゼロを実現したことでも有名な先生です。うちの母もいずれオムツ?と思うこともよくあるのですが、この言葉を聞くと、おむつのそういう面もなきにしもあらずだなと。

おむつをつけられたとたん、音を立てて『人間』が崩壊していく。おむつは、人間の尊厳を侵害し、身体的苦痛も与える介護という名の虐待である

引用元:https://www.kenshokai.group/study/2622/

この本の中で、わたしが特に気になった認知症についての記述をご紹介します。

竹内式 認知症6タイプ

認知症の分類を、アルツハイマー型やピック病ではない6つの分類にしているところが面白く、介護家族も(医師も)こういった目線を持っておいたほうがいいと思います。

  1. 身体不調型
  2. 認知障害型
  3. 環境不適応型
  4. 葛藤型
  5. 遊離型
  6. 回帰型

わたしも自著で書いたことがあるのが、身体不調型と環境不適応型です。身体の不調によって、認知症の症状が引き起こされるもので、本の中で強調されているのが「便秘」です。

認知症の人が興奮状態にあったり、暴言を吐いたりしたときの原因をよくよく探ると、実は便秘に起因していたという話は、割と有名な話です。わたしの最新刊では「声なき声を家族が拾う」と表現したのですが、認知症以外の身体の不調に起因して、認知症の症状が現れているケースがよくあります。

環境不適応型は、知らない人、見慣れない場所など、家族は良かれと思って施設やデイサービスを利用し始めたのに、かえって認知症の症状が悪化した場合、環境の変化が原因になることもあります。

ネタバレになるので、すべてはご紹介できませんが、こういった視点で認知症の症状にアプローチしてみることも大切だと思います。ご家族のほうがむしろ、気づきやすいかもしれません。

水を摂るほど、尿失禁はなくなる

富山県富山市で1万人が参加した「みんなで取り組む水飲み運動」の話も、本の中で興味深い話のひとつです。

夜のトイレを考えて、昼の水分摂取を控えるというのは、熟睡を遠ざけて、逆に頻尿や夜間の尿失禁を増やしてしまうことになるのです。

引用元『ボケの8割は「水・便・メシ・運動」で治る』

わたしも尿・便失禁の翌朝の処理が面倒なので、夜やいつもより遠い外出先の場合、母にはあんまり水を飲ませないほうがいいと思ったりもするのですが、こういった発想もあるのだなと、目からウロコでした。

まずは家に居る時に、もうちょっと意識的に水を多く摂ってもらうように仕掛けてみようかと思います。認知症の人に1日どれくらい水分を取らせるかという視点も持ってみると面白いかもしれません。

1日で読めてしまう、読みやすい本です。

ボケの8割は、「水・便・メシ・運動」で治る (健康人新書)

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2件のコメント

はじめまして。
くどひろさんの著書、4冊読ませていただきました。介護者目線でとても共感が多く、精神的に救われております。 ありがとうございます。
さて、私は75歳で認知症の夫を介護している、やはり75歳の妻です。
認知症を発症(疑い?)したのは10年前。
診断されたのはその一年後です。
治療を始めたのが早かったおかげか 進行は緩やかでしたが、ここ一年ほど前から急に進行が早くなり
5月の介護認定で「要介護3」となりました。
尿、便失禁、着衣行、妄想、徘徊など困った症状のオンパレードです。
そして、アルツハイマーという診断でしたので
それを信じ込んでおりましたが、つい最近「レビー小体型」とわかりました。
かかりつけ医にそのことをはなしましたが、「治療にそれほど違いはないから」とのことでスルーされました。
でも、私はネットなどで調べ 漢方の”抑肝散”が効果があると言うことをしり、医者にそのことを話し
“しぶしぶ”処方してもらいました。
その前に妄想を抑えるということで処方してもらった”クエチアピン”という薬より副作用もなく、とてもよく効いていると思っております。
それと、最近疑問に思っておりますのは、9年間処方され服用しています”メマリー”についてですが、
進行緩やかだったのは この薬のお陰だったとは思っており ありがたかったと感謝しております。
しかし、9年経ち ここまで進行してしまっていても
飲み続けることは必要でしょうか?
前に 申しましたように、介護者(私)も75歳で 他に介護者はおりません。
メマリーを飲み続け介護期間がいたずらに長くなることに不安を感じています。

工藤さんはどのようにお考えですか?

はじめましてから、ややこしい質問で申し訳ありません。

佐野様

コメントありがとうございます。書籍も読んで頂き、とてもうれしいです!
わたしは医師ではなく、一介護家族にすぎないので、これから書くコメントに責任は持てません。それでも了承して頂けるのであれば、読み進めて頂ければと思います。

まずアルツハイマーとレビーにそれほど違いがないというのは、どうかな・・と正直思います。お薬の取扱いもだいぶ違いますし、レビーには薬剤過敏性の方もいます。
お薬が効き過ぎたり、副作用が出たりしますし、市販薬でも調子が悪くなるようなこともあります。そのことに医師も家族も気づかないというケースもあります。

しぶしぶ処方してもらったと書いてあるので、ここに書いてある話も医師に伝えたとしても、一家族の意見では取り合ってもらえないと思います。
別の医師の意見を聞いたほうがいいのでは?と正直思いました。

メマリーですが、レビーだったら使わない先生もいらっしゃいます。認知症もアルツハイマーと診断されたら、一生そのままというわけではありません。
レビーと他の型が混合されている方や、うちのようにピック病からアルツハイマー型に診断が変わることもあります。状態を見極められる医師に診てもらうことがいいとわたしは思います。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて13年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか