2/20発売の最新刊『つまずかない「認知症ケア」の基本』を読んで

つまずかない認知症ケアの基本

2月20日に発売されたばかりの最新刊『つまずかない「認知症ケア」の基本』(ソシム)を、献本して頂き読みました。

著者の市村幸美さんは、看護師です。看護師さんが介護職になったばかりの方に向けた認知症ケアの本ですが、わたしは介護家族なので、その目線で本を読んでみました。そしたら、たくさんの気づきが得られる読書になりました。

施設職員など介護職とうまくいっていない家族

介護職の皆さんが、わたしのような利用者家族と接する中で、どのような悩みを抱えているのか? また、認知症の利用者と接し、どのような困り事があるのかをたくさんのイラストを用いながら、カラーで分かりやすくまとめてあります。

かわいらしいイラストで読みやすさが増す

介護家族であるわたしは、このような翻訳しながら読みました。例えば、

利用者家族との上手な接し方 → 利用者家族が介護施設等に対して、こういった文句やクレームをつけているんだなぁ。介護職を困らす家族は、こういうケースかぁ。

介護職が抱える認知症利用者に対しての悩み → 介護家族も同じような認知症介護の悩みを抱えているから、そのまま使える接し方だなぁ。

介護職の方向けの本ですが、介護家族が読むと、他の家の介護の姿が見えてきます。おそらく「人の振り見てわが振り直せ」と感じるはず。こういう介護家族にはなりたくない……、率直にそう思いました。

さらに家族は介護職を「介護のプロ」と一括りで考えがちですが、市村さんは本にこのように書いています。

医療職と比較すると介護職は専門分野として新しく、資格や教育背景が多様です。また、無資格の職員も多く、知識の質や量に差があるといわれています。資格の有無と介護職の質はイコールではありません。

引用元:『つまずかない「認知症ケア」の基本』(ソシム)

最後の一言は、特に大切ですよね。介護福祉士だから、ケアマネの資格を持っているから安心、信頼できる ではないんですよね。結局行きつく先は、資格ではなく人格です。

介護の職場だから特別なわけではない

介護職と看護職の仲が悪い話の例は、まさに一般企業で行われていることと同じだなと感じました。一般企業なら、仕組みや配置転換で整えながら、課題解決を行うケースが多いように思います。

結局、あらゆる仕事で大きな障壁となるのはコミュニケーション。介護の世界は特に、職人芸的なところもあるので、人間関係の特有の難しさを感じました。

本を読みながら、介護の職場をのぞき見したような気持ちになったのと同時に、職場の悩みはどの業界も似ていることも分かりました。

認知症の症状とその接し方を新人介護職の方に説いている部分は、そのまま家族にも使える内容です。入浴を嫌がる、家に帰りたいと怒る、食事を食べないなどなど、認知症介護中によくある話が丁寧に書いてあります。

やはりカラーのほうが読みやすいし、イラストがかわいいので、読者との距離をいい感じで近づけてくれています。

認知症介護の基本を学びたい方はもちろんのこと、介護職とのコミュニケーションに悩んでいる方など、介護家族こそ読んだほうがいい本かもしれません。

最新回の音声配信voicyは、ブログにも書いたことがない「ダブルケア」のお話です。介護と子育ての両立が社会の課題になった背景とは?

今日もしれっと、しれっと。


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【わたしの書いた最新刊】
東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて13年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか