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認知症介護でとても大切な「時間稼ぎ」という行為

認知症介護は「時間稼ぎ」がとても大切です。なぜ、時間を稼ぐことが大切なのでしょう?

認知症の時間稼ぎとは?

時間稼ぎには認知症当事者の時間稼ぎと、介護家族の時間稼ぎの両面があります。

認知症当事者の時間稼ぎの代表例は、抗認知症薬を使って認知症の症状の進行をゆっくりにすることです。また、介護家族が認知症の人との接し方を工夫すること、介護保険サービスや家族の態勢づくりをしっかり整えることで、認知症の進行がゆっくりになり、時間稼ぎになります。

介護家族の時間稼ぎは、認知症の進行を受け入れるための時間稼ぎです。

医師から認知症と診断されたとき、介護家族も大きなショックを受けます。それでも、現実を受け入れて、介護をやっていこうと決意して、悩んで迷って前に進んだ結果、今があるはずです。時間の経過とともに落ち着いて、少しずつ認知症を受け入れられるようになっていったのではないでしょうか?

認知症は基本根治しませんし、人間誰もが老いるので、時間稼ぎは一時的な救済措置でしかありません。幸いにして認知症は、崖から下り落ちるような進行を見せることもありますが、基本はゆっくり進行していきます。認知症はロンググッドバイと言いますが、まさに長い長いお別れです。

この長いお別れも時間稼ぎのひとつで、認知症に与えられたプレゼントのひとつではないかと思うのです。

これまで、母の認知症介護で時間稼ぎをしてきたおかげで、心の貯金がありました。しかし、新型コロナウイルスによって、認知症が一気に進行し、貯金を引き出してしまいました。やり場のない怒りもありますが、怒りにパワーを使うのはもったいないので、他に振り向けます。

どんなに苦しい認知症介護であっても時間稼ぎをすることで、症状や状況が改善したり、一筋の光が見えてきたり、予期せぬ解決策が見つかったりすることもあります。本当につらいなと思ったら、ほんの少しだけでいいので、時間稼ぎをしてみてください。

未来は誰にも分かりませんが、時間稼ぎの先にひょっとすると根治薬ができていたり、驚くようなガジェットが開発され、介護がラクになる可能性もあります。わたしは時間稼ぎの先に、見守りカメラのようなたくさんのガジェットがあって、おかげで遠距離介護がラクになりました。

介護は先が見えないとよく言いますが、時間稼ぎしている間に大きく環境が、時代が変化することもあります。それを信じて、少しずつ少しずつ時間稼ぎをしてみてください。

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今日もしれっと、しれっと。


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4件のコメント

はじめまして。いつも拝見させて頂いてます。今回の記事を読んで、泣きそうになってしまいました。
2月に両親共に判明し、今は別々ではありますが、グループホームに入所。生活については心配はいりませんが、帰りたいと言っている事などを聞くと、私の心の中で
一緒に家で暮らせなかったか?
仕事を辞める?
いや、大学生の子供の学費はどうするんだ?
これでよかったのか?
自分の生活も大切にしなきゃ!と
ぐるぐる回り堂々巡りの日々です。
両親にも、私にも、いつか時間薬が効いてくるのでしょうか。
また、いろいろと参考にさせて頂き
乗り越えていきたいです。

ゆきりんごさま

ブログいつも読んで頂き、ありがとうございます!

時間の薬は、必ず効いてきます。明確な答えが出なくても、解決に至らなくても、自分なりの着地点が見えてくると思います。

初めてコメントさせていただきます。工藤さんの、「親が認知症!?離れて暮らす親の介護•見守り•お金のこと」を数年前に買い、隅から隅まで熟読していたのに、ブログの存在にさっき気づきました。遠距離介護を始めて1年ほどになります。両親共に認知症で、2人で暮らしています。昨年要介護認定を受けたものの、全ての介護サービスを父に拒否され、1年以上経過した今年の3月から、ようやく母のデイサービスの利用と5月からヘルパーさんを利用。本人たちの希望もあり、何とか2人で実家で暮らして欲しいと思っていますが。ケアマネさんやデイの職員さんヘルパーさん、ご近所の方からの、もう限界でしょ。施設に入れなきゃという、遠回しな圧力に困っています。実際に2人同時に入れるグループホームを見つけ申込をしたものの、一旦は了承した父親に、直前で拒否され断りました。色んな手続きを一気に進めていたのに全て白紙になりました。
疲れ切った私は、今は時間稼ぎをして、申し込みをしているここなら任せられるというグループホームの空きを待ってますが。そんな呑気なこと言ってる場合ですか?という周りの圧力に、普段お世話になってるだけに言い返すこともできません。少しほっておいていただけませんか?と言いたいです。時間稼ぎしたいです。

ぴーなっつさま

わたしの本を熟読して頂き、ありがとうございます!
そしてブログに気づいて頂き、コメント2件うれしいです。(まとめて回答で失礼します)
ちなみに音声配信voicyも週3回やっておりますので、もしよければ(笑)

せめてケアマネさんだけでも、家族の気持ちに寄り添って欲しいですよね。うちはケアマネさん、デイの所長さんも家族や本人の意向を最優先に考えてくれます。
わたしの場合はこういう発信を10年以上やっているので、「遠距離介護なんてしないで同居すれば」「お母さんがかわいそうだから施設に入れたら」という声を山ほど頂きました。でも知らない人に何を言われようが、介護を担っていったり母の健康を守ったりするのはわたしと妹しかできません。自分やご家族が後悔しない選択をされるのが1番かなと思います。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて13年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【著書】
親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか

【音声配信Voicyパーソナリティ】
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