認知症の母の冷蔵庫あさり対策にベビーガードでロックした話

この記事を書いている今もお試し期間中であるし、介護者としてものすごく葛藤もあるのだが、わが家で始めた認知症介護の新しい冷蔵庫の使い方をご紹介する。

重度まで進行した認知症の母の料理事情

認知症の母は全く料理ができなくなった今でも、自分は料理ができる、作っていると思っているし、ヘルパーさんなんて必要ない、息子の料理も自分が作らないといけないと思い込んでいる。

わたしが全く手を貸さずに、母が作った夕食の写真がこちら↓

母の作った夕食

この日はわたしがラジオに出演するので、ホワイトボードには「夕食は弁当を買って帰るので、待っててください」と書いて、分かるようにしておいたのだがこうなってしまう。

ツッコミどころ満載のこの写真。冷凍食品のシュウマイを常温に戻して、溶かしてしまう。ちくわはそのまま食べられるので問題ないが、ヨーグルトは冷蔵庫で保管せず、常温に戻す。夕食のハッピーターンは違和感があるが、朝に南部せんべいもあるので慣れてしまった。

箸は昼に使ったものを洗わずに使いまわしているし、真ん中のふきんは台所を拭くためのもの。お手拭きとして使おうとしている。

母の気持ちは分かる。息子のために夕食を準備しないといけないと思っているのだろう。しかし認知症で料理ができないので、結果こうなってしまう。これが1回目ならまだしも、この記事を書くまで、数か月にわたって母がこうした食事の準備をし、わたしやヘルパーさんが食材を冷蔵庫に戻す戦いは続いていた。

母の冷蔵庫の使い方

冷蔵庫の中の食材を出して、並べる。これが母の作る料理になってしまったのだが、冷蔵庫の扱い方もよろしくない。

冷蔵庫の扉を何度も開け、ピーピーと警告音が鳴ってもお構いなしに、食材の整理整頓を何度もやる。キレイ好きだからかもしれない。あるいは何かを作ろうとしても、必要な材料も何を作っていいかも、料理の名前すらも分からないから、冷蔵庫をずっと開けるのかもしれない。

さらに過食もあるので、冷蔵庫の中にたくさんの食材を入れておくと、片っ端から食べてしまう。わたしが帰京した日の夜に食べてもらう予定だった食材を前日に食べてしまったり、マヨネーズを直でいったり、ジャムをヨーグルトのように食べて、1週間で2瓶完食してしまった。

他にも冷蔵庫と冷凍庫の機能の違いが分からないので、冷凍食品が冷蔵庫の中で溶けていた日もあったし、ハーゲンダッツが冷蔵庫の中でドロドロになっていた日もあった。

料理が得意だった母。その名残もあって、冷蔵庫に触れていたいのかもしれない。認知症の切なさもあるが、現実問題としてこんな問題が多発している。前のブログ記事では、命の危険に関わる話を紹介した。

生の鶏肉を、中途半端に料理して食べてしまったのだ。

この状況を解決すべく、半年くらい前からセカンド冷蔵庫を購入するつもりで、ネットや家電量販店に行っていた。そうすれば、母が直接食べてしまう調味料やジャムを逃がしておけるし、常温に戻す冷凍食品もそっちで保管すればいい。

わたしが帰省したときに飲むヤクルト1000やコーヒーも母が飲んでしまったり、コップに移さずに直接口をつけてしまったりする。冬は冷蔵庫がなくても、自分の部屋に置いておけば天然の冷蔵庫状態になるので、そっちへ逃がしていた。でも夏はそうはいかない。

セカンド冷蔵庫の購入一歩手前まで来ていたが、ある方法を思い出してそちらを実行した。

冷蔵庫にもベビーガードを取り付けた

洗濯機につけたベビーガードを、冷蔵庫にもつけるようにした。但し、すべての扉をガードするのではなく、こんな運用にして様子を見ている。

洗濯機のベビーガード
野菜室と冷凍室だけをベビーガードでロック

上段の広い冷蔵室スペースは、母の自由にできるスペース。中段の野菜室と下段の冷凍室はわたしやヘルパーさんが使う調味料などを入れるところにして、ロックする。

そうすれば制限はあるが、母はこれまでどおり冷蔵庫を好きに触れるし、過食の心配もない。セカンド冷蔵庫は母に見つからない2階などに置くつもりだったのだが、いちいち取りに行くのが面倒という問題があった。でも、この運用なら大丈夫。

実際、常温で保管できる調味料は母の見えないところに保管しているが、今後は冷蔵庫を活用してもいいかもしれない。

冷蔵庫をベビーガードした介護的なメリット

介護的に大きなメリットもあった。それはわたしが外出時はいつも、母が冷蔵庫をあさっているんじゃないか、直接口をつけているんじゃないかと気が気でない時期があった。でもベビーガードをすることで、その心配からは解放された。

また翌日の献立用に買っておいた材料を食べられなくて済むので、急遽雪の中、追加で買い物に行く必要がなくなった。新しい冷蔵庫の運用は次のとおり。

  1. 母が直接口にしそうな、ジャムや調味料類をロックした野菜室で保管する
  2. ヘルパーさんや家族が翌日に使う材料をロックした野菜室で保管する
  3. 冷凍食品を何度も溶かし、廃棄していたがそれがなくなる
  4. セカンド冷蔵庫を買わずに済む
  5. セカンド冷蔵庫の場所まで移動せずに、食材をすぐに取り出せる
  6. 母が頻繁に冷蔵庫を開け、ムダに電気代がかかっていたが節約になる
  7. 母は冷蔵庫の上段だけは利用できるので、その部分は尊厳が保たれる

まだテスト中で、わたしが一緒に居るときはずっとはロックしていない。買い物に行くときや、寝る前など時間を限定してロックしている。わたしもまだ葛藤があるので、少しずつ時間を延ばしていくつもりだ。

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今日もしれっと、しれっと。


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5件のコメント

くどひろさま

私の父も認知症が進み、症状は違いますがプランの変更を考えなくてはなりません。

ご苦労もあると思いますが、どうぞ無理せずお元気でお過ごしください。
お母様も少しでも長くご自宅で過ごせますよう願っております。

同じように冷凍食品が冷蔵庫にあることは良くあります。
冷蔵庫ロックは中々判断が難しいですね。
自分は保冷バッグにいれて、バッグを開けられないようにしてやってます。
今までの被害は、冷凍えのき茸、冷凍鮭などかな。
餃子などは1、2日なのて、しれっと冷凍庫に戻すか、すぐ調理してしまいますかね。

丁度数日前から冷蔵庫の物が無くなり始めて困っており、検索した結果こちらに辿り着きました。
ブロッコリーやキャベツなどの野菜を隠しているようで、春の温かさでどこかで腐ってしまうのではと気が気ではありません。分かりやすいロックを付けると本人がショックを受けるのでは…?と考えていましたが、祖母の為にも検討しなければなと感じています。

岩手在住の身な事もあり、東京とこちらを往復しながら介護をする工藤様に親近感を抱きコメントさせて頂きました。
お互い頑張りましょう。活動を影ながら応援しております。

ソルトさま

検索でたどりついたのですね、そして岩手の方!

うちは認知症が相当進行した段階でベビーロックをつけましたが、それでも葛藤はありました。冷蔵室だけは開放するという苦肉の策でしたが、第二冷蔵庫の設置も考えました。今のところはうまくいっておりますが、健康・安全面で影響が出る場合はやむを得ないところもあると割り切っています。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて12年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか