余命1か月と言われた父が激怒「あのバカ医者が!」

久しぶりに父の現状について。

悪性リンパ腫(血液のがん)で、余命1か月から3か月と診断された父(75歳)。

がんの標準治療と呼ばれる外科手術、放射線治療、抗がん剤のうち、外科手術は行った。しかしこれ以上小腸は切れない、そして体力も残ってない。抗がん剤を使うと余命を縮めてしまうから、何もしないほうがいいと言われた。痛みをとる緩和ケア、終末期医療(ターミナルケア)を行い、余命を自宅で過ごしているというところまでは書いた。

父に聞くと、体重は68㎏から20㎏も減って、48㎏になったそう。在宅のかかりつけ医に聞いても、父の急激な痩せ方から残りの命は短いから、覚悟しておいてほしいと言われた。救急病棟の医師の余命宣告は目安としか思ってなかったが、在宅のかかりつけ医はたくさん家で看取っているから、死の覚悟を持ちながら過ごしていた。

その証拠に、葬儀の見積もりの電話をして、あとは親族と相談する手前までやった。葬儀の参列者のメンバーも聞いた。延命治療を本人が希望しないことも聞いた。祖母が亡くなった時はこれらを一切聞けずに後悔したから、今回は苦しそうな父に申し訳なかったが、しっかり回答をもらった。本人の意思通りやることが、介護者の後悔を消し、達成感を生むのだ。

ここまで読んで、小林麻央さんの自宅療養と同じイメージを持った方がほとんどだと思う。

しかし・・・

現実はそうではなかった。

簡単に言うと、北島康介の平泳ぎのスピードで「三途の川」を泳ぎ切る感じだったのに、向こう岸でターンをして戻ってきたみたいになっている。わたしもなぜか日の丸の旗を必死に振って、応援しちゃってる・・・

酸素を使わないと呼吸が苦しく、声も弱々しかった父。電動ベッドで上半身を起こすだけで、肺が痛いとせき込む父。ベッド脇の尿器を落として、自分では取れずトイレが間に合わなかった父。ベッド脇のポータブルトイレに移動するだけで、肩で息をして苦しそうだった父。おかゆと氷で喉を潤すことしかできなかった父。

それがどうだろう、退院して自宅療養3週間も経っていないのに、今は自分でご飯を炊いて食っている・・・ん?

三ツ矢サイダーが大好きで、少しの寝酒を飲んでいる。訪問入浴も抱っこしてもらわないと入れなかった人が、今は自分でシャワーを浴びている。湯船につかりたいから、作業療法士さんに浴槽のまたぎ方を習ってる。ベッド脇のポータブルトイレはいらん!と言って、自分でトイレに行っている・・・なんなのこれ?

救急病棟の医師の余命宣告が正しいならば、もう死んでいるか来月には死ぬはず。しかし、体重は救急病棟を退院してから、4kg6kgも増えた。声も聴きとれなかったのに、最近はうるさいくらいの声の張りだ。つい先日は、作業療法士さんと外を歩いた。ベッドの上で、作業療法士さんと筋トレするのがやっとだったのに。

退院してたった18日、本当に何が起きているのだろう。これだけは言えるのが、父を診ている「ものがたり診療所もりおか」の医療チームがすばらしいということ。ケアマネ、ヘルパー、リハビリなど介護チームもすごい!そして、本人の生きたいという根性、在宅の持つ不思議な力・・・父にはいろんな知識を教えたから、わたし自身も褒めよっかな。

そんな父が、こんなことを言い出した。

救急病棟でお世話になった医師に挨拶したい!

素直な感謝の気持ちはもちろんあるだろう、外科の手術が成功しなかったら今はない。しかし、退院時のあの状態の人が歩いて病棟に行ったら、幽霊が出たと勘違いするんじゃないかと、チームで笑った。それくらい、あり得ないことが起きている、とにかく驚く。

病院の言う通り、転院して寝ながら緩和ケアをしていたら、おそらくこうはならなかったはず。家族・親族、元職場の同僚も「××病院に行ってたら、今頃死んでるわ・・・」みんながこう言っている。医師の一言は重い。それに一喜一憂する家族がたくさんいる。しかし、情報も選択肢もこれだけあるのだから、情報を集め、可能性にかけることはやはり大切だ。医師の一言でがっかりして、何もしないのが一番ダメだと思う。

おそらく救急病棟の医師の余命宣告は、「その医師の経験」から見ると正しかったと思う。しかし、言われた通りの選択をしなかった。在宅のかかりつけ医のこのツイートは、本当にそう思う。

そして、あれほど仲の悪かった父との関係が、修復している。なかなか感謝の意を示さない父だが、自分の身に起きていることに自分自身で驚き、そしてわたしに感謝しているっぽい。子どもの言うことなんか聞かないという人が、最近は「息子の言うことに従う」と言ってる。ただ父には何度も言っている、おれは知恵は出すけど、金は出さないって。

ここまで体力が回復してくると、体力不足でできなかった「抗がん剤治療」も選択できるかもしれない。線香花火のように、ただ消えゆく炎をぼんやり眺めているのではないのだ。もちろんがんが治ったわけではないし、線香花火が消えかかる前の一時的な燃え上がりかもしれない。

ただ言えることは、余命宣告を真に受けなくてよかった、そして、一縷の望みにかけてみてよかった・・・それだけ。もう一度元気な姿を見られて、本当によかった。元気になって悪態をついてムカつくこともあるけど。

父は「あのバカ医者が!」と、前の病院での余命宣告の時の突き放し方を怒っていた、気持ちは分かるが、体力まだないんだから・・・

こうなってくると、今度は思ったより長生きしたときのお金のプランを考えないといけなくなった。ということで、次なる作戦を淡々と実行している最中・・・今日は、法務局へ急きょ行くことになった。

父はお金がないので、しょうがない・・・「闇金くどひろくん」を登場させよう。わたしの貯金を、父に10日で5割の利息で貸し付けるつもり(笑)「闇金くどひろくん」の取り立ては鬼のようにやさしいが、回収は絶対する。

自分はこの超不安定なフリーランス生活が楽しくてしょうがないのだけど、父の介護で貯金が減ったらそれこそ地獄。最優先は自分の家族なので、父のためには使えんのだ。介護がどんな状況にあったとしても、やっぱり優先すべきは自分の人生だと思う。それを忘れてしまったら、わたしの場合は終わり。

ケアラーズ・ハイは継続中で、東京でラジオの収録、福島で講演会を終えて、また盛岡に戻ってきた。でもって、3作目の本の締切があと少しって、うぉーーー!

体の心配をされるのだが、昨日は久々にジムでリフレッシュもした。そして、ひとりで「びっくりドンキー」に行った。45歳の男が「森のリンゴスカッシュ」をランチドリンクにした。頼むとき恥ずかしいけど、本当にうまいんだ、あれ。スカッシュにガムシロがついてくるのだが、わたしは入れない・・・ビターが好きな大人だから(笑)長くなったけど、体調は万全ってこと。

父と母の家を往復する生活が思っている以上に長くなるかもしれない・・・でも、最高のネタになるから、しれっといくことにしよう!やべぇ・・・長文になってしまった、本書けよ本を!!

今日もしれっと、しれっと。


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【わたしの書いた最新刊】
東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

10件のコメント

お父さまが生命保険をお持ちでしたらリビングニーズ(余命宣告を受けた場合に生きてる間に保険金が受け取れる)が使えるはずです。一度調べてみてください。

佐藤さま

ありがとうございます、リビングニーズ勉強になりました!たぶん入ってないと思いますが、医療保険しかまだ手続きしてないので、あったら試してみます!

お父様の回復は、奇跡ではない。
在宅では、良くあることである。
高齢者は、何もしないほうが良いと言う場合が少なくない。
肺炎でも、抗生剤を止めたほうが良い(治療を止めたほうが良い)と言う場合がある。これを出来る医師は少ないが、良くなるケースがいるのである。
人に適度なストレス(刺激)を与えると、元気になる。過度のストレスは、寿命を縮める。病院は、これが多い。治療を行うため、必要以上な制限を行う。ベッドで寝ているだけで何もさせない(これが大きなストレスになる)等々。病院の医師は、これを知らない。

抗がん剤治療は。
固形癌の場合、抗がん剤で治すことは、出来ない。
延命効果は、あるようだが、限界があります。また過度の抗がん剤治療は、かえって寿命を縮めることもあるようです。
血液のがんの場合、ほぼ治った状態(寛解といいます)に出来るケースも少なくないようですが・・・。
生活の質(QOL)と延命効果を勘案して決めるしかないのですが・・・・。

小関先生

小関先生も在宅が見えている先生なので、コメントの説得力がすごいです。でもこういってくださる先生は、まだまだ少数だと思います。わたしはこうやってブログ発信することで、家族の医師や病院への見方・考え方が少しでも変わればと思っています。病院の医師がこの現状を知らないで余命宣告したり転院を勧め、家族がそれを鵜呑みしてしまうのが悲しいです。

小関先生

そうなんですよ、血液のがんなら固形がんよりも抗がん剤の可能性はあるようです。おっしゃるとおり、QOLと勘案している最中です。どのタイミングで勝負にいくのか、このままがいいのかという見極めを今しています。

凄い!!凄いです!!
読んでいて感動しました!

二回も読み返しちゃいました。

『自分を生きる』って、
こういう事なんですね。
お父さんも、ご家族も。

応援しています!

お父様、くどひろさんの介護を受けて心の中では本当に感謝しているし、息子が自分にそこまでしてくれたことが嬉しくて大きな励みになっていると思います。
うちの父は余命3ヶ月で2年生きました。
でも、最後の半年は入院生活になってしまった。せっかくいい感じで自宅で過ごしていたのに、体力があるからと医者に勧められるまま、父が抗がん剤治療を受けることを希望したのです。そのためにポート埋め込み手術をして、それからはどんどん弱っていきました。
父のようなステージ末期の人には勧めないで欲しかったです。

mmさま

大変参考になりました!そうなんですよ、復活してきたからといって抗がん剤を使うとQOLが下がる可能性が高いと思っています。その見極めを今やっています。うちはみんなが怪しいと言っている「高濃度ビタミンC療法」をもう使うしかなかったのでやっています。その結果がこのとおりなので、抗がん剤を使わずこのまま継続するか悩み中です。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(80歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて12年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか