この本いいです!長尾和宏先生「痛い在宅医」を読んで

痛い在宅医 長尾和宏 感想

昨年9月に亡くなった父を、急性期病院から自宅へ連れて帰って在宅で医療・介護をして看取るということをしました。

その際に、病院ではなく在宅医療・介護を受けることの良さであったり、小笠原文雄先生の「なんとめでたいご臨終」という本をご紹介しました。そして病院で最期を迎えるだけでなく自宅ならではの良さもあるよということを、このブログに書いてきました。

病院で最期を迎えるほうが安心だと思っている方は「なんとめでたいご臨終」という本をぜひ読んで欲しいです!

2017.07.26

その気持ちに変化はないのですが、兵庫・尼崎にある長尾クリニック院長の長尾和宏先生が、昨年末に書いた著書「痛い在宅医」はわたしの実体験の「真逆をいく」完全ドキュメンタリーでした。

お父さまを肺がん?(←あえて?をつけてます)で亡くされた娘さんは、長尾先生の信者。先生の本をほとんど読み、絶対に家で看取ろうと決めたのです。ところが・・・。

病院ではなく家で死んだほうが平穏死できる。在宅医療は素晴らしい。先生の本には、何度もそう書いてありました。だから私は、父を在宅で平穏死させたかった。だけど、わたしの父は平穏死できなかった。正直、長尾先生の本と出合わなければ良かったと、今は後悔しています。
引用元:痛い在宅医(ブックマン社)

なぜ娘さんはこんなに後悔することになったのか?その在宅医はどんな対応をしたのか?

娘さんのまっすぐ過ぎて厳しい辛辣な意見を、長尾先生が受け止めていくという対談形式で本は進みます。この娘さんの発する言葉で、わたしは去年の父とのことをかなり思い出しましたし、在宅医療を経験した人にしか分からない感覚が描かれています。

特に「時間」の概念が、わたしと全く一緒!病院に居ればナースコールですぐ看護師さんが飛んできてくれますが、在宅はそうはいきません。24時間365日対応とはいえ、道路状況や医師・看護師の居場所によっては、なかなか来てくれません。医師にとっての1時間は、家族にとっての3時間・・とにかく長く感じるし、特に命の終わりが近いときはその長さはもっともっと長く感じるはずです。

こう書くと在宅医療って不安?と思うかもしれませんが、病院でも介護施設でも気づいたら亡くなっているということはよくあるので、どこにいても実は不安材料はあるものです。

病院の医師と在宅医療の医師は大きく違う

この本で痛感するのは、在宅医療の世界というのは、在宅でない病院で勤務している医師・看護師から見れば未知の世界であり、それはソーシャルワーカーにとっても同じことだということです。病院の病床数を減らして、病院から自宅へという国の流れの割には、現場は全く追いついていないことが、本を読むとよくわかります。

それでも、在宅医療に取り組む病院はたくさんあって、長尾先生監修の「さいごまで自宅で診てくれるいいお医者さん(朝日新聞出版)」には、患者数、看取り件数、緊急往診数、医師数、緩和ケアについて書いてある他、看取り実績のある診療所リスト全国2104箇所が掲載されています。

本に出てくるアドバンス・ケア・プランニング(ACP)とは?

今後の治療や療養方針を、患者・家族・医療従事者であらかじめ話し合うプロセスのことを、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)といいます。厚労省のサイトから具体的な内容を引用すると、次のようになります。

– 患者が望めば、家族や友人とともに行われる
– 患者が同意のもと、話し合いの結果が記述され、定期的に見直され、ケアにかかわる人々の間で共有されることが望ましい。
– ACPの話し合いは以下の内容を含む
• 患者本人の気がかりや意向
• 患者の価値観や目標
• 病状や予後の理解
• 治療や療養に関する意向や選好、その提供体制
引用元:http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000173561.pdf

うちの場合は、父がそんなに医療の知識はありませんでした。それで、わたしが自分で勉強したり、医師の思いを伝えたりして、選択肢というかカードを、父にたくさん提示できたとは思います。最初は病院で死ぬと思っていた父も、最終的には自宅がいいと言いました。なんとなくACPはできていたように思います。

この本を読んでいて、やはり父親の最期をすごく思い出しました。後悔はほとんどないとはいえ、やはり何点か気になるところはあったなぁと。

正直なところ「痛い在宅医」ではなくて、「痛い医者」に当たってしまえば、病院だろうと在宅だろうと家族は後悔してしまいます。病院で最期を迎えれば、いろんな機器やお薬も揃っているし、人もいっぱいいるから家族や親族も納得してしまいがちですが、実は「痛い」状況はいっぱいあります。何が痛いのかは、家族はこの本とか小笠原先生の本を読んでみると分かると思います。

在宅で看取ることを少しでも考えている人は、この本も読んでおいてリスクも知っておくべきだと思います。決して明るい本ではありませんが、いい本です。本にある長尾先生の「正しい在宅医選び10か条」も、必読です!

今日もしれっと、しれっと。

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痛い在宅医 長尾和宏 感想

2 件のコメント

  •  私も読みました! レビー小体型認知症の母を87歳で在宅で看取り中に読んでとても参考になりました。その母は3月の初めに亡くなり、4年半ほどの介護生活が終わりました。
     この間、くどひろさんのブログやご本にもずいぶん助けられました。遠距離ではなく、隣居での独居でしたが、仕事に出ているとき、スマカメはとても役に立ってくれました。本当にありがとうございました。
     この本のアマゾンレビューもPatの名前で書いています。また読んでもらえるとうれしいです。
    今、自分の介護をふり返り中です。実際手をとられたのは2年半ぐらいなので、わりと一気に駆け抜けた感が終わってからはしますが、真っ最中はいつまで続くかと思いました。くどひろさんのように「しれっと」とはいかなくて、かなりキリキリしていたと思います。時々くどひろさんのブログで息抜きをしつつ、役立つ情報をgetしていました。その点でも陰ながら大いに感謝しています。
     あとアメリカの認知症ケアの専門家 ティーパ・スノーTeepa Snow さんのDVDにも助けられました。YouTube でも短いクリップがいくつも見られます。英語がある程度OKなら強くお勧めです。

  • Patさま

    Amazonレビューとコメント、そしてブログも読みました。
    在宅で看取ろう!という発想になる方は、やはり勉強熱心な方が多いなと思います。在宅医療も含め「お医者さん」のことを知る不幸、知らない不幸の両方があって、わたしは知らない不幸はイヤなので勉強してしまうのですが、知ってしまったが故のモヤモヤがあったのですね・・・

    わたしのブログや本も活用して頂き、ありがとうございます!
    ティーパさんの動画、見てみますね。Patさんのブログ読んだほうが早いかも??

    看取り系ですと、これらの本はお勧めです!
    https://40kaigo.net/others/15529/

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    ABOUTこの記事をかいた人

    1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住の介護作家・ブロガー。認知症ライフパートナー2級、認知症介助士。なないろのとびら診療所(岩手県盛岡市)地域医療推進室非常勤。祖母(認知症+子宮頸がん・要介護3)と母(認知症+CMT病・要介護2)のW遠距離介護。2013年3月、2回目の介護離職、同年11月祖母死去。2017年悪性リンパ腫の父(要介護5)も別拠点で在宅介護したが死去。現在も東京と岩手を年間約20往復、書くことを生業にしれっと介護を継続中!連載:介護ポストセブン(小学館)、著書:がんばりすぎずにしれっと認知症介護 (新日本出版社)医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか