消えゆく記憶に一矢報いた「函館日帰り旅行」のその後

認知症の母ですが、わたしはもやっとした記憶の森にくさびを打ち込みたい、消えゆく記憶に一矢(いっし)報いたいと思うことがあります。なので、73歳で北海道初上陸させました。(シン・ゴジラ扱い・・・)

函館日帰り旅行が終わったあと、わたしは帰京して2週間を過ごし、また盛岡へ戻ってきたら、母は函館上陸の爪痕を至るところに残しておりました。(シン・ゴジラ扱い・・・)

函館旅行の話、エンドレスだったよwww海鮮丼が最高で、牛乳もおいしくて、ホタテもその場で食べた。異国の風が吹いているって感じ。でも寒い、これを何回もリピートしてた

これを聞いたわたしは、

くどひろ
おぉ~、どうやら一矢報いた!でも、海鮮丼は特に反応してなかったし、牛乳は飲んでないし、ホタテも食ってない・・・函館の異国情緒感は説明したから、それは合ってる

函館の記憶が、不正に改ざんされておりました!青函トンネルをくぐったせいかもしれません。そして、訪問看護師さんが残していった訪問記録にも

看護師さん
息子さんと行った北海道旅行の話をされておりました

おぉ~、よっぽど印象に残ったのか?たぶん内容はメチャクチャだけど、看護師さんにも害はないから、放置しました。そして、訪問リハビリの理学療法士さんとお話したときも

理学療法士さん
北海道の話されてましたよ、よかったですね

まさか、海鮮丼よりも、73歳で初めて飲んだスタバのコーヒーの味に感動してたとも言えないし・・・こちらも害がないから放置しました。

20161012_122803

どうやら、母のおみやげ話ならぬ「おみやげ作話」が絶好調で、いろんな人に「おもてなし」ができたようでした。内容はまったく違うのですが、認知症という病気に、一矢報いてやりましたよ!どうだ、まいったか!

その後、母がこんなことを言い出しました。

訪問リハビリの人が間違って旅行中に家に来てしまって、大騒ぎになった
近所の人に北海道に行くことを伝えておいたから、結局カギを開けて入ってもらった

リハビリの日程はずらして行ったので、理学療法士さんが来ることもないですし、近所の人にわざわざ日帰り旅行で家を空ける報告なんてしません。

そして、函館を急にdisり始めまして・・・こういうスイッチが入ると、ネガティブスパイラルに入って、壮大な作話が完成することがあります。こういうときは、怒らないで優しく笑って何度も訂正するようにしてます。

認知症の本では訂正はNG行為ですが、うちの場合は訂正もします。独居なので、ひとりで考える時間が多く、それを何度もリピートするうちに、本人の中で事実化されてしまうことがあるからです。

すぐには分からないのですが、ふとした瞬間にこのネガティブな理由が分かることがあります。今はなんでこういう作話になったか、全く心当たりがありません。これだけものがたりを作ることができるなら、小説家デビューしてもらおうかな。

今日もしれっと、しれっと。


にほんブログ村 介護ブログへ


【わたしの書いた最新刊】
東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

14件のコメント

お母様にとっては、海鮮丼より初めて飲んだスタバのコーヒーの印象が強く残ったんですね(笑)微笑ましくて和みました。
遠距離介護というだけで大変なご苦労があるはずなのに、様々な工夫をされていて毎回凄いなーと思いながら拝読しています。
こちらは介護経験はありませんが、日々の雑事もしれっとしれっと!(笑)

おかきさま

ありがとうございます!

そんなに苦労しているとも思ってません、本当にしれっとやっております。介護者や介護職の方のブログ読者がほとんどだと思っていたので、ありがたいです!

ちなみにくどひろさんの著書は、2冊とも私の愛読書です。介護の経験はなくともこれから迎える高齢化社会に向けて学ぶことが多いですし、やはり心に響きます。次回作の発売が待ち遠しいです。
くどひろさんの人との関わり方は、介護の有無を越えて、職場や家庭で参考にさせていただいてます。

おかきさま

愛読書にして頂いて、ありがとうございます!!

本当はこれから認知症介護が始まりそうな人に特に読んで欲しいのですが、実際は突然介護が始まったときでもこの本を見つけられず、しばらくしてから読まれる方が圧倒的に多いと予想しています。次回作のオファーがあるといいのですが・・・、オファーを頂くと母親への観察力が100倍くらいアップします。出版社の皆さん、お待ちしておりますww

おかきさまと同じご意見(介護の有無を超える)を先日頂きまして、びっくりしました。いろんな読まれ方をされるのは、大変うれしいです!

はじめまして、過去の記事でも何度か触れられていましたが
やさしく訂正するというのがすごく好きです
介護に答えはない と言いながら 答えを提示している介護理論の現状
ケースバイケースの部分をどのぐらい取るかということを曖昧なままにしているから
介護員のとれる動きは自然と職場の空気を読んだ前例主義的なものとなる
まず理論を徹底して「慣れたら」という考え方もあるかと思いますが
むしろ介護の常識が固定されてない新人介護員の着眼点がずっと自然である場合が多い
それはマネジメント側の課題でもありますが・・・
とにかく率直な視点を広く公開なさってることに感謝します

ある介護員さま

コメントありがとうございます!
このお話、何度か記事にしてみようかと思いながら、なかなか書けないでおりました。

>介護に答えはない と言いながら 答えを提示している介護理論の現状
>ケースバイケースの部分をどのぐらい取るかということを曖昧なままにしているから
>介護員のとれる動きは自然と職場の空気を読んだ前例主義的なものとなる

柔軟な介護職の方に母は囲まれているので、大変ありがたいと思っています。一方で、わたしのブログに介護職の方からご連絡があり、介護職として書いていることは受け入れがたいという方もいらっしゃいます。わたしは自分が実践したことを書いているので、資格試験で出題されなくてもひとつの正解だと思っています。教科書的な理論はわたしが書いても意味がないので、実践あるのみです。

>むしろ介護の常識が固定されてない新人介護員の着眼点がずっと自然である場合が多い

認知症ONLINEの川上陽那さんの記事が、まさにそうだと思っています。若さあふれるまっすぐな記事で、心打たれます。よかったら、読んでみてください。

くどひろサン、函館旅行記あとがき、いいですねぇ。和みます、仕事疲れが緩みました〜(╹◡╹)
一矢報いるって気持ちが楽しいですよね♪
わたしも、12月に父方の祖母と母方の祖父の合同誕生日で、一矢報いるつもりです!笑 結果として、報いることが出来なくても良いんですけどね。
また、今週半ばから1週間有休で帰省して、祖母と過ごします。理解してくれる職場に感謝しつつ、祖母と楽しい時間を過ごせる事を楽しみにしてます。
仕事も、介護も、しれっと〜(๑・̑◡・̑๑)

アラサーちゃんさま

あ、なごみましたか!なごみのポイントが、書いていて分からないところがダメですよね・・・

結果はついてこなくても、たとえ介護する側の自己満足で終わっても、それでいいと思うんです。うちも少しの期待はしつつ、ダメ元だったのですが、認知症という病気にガツンと喝を入れてやりましたよ!

はじめまして
3年前に60代の叔母がアルツハイマーと診断されてから、楽しくブログと本を読んで、介護の参考にさせてもらっています。
最近、今まで絶対拒否だった旅行に行ってもイイと言うので、12月に一泊旅行を計画中です。くどひろさんのお母様のように、楽しい思いが残るよう準備したいと思いました。

京ちゃんさま

ブログも本も読んで頂いて、ありがとうございます!!

絶対拒否が解除されてよかったですね。行きたい行きたくないの波がこれからも来ると思うので、旅行当日に向けてノリノリに持っていってくださいね。

はじめてコメントします
突然始まった母の介護を何とか頑張れているのは
くどひろサンのおかげでもあります。
しれっと、
肩の力が少しぬけました、元気もらえました。
明るく元気な介護生活を心がけてます
これからもヨロシクお願いしますね

金森倉庫のスタバですね
いい思い出ヨカッタです

函館の女さま

コメントありがとうございます!

そうです、金森倉庫のおしゃれなスタバです。ブログがお役に立てて何よりです、今後ともよろしくお願いします!

ありがとうございます
介護本 はじめの一冊がくどひろサンの2冊目の著書で「考え方似てる人…」と感じました。すぐに一冊目をアマゾンしてブログも読ませてもらい…はじめてがくどひろサンでヨカッタと思ってます。
病院に対しての考え方や薬の使い方などもとても参考になりました。
母はアルツハイマー型認知症の要介護1
先生には「言葉悪いけど中の下だね」と言われました。(テスト5点でした〰)
身体は動きますが、きついのは1分前の事を忘れ同じ質問をエンドレスです。
ブログ読んで「言い返してもいいのね…」と楽になり、笑って「100回目~」と!
今日も しれっと、しれっと 頑張りますッ

函館の女さま

わたしが理想とする本の出会い方をして頂いて、ありがとうございます!

認知症へのネガティブイメージや今までの常識で認知症介護に臨まれる方が多い中で、わたしの本に出会って何か「気づき」を持って頂ければ、意味があると思っています。少ないですが、介護が始まる前に読んでくださるケースもあり、もっと増えればなぁと思っています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて13年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか