お盆は認知症の症状が悪化するので、新しい対処法を試してみた結果

お墓参り

2017年の記事「認知症が進行したとは思う。でも深刻には考えてない認知症の母のお盆の様子」に書いた、お盆は特に認知症の症状が悪化するという現象は、今年も健在でした。

母は「自分が」お盆の準備をしないといけないという不安から、同じ質問を何度も何度も何度も繰り返します。

お墓の掃除、お花の準備、家に来る和尚さんへのお布施、お膳の料理の準備、お客さんは誰が来る、家族は誰が来るなどなど、これら質問を1日中エンドレスに質問してきます。

以前はQ&Aを紙に書き、それを母に見せることで、わたしが口頭で返事するストレスを軽減する策を講じてきました。

今年も同じ対策を考えていたのですが、Q&Aの紙を見ると質問したくなるようなので、別の対処法を試してみました。それは・・・

お盆の気配をとにかく消す という方法です。

お墓に持っていく花、お膳のお椀、お布施、すべて母の見えないところに隠し、直前になったら母に見せるのです。仏壇やお墓の掃除も、母がデイに行っている間にしれっと終わらせ、何事もなかったかのような日常を演出します。

家に来る和尚さんが驚かないよう、母の仏壇オリジナルデコレーション(仏壇に千羽鶴を飾る、祖母の写真、お寺の絵を飾る)をすべて外し、普通の仏壇に戻したら母も気づくかな・・と思って、様子を見ていたのですが、今年は認知症も進行していて、何も言われませんでした。

この対処法のおかげで、同じ質問の回数は昨年の半分にまで減りました。一応、成功はしたものの、テレビをつければ帰省ラッシュの話ばかり。どんなに気配を消しても、テレビ番組まではコントロールできません。

完全に気配を消すのはムリですが、昨年よりはストレスもなかったです。母は規則正しい、安定した日常が必要で、それ以外のイベントや行事があると、途端に認知症の症状が悪化するようです。

母の不安な気持ちを解消しようと、

「息子が帰省したってことは、全部息子がお盆の準備をするってことだから」

と言ってみたのですが、こちらは全く響かなかったようです。

認知症介護の大原則は分かっていても

「認知症の人は分かっていないようで分かっているから、きちんと何でも伝えたほうがいい」という大原則は分かっているのですが、さすがに同じ質問を1週間100回以上受け続けると、大原則もあったものではありません。

介護者がストレスを抱え、それを認知症の人に影響を及ぼすほうがよっぽど悪なので、わたしのハッピーさをお盆は優先させてもらいました。

祖母と兄が眠るお墓の前で、母と腕を組みながら手を合わせます。母の左手はわたしの右腕をつかんでいるため、拝むときは両手を合わせられず、右手だけで拝みます。

わたしは母の腕の震えを右腕で感じながら、墓への意識と母への意識を半々にしていつも拝みます。

今日もしれっと、しれっと。


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東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(80歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて12年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか