岩手の母が寝たかどうか、東京から見守りカメラで毎日確認している。
おおよそ決まった時間に就寝する母だが、その日は居間の電気がついていた。でも母がいない。
台所かな? と思い、見守りカメラを切り替えてみたがどこにもいない。トイレかも? としばらく待ってみたが、映像に変化はない。
こんな夜に、どこへ? 心がザワザワしながら、玄関の見守りカメラに切り替えると、母が玄関の姿見の前で髪の毛を直していた。
夜だし、玄関の鍵を閉め忘れたのだろうと思い、そのまま映像を見ていたが、一向に寝室に戻って寝る気配がない。スマートフォンに表示された時間は、20時50分。いったい何をしているのか?
すぐ電話しようと思ったが、急に電話をすると玄関の段差で転倒する可能性があるので、そのまま5分ほど母をスマートフォン越しに見続けた。
母は髪の毛を直したあと、玄関を開け、真っ暗な外を見ている。しばらくして玄関を閉め、また髪の毛を直している。そして玄関を開け、暗闇の向こうから、何かが来るのを待っている。
最初は母が何をしているのか、さっぱり分からなかった。しかし、母の服装ですべての謎が解けた。20時50分ならパジャマを着ているはずなのに、なぜか外出時の格好をしていた。
母はデイサービスに行こうとしている、しかも夜に!
岩手の母に電話した
わが家では介護保険サービスも含め、夜間の訪問や外出予定はない。
母の行動は、認知症の症状のひとつである昼夜逆転と判断した。しかも、いつもよりひどいやつと。
14時4分の目玉焼きという記事を含め、直近で昼夜逆転の話を何度か書いた。母はうたた寝したあと、昼か夜か分からなくなる。それでも5分程度経てば、自分の間違いに気づく場合が多い。
しかし、この日は現実を理解せず、玄関から動こうとしない。玄関を開け、何度も外を覗く母。しまいには玄関にそのまま座ってしまったので、東京から岩手の母に電話した。居間まで戻り、受話器を取った母との会話がこちら。
わたし:「もしもし」
母:「ねぇ、お迎えに来ないんだけど」
わたし:「時計見て。今何時ですか? 夜の9時だよ、よる。」
母:「いや、さっき電話があってさ。迎えにくるって」
わたし:「デイサービスは朝迎えにくるの。外真っ暗でしょ、夜はやってないよ。布団敷いて寝て」
母:「じゃぁ、さっきの電話は何だったの」
もちろん電話が来るはずもなく、自分の間違いを取り繕うために電話が来たと言っている。
これはいつものことなので気にならないのだが、まさか暗闇の外を見続けて、デイサービスを待つとは思わなかった。外が暗い → 夜 → 寝る時間 と思考回路が繋がって欲しかった。
わたし:「そっかぁ……、外を見ても夜と分からないのか」
さすがにショックだった。これまでの昼夜逆転とは、レベルが全然違う。結局、電話でふとんを敷くよう説得して、なんとか寝てもらった。
落ち込んでる場合ではないし、この現実と年単位で向き合っていかなければならない。しかも遠距離介護。なので、対策を考えることにした。
昼夜逆転の対策
母がもし手足が不自由でなければ、外出する可能性があるので対策はもっと難しいものになる。しかし、母はひとりでは外に出られない。なのでこの日以降、カメラでの夜の見守りの回数が増えた。
寝室のカメラは連続録画されているので、2時間くらい映像を戻してみた。すると母が、一度敷いた布団をなぜか上げていた。この時点ですでに、朝と夜を勘違いしていたようだ。
おそらく19時くらいにうたた寝をして、寝ぼけたままデイの準備をしてしまい、デイに行く前の環境を自ら作ってしまったようだ。外出するときの服、デイの連絡帳が並んでいるのを見て、時間に関係なく反射的にデイの準備をしてしまったのだと思う。
あれから1週間が経過し、同じレベルの昼夜逆転は起きていない。ただ見守りカメラでの対策だけでは不十分と考え、何かできることはないかとずっと考え中である。
音声配信voicyの最新回は、認知症の人がリモコン操作できなくなったときの代替手段の話です↓
今日もしれっと、しれっと。
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