認知症の母が準備したせつない朝食

子どもの朝食

2018年11月に、こんな記事を書いた。

わが家にとって認知症のお薬よりユマニチュードより大切なこと

2018.11.19

母と息子、2人分の朝食を忘れずに作るために、台所のテーブルの上に皿を2枚置いておくと、息子が東京から来ていると理解し、きちんと2人分の朝食を作ってくれるという話。

あれから5か月しか経っていないのだが、皿2枚の目印の効果はもうなくなった。

先日は2枚の皿を片付け、母1人分の朝食を作り、しれっと食べ終えてた。わたしが2階の自分の部屋から母の居る1階の居間へ行くと、

あら!うちに居たの?

くどひろ
昨日の夜も、一緒だったけどね

今までもこういったことは何度もあったが、最近では日常になりつつある。

認知症の進行、少し加速したか?

そう思いながら、次の対策を考えた。

今度は冷蔵庫にマグネットでつけてあるホワイトボードに、「2階で寝てるよ」と書くことにした。皿2枚のサインも続けていて、ホワイトボードのお知らせとダブルにすると、さすがに母も息子が盛岡に居ると分かるようだ。

これはこれで、切ないと思われるかもしれないが、慣れてしまうとそうでもない。本当に切ないのは、わたしが盛岡に居ないときの朝食だ。

スマカメに映った3人分の朝食

わたしは東京から盛岡の様子を、スマカメ(カメラ)で1日最低3回はチェックする。

朝は生存確認のため、100%チェックしているのだが、居間の様子がいつもと違う。

母が1人、スマホの画面に映っている。これはいつもどおり。

しかし、居間のこたつの上には箸がなぜか「3膳」も並んでいる。

スマカメは写真撮影もできるので、その瞬間を撮ったものがこちら。

3人分の食事が並ぶ居間

そして、箸の横には3人分の福田パン(盛岡のソウルフードで、いわゆるコッペパン)。福田パンを食べるのに箸いらないし、しょうゆは何に使う?

今日に始まったことではなく、母は盛岡に居ないわたしの朝食を準備する。

2人分の朝食を、東京のスマホの画面で何回も見ている。

妻に画面を何度か見せたことがあるが、「なんか切ないね・・」と毎回いう。

居るはずのない息子のために、朝食を用意する母。

近くに居るときより、遠く離れているほうがはるかに切ない。

しかし、今回は3人分・・・どういうこと?

以前は電話で自分の居場所を知らせていた

くどひろ
今、東京に居るから、ご飯いらないよ

カメラに2人分の朝食が映っていたら、電話をしていた時期もあった。

だけど、その頻度が増えているので、最近は電話をしない。

スマホ越しに何分か見ていると、わたしがいないことに気づいて片付けることもあるので、何も言わず黙って待つ。

3人目の答えは、わたしの妹。

確かに最近、朝起きると「昨日の夜、娘いたよね」と、いないはずのわたしの妹がいたと言う。

きっと、その妄想から、3人分の朝食を用意してしまったのだ。

必要のない朝食の対策

3人分の朝食を用意した日、母はデイサービスへ行かなければならなかった。

その日に限って、ヘルパーさんのデイ送り出しがなく、自分ひとりでデイに行く準備をする。

下手すると、家に居ない息子と娘が朝食を食べに2階から降りてくるのを待ち続け、デイの準備をすっかり忘れてしまうかもしれない。

わたしはまず、スマートスピーカーを使って「今日はデイサービスの日だよ」というお知らせを、東京のスマホから操作して音を出した。

スマートスピーカーのありがたいところは、スマホを操作すると、今日の予定を知らせるルーティーンとは別に、「すぐ」お知らせもできるのだ。

カメラは音声も拾うので、居間の様子をスマホで見ながら、ボタンを押す。

すると「今日はデイサービスの日だよ」と、きちんと作動していることが確認できる。何度かお知らせを繰り返し、母もデイの日と分かってくれたようだ。

毎朝7時10分に自動で今日の予定をお知らせするのだが、この日だけはスマートスピーカーに何度も頑張ってもらった。

3人分の朝食を片付けないまま、母はなんとかデイサービスに行った。

その日、デイから帰ってきても、わたしと妹の分の箸とパンは居間に置いたまま。母は気にすることなく、夕食を食べて就寝。

翌朝、スマホを見ると、まだ3人分の箸が並んでいる。そのときの写真がこちら。

今度は目玉焼きが追加され、母はわたしと妹を待っている。2日も待っているのは最長記録で、さすがに切なくなってきた。

新たに目玉焼きが追加されている

母の頭の中では、わたしと妹が小学生で、2階のそれぞれの部屋から降りてきて、居間で朝食をとる、40年前のあの光景なんだと思う。

その日は11時にヘルパーさんが来ることになっていたので、ヘルパーさんが来る直前でさすがに異変に気づき、箸も目玉焼きも片付けてくれた。

電話すれば済む話かもしれないが、母に1度電話をすると、そのあとスイッチが入ったかのように何度も電話してくることもあるので、電話は緊急以外は使っていない。

スマカメもスマートスピーカーも助かっているのだけど、今回のように切ないものまで見えてしまうこともある。

この日の午後、東北新幹線で盛岡に移動。

冷蔵庫には目玉焼きが2つ残っていた。

母に見つからないよう、そっと捨てた。

目玉焼きのことをすっかり忘れた母とわたしのその日の夕食は、いつもどおりだった。

今日もしれっと、しれっと。

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子どもの朝食

4 件のコメント

  • くどひろさん こんにちは☀️函館にも桜届きましたよ~本日6日早い開花です!
    朝からせつなすぎですッ認知症になっても お母さんですよね…。一晩中眠らずにトイレ通いしてた母にいらつく朝でしたが心ホロリとして力ぬけました~ありがとうございます。

  • 函館の女さま

    眠れなかった分、どこかでしっかり休んでくださいね。
    わたしは文章にしている時点で、切なさを自分の体の外に出しているので、割と平気です。
    でも、いくつかコメント頂いて、やっぱり切ない内容なんだなぁと改めて思っています。

  • こちらへも、こんばんは。

    電話便利ですけど、確かに困る事も多いですよね。
    私も母が存命中は、電話が来ると切れないし、切ってもまたかけて来るし、出ないと怒り出してしまう事もありました、
    「どこ行ってんの、電話に出ないんだからもぉ〜」って。

    自分も色々心配ですが、私から見ても「ちょっと最近おかしいわよ」と思う60歳前の方もおります。

    私もくどひろさんの「スマカメ」の記事からここへ最初にたどり着いた訳でして
    ノウハウは今後多くの方にともて役立つ事は間違い無いのですが、案外ノウハウを生かす年代の人間が
    早期に認知症を発症してしまう事も増えるような気がしてなりません。

  • 自分もてんてこ舞いさま

    便利な時代になり過ぎて、認知症の人が増えるということですね。
    若い頃にどれだけ勉強したかで、発症率は変わってくるという医師の話を聞きましたが、何を持って勉強を定義するのかがピンときませんでした。

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    ABOUTこのブログを書いている人

    1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住の介護作家・ブロガー。認知症ライフパートナー2級、認知症介助士。なないろのとびら診療所(岩手県盛岡市)地域医療推進室非常勤。祖母(認知症+子宮頸がん・要介護3)と母(認知症+CMT病・要介護2)のW遠距離介護。2013年3月、2回目の介護離職、同年11月祖母死去。2017年悪性リンパ腫の父(要介護5)も別拠点で在宅介護したが死去。現在も東京と岩手を年間約20往復、書くことを生業にしれっと介護を継続中!NHKニュース「おはよう日本」でこのブログが紹介されました。連載:介護ポストセブン(小学館)、著書:ムリなくできる親の介護(日本実業出版社)医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか