遠距離介護ではどうすることもできない便汚染との戦いとその対策

先週2回あった、遠距離介護中の母の便失禁の話です。わたしは東京に居て、認知症の母は盛岡の実家にひとり。そんな状況でもし便失禁が起きてしまったら、皆さんならどうされますか? というか、そこまでいったら介護施設に預けるって言われるかも。

東京に居たわたしがやったことや今後の対策について、つらつらと書きます。

便汚染が拡大していく状況を見守りカメラで

2回とも、便失禁の状況はほぼ一緒でした。

便意を催した母は、家のトイレへ。すでにリハパンの中で便失禁があったようで、リハパンは便で汚れ、お尻の割れ目にも便がついている状態でした。

なぜ東京に居たわたしが状況を把握できているかというと、他の目的でつけたトイレ前にある見守りカメラの映像で確認したからです。便をどう処理していいか分からない母が、トイレの扉を開けっぱなしにしていて、わたしに見える状況だったのです。

わたしが実家にいたら、すぐにおしりふきと新しいリハパンやズボンを持って母のところへ駆けつけて処理するので、10分もあれば終了です。しかしこの時は母ひとりで、介護職の方もいない状況でした。

この状況の何が恐ろしいかというと、介護職の方が使う言葉、便汚染が家じゅうに拡大していくことです。母は自分で便を処理しようとしてリハパンを脱いだのですが、ウォシュレットも使えず、どうしていいか分からない母の手には便がついてしまいました。

手足が不自由で壁伝い歩きが基本の母は、その手でトイレの壁や手すり、水が出るキッチンまでの壁、ドアノブ、トイレの照明スイッチ、着替えのある寝室の壁などを触り、さらにおしりに便がついた状態で座布団や畳の上に座るなど、どんどんどんどん便汚染が拡大していくのです。

一刻も早く便の処理をしないといけない、でも母ひとりでは何もできない。わたしは東京、さてどうする? こんな危機的な状況でした。

まず見守りカメラで声掛けをして、母にはできるだけトイレの中に居てもらうようにしました。というのも2回とも偶然、1時間後に介護職の方が来る予定があったので、被害を拡大させないための声掛けでした。

わたしは実家にいらっしゃる介護職の皆さんにメールで連絡をして、家は便で大変なことになっていると予告しました。その後見守りカメラの声掛けを頑張ったのですが、母を1時間も止めることは無理で、どんどん家じゅうに便汚染が拡大していったのです。

便汚染対策のための4つの案(仮)

以前、母がリハパンをトイレの手を洗う水で洗ってしまい、水を大量に吸ったリハパンが出てくる話を書きました。その対策のため、わたしはトイレの手を洗う水を止めたのですが、これが失敗だったかもしれません。

もし水が出れば、母はその水でトイレの中で何とかしようとするはずです。トイレの中は便地獄確定にはなりますが、他の場所への被害拡大は免れ、介護職の方のお掃除範囲を減らせます。

対策として、4つの案を考えました。

  1. 止めていたトイレで手を洗う水を復活する(上記)
  2. 水洗トイレを詰まらせる可能性はあるが、尿パッドを使う
  3. お風呂場の解禁
  4. ケアプランの変更

ブログ読者の方やvoicyリスナーさんから、工藤家は尿パッドを使わないのかという声をよく頂くのですが、母が尿パッドを水洗トイレに流す可能性が高かったので、家では使っていませんでした。

しかし便汚染で、介護職の皆さんの負荷が増えます。尿パッドなら、パッドを外せばリハパンの便はなくなるので、母は満足するかもしれません。但し水洗トイレに捨てて、水道業者を呼んで3万円払う地獄が待っている可能性はありますが、1回トライしようと思っています。

次にお風呂場の解禁ですが、お風呂に鍵をかけてある理由は母がトイレと間違えて用を足したり、極寒の真冬に風呂の椅子に座って立てなくなったりしたためです。冬はロックが必要ですが、それ以外は開けておけばシャワーで処理してくれるかもしれません。その代わり、便汚染されたお風呂掃除はしないといけないのですが。

ケアプランの変更は書ききれないので止めますが、今天秤にかけているのが迷走神経反射と弄便です。母の迷走神経反射はたまっていた便が一気に出て、血圧が急低下してフラフラになります。一方で弄便があると、今回のように便汚染が拡大します。

高齢者の便秘は本当に危険なので、最優先は便を出すことであり、便の汚れは拭けば取れます。ただ介護職の皆さんの負担になるので、できるだけ回数を減らせるよう、こうした対策をしていくしかありません。正解が見つかるまで、工夫し続けます。

迷走神経反射防止のために週2回坐薬を使っていて、これで便秘は解消されたものの、こうした問題が勃発しております。まさにトレードオフの関係で、ケアマネさんと絶賛相談中です。坐薬だけが原因ではなく、認知症の進行も大きいのですが。

こうなってくると介護施設のほうがいいと思われるかもしれませんが、数日のお泊りデイで弱る母ですから、今介護施設に入ったら一気に弱ると思っています。それだけは避けたい。工夫を重ねるのが、今のところの最善策ですね。
今日もしれっと、しれっと。


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【わたしの書いた最新刊】
東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて12年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか