認知症の人の不安は「介護している家族」が加害者になることがよくある!

加害者 介護家族 認知症

GWは運賃が高い、帰省ラッシュに巻き込まれるということで、ちょっと早めに盛岡に帰省しております。昨日の夜、こんなプチ事件がありました。

くどひろ
ねぇ、お財布の入った巾着袋どこにある?
ほら、そこにあるでしょ、ほら!

母の財布探しは日常なので、いつものようにキーファインダーで探します。あとは定位置が決まっていて、無意識のうちに母がそこへ財布を隠すことが多いので、両面から探しましたが見つかりません。

物盗られ妄想 対処法

20分経過。

デイサービスへ行った日なので、デイの車の中に忘れたのかもしれない、明日デイサービスに電話しようと覚悟を決めました。

今まで何度も財布をなくしているので、キャッシュカードや保険証など大事なものは抜き取ってわたしが管理するようにしています。最悪財布がなかったとしても、失うものは1万円の現金とポイントカード類だけです。一番大変だったのは、キャッシュカードを失くして再発行したときで、即発行されるわけでもないし手続きも大変なので、あれ以来わたしの管理下になりました。

警察に行ったこともありますし、百貨店に財布がないかと電話したこともあります。それに比べれば、大したことではありません。やはりいろんな経験をしておくことで、介護者はレベルが上がると改めて思いました。

すると、

あ、あったよ!巾着!

巾着を外に干してました(笑)外だとキーファインダーも反応しません。

くどひろ
うわっ、そのパターンは今までにないやつ!そりゃわかんないよ~
今日はデイに行って人がいっぱいだったから、気持ち悪くて干すのよ

今まで干したことはないので、いわゆる「取り繕い」なのですが、いろんな理由をこじつける能力の高さはやっぱりすごいなぁ~と変に感心したのでした。わたし以外の人は、取り繕いを信じます。

こういうやりとりをしながら、ふと思ったことがあります。

介護家族が加害者に!認知症の人を不安にさせる一言

母が巾着を外に干していたとは、自分自身でも思ってなかったらしく

あら、わたし最近だめねぇ~ おかしくなってきたのかしらね~

と珍しく不安になったようでした。その不安のきっかけを作ったのは誰かというと、わたしです。

「巾着、どこにある?」と質問しなければ、母はNHKうたコンという歌番組を楽しく見ていたはずで、翌朝外を見てびっくりはするものの、少なくともモノ探しの時間は必要なかったわけです。ましてや母はひとり暮らしなので、わたしが指摘しなければ特に何事もなく寝て、翌朝に朝露に濡れたしっとりとした巾着を回収したと思います。

介護者基準で誰もが物事を考え、それに沿った言葉を認知症の人にかけます。

  • 帽子はどこへいったの?
  • さっきまでここにあった杖は、どこへやったの?
  • 8時にデイサービスの迎えが来るってさっき言ったけど、準備できた?

以前、杉山孝博先生の「認知症の人の言動の大部分は二次的な言動、つまり周囲の人の言動に対する反応(リアクション)である」という話をご紹介しました。突然認知症の人が怒り出したり、手が出たりするとき、実は介護者側の最初の言動に問題があるという意味です。でも、他の人に話すときは自分の都合のいいように、最初の言動は省略してしまう・・・よくありますよね?

うちは医療・介護職の皆さんのサポートを受けながらひとり暮らしができているので、実はわたしのような加害者がいつもはいません。傍からみればおかしなことをしてたとしても、ひとりであれば誰の指摘も受けることはありません。不安のない生活を、実は送っていることになります。

ところが、

くどひろ
薬飲んだ?

という何気ない質問でさえ、母から見れば

あれ、わたしお薬飲んだかしら。飲んだような・・・いや飲んでないかも、お薬カレンダーみなきゃ!

という不安を煽ることになり、そのきっかけは間違いなくわたしが作っているわけです。

今回の財布の件の正解は、わたしが黙って財布を探していれば、母が不安になることもなかったわけです。家族の何気ない一言が、認知症の人の不安に火をつけてしまう・・・これを意識しながら認知症介護するのは相当難しいと思うのですが、

「これ質問したら、不安にさせるかもしれないな」

というスイッチを、ONできるようになれると上級認知症介護者の資格(そんなのありませんが)を得られるような気がしました。100%はムリだから、たまにはできるように努力してみます。

今日もしれっと、しれっと。


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東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

8件のコメント

薬飲んだ?という何気ない質問でさえ,認知症の方を不安にする事があります。
この事を、理解していないプロ(職業的介護者)も少なくありません。ただこのようなストレスが、良い効果を生む事もあり、相手を見ながら対応していく必要があります。ここに認知症介護の難しさが有るのですが・・・・。
ただ家族が、この境界を見極めていく事は、無理でしょう。それまでの人間関係によっても違いが有りますから、境界の線引は難しいです。
もう一つ言えるのは、同じ事を言っても、相手により受け取り方が違うと言う事です。他人に言われれば素直に聞ける事があります。逆に他人に言われると、すごく腹が立つこともあります。この感じ方は、その方のキャラクター(個性)でも違います。認知症の方は、前頭葉の機能障害を起こす事が多いので、
キャラクターも変化していきます。レビーの場合、その時により前頭葉の機能に変動が有りますから、余計難しくなります。
進行したら余分な事を言わない方が、良い場合が多いです。でも刺激を与えないと進行する傾向が有りますので、この点を介護者がどう考えるかで違って来るような気がします。
認知症介護に、正解は有りません。より良い方法を模索していくしかないでしょう。

小関先生

そうなんです、良いストレスにもなるんですよね。

あとは受け手側の話も本当にその通りで、そして変化していく・・・変化に柔軟に対応しながら、ベストではなくベターな選択を繰り返していくしかないかなと思っています。

くどひろさま
はじめまして。キャッシュカードを紛失した時のことをお聞きしたいのですが、
再発行で自宅に送られてきたときというのは、くどひろさんが在宅されている時に受け取られることが、
できたのですか?

りんさま

コメントありがとうございます!

わたしが都内にいたため、受け取ることはできませんでした。母が書留でキャッシュカードを受け取って、財布に入れてました。それをわたしが母に説明して、了解を得て没収しました。

離れて暮らしているので、実家に行くとつい質問ばかりになってしまいます。
いけないとは思うのですが確認しないといけないことが多々あるので、その為に母を不安にさせてると思います。
自分が母に対して意地悪してるような気がして落ち込むことも多いです。

kazuminnさま

離れていると、家の中や本人の変化がどうしても気になるのでやむを得ない部分もあるかと思います。

介護者は「察する力」が問われているのかなと、思っています。

初めまして。   
「介護をする人はいい」という話題から、最近私がした体験を書かせていただきます。 
「ボランティアはいい人」が世間の見方で、無償の支援を下さるので、支援を受ける者の身内としては、不都合や不愉快なことを、相談する場所がありませんので、書かせていただきます。

アルツハイマー病の母は、ディサービス、ケアマネ、ヘルパーさんのお世話を受けております。ディサービスやヘルパーサービスが確定するまでの間、福祉協力員の方々が、母のお世話をしてくださいました。 ところが、福祉協力員の方の1人が、母が、他の方に迷惑をかけるので、施設にやったほうがいいと民生員経由で、市役所の支援包括センターに連絡し、母の担当ケアマネに、これ以上の世話は出来ないと通報に行ったりしました。 母の言動は失礼極まるので、言い聞かせている、とも言われました。 この福祉協力員の方は、お渡ししていた私や弟の連絡先に何の連絡もせず、役所やケアマネに通報しましたので、私どももケアマネも呆れてしまったことがあります。 ケアマネ曰く、福祉協力員が、このように介入するケースに初めて出会ったとのことでした。 
弟も私も遠距離に住んでおりますが、FaceTimeで、ディサービスの日は1日2、3回、ディサービスがない日は、1日数回、母と話しておりますし、携帯でのメッセージを送ったり、スマートカメラも取り付けております。 ケアマネさん、ディサービスの指導員の方々、ヘルパーさん方も、母は十分独居が可能だと言ってくださっています。
で、そもそも、その福祉協力員の方は、何がしたいのか? と言う疑問が残るばかりです。 アルツハイマー病の講習会を受けたから自分は、あなたより、知識が高いと言われましたし、病理学上云々とまるで意味不明の話が出たりでした。 支配欲が強いのか? 母や私が彼女を頼らないことが気に入らないのか? 単に、母に意地悪をしたいだけなのか? 思いつく理由は数あります。 が、こういう人は、能力的に弱い立場にある人々(高齢者、認知症患者、子供)と関わってはいけないのではないかと思います。  

民生員や福祉協力員は なりてが少ないので、申し出れば、即決なのが現実のようです。 これは、非常に危険なことだと思います。 我が家の場合、弟も私も、不信感を感じた場合、黙って我慢せず、ケアマネさんや他の方々に相談をします。が、人によっては、相手が福祉協力員さんだから、民生員さんだから、と、遠慮をしたり、恐れたりして、我慢される方々もおられるでしょう。  

ディサービスやディケアに関するクレームを受け付ける場所はありますが、民生員や福祉協力員に関するクレーム場所はありません。 今回の母の件で、民生員や福祉協力員という名を笠に着て、弱者をいたぶるケースがあるのではないかと、思った次第です。

ボランティア活動が時々気がかりな子供さま

「逆ボランティア」という言葉を思い出しました。ボランティアの人がボランティア精神を発揮できる場所を、介護される側が提供してあげているという皮肉を込めた言葉です。講習会も有資格者ですら、わたしはあまり関係ないと思っています。最後はどういう人かで判断しないといけないよなぁと改めて思いました。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて13年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか